561.【後日談6】さらばおいなりさんω その1
昼の雑貨屋クローバーにて。
俺は新商品の猫かまくらと猫こたつを並べていた。
少しずつ寒くなり、毛皮を着ている俺達も、温もりが恋しくなる季節だ。
一応、魔獣都市マタタビには床下暖房の機能があるから厳しい寒さになることはないが、風が運んでくる冷気はどうしようもないからな。
そんな時、かまくらとこたつがあれば昼寝の質が上がるってもんだ。
ネコ科魔獣には色んな大きさがあるから、前世のペット用の大きさから、人間が入れるほどの大きさの物まで様々。
さっそく猫こたつに3体ほどのネコ科魔獣が入った。
「にゃー(試用は1体、5分までだぞ)」
猫こたつには温度調整機能があるので、暑くなり過ぎてネコ科魔獣がのぼせるようなことにはならない。
魔道具によって快適な温度が保たれるのだ。
使う魔石は別売りだけどな。
俺が床に商品を並べると、スポスポとネコ科魔獣達が入っていく。
まさに猫ホイホイ。
「んなー(これはたまりませんな)」
「みゅ~(邪魔にゃ! おいらが使うから出ていけにゃ~)」
「にゃー(喧嘩するな)」
猫こたつの中で、魔獣幹部火車がリリーにいじめられているので、リリーに注意した。
仲良くしろよ。というか買え。
◇ ◇ ◇ ◇
夜。中央広場にて。
いつものように、魔獣幹部の会合が行われている。
魔獣幹部達が、深刻な顔をして、資料を眺めていた。
「んなう(予想より、ずっと早いペースで増えていますな……)」
「ガゥ(増えすぎると、何が問題なんだっけか。食料か?)」
「うんみゅう(食料はもちろん、住居スペースや、医療などのサポート、あと世話する人間が足りなくなる)」
「大変だねぇ」
魔獣都市マタタビでの死者数は、今年度0。
これは優れた医療技術と、首輪型魔道具のヒール機能と、配布食料に含まれる特製腸内細菌チップによる免疫力向上によるものだ。
だが、目の前の資料にある通り、出生数と総人口(総ニャン口)が指数関数的に増加しており、そろそろ対策を始めないと、都市機能に影響が出るみたいだ。
「アァー……去……勢」
「にゃー(おいなりさんωを取る制度が必要か)」
1年ちょっと前に検討していた、避妊手術を受けさせる制度。
本当はもう少し先に施行する予定だったが、前倒しする必要が出てきた。
「にゃー(以前詰めた内容は、こんな感じだっけか)」
俺は首輪型PCでタイピングし、宙に文字を表示させる。
・魔獣都市マタタビのネコ科魔獣、人間が対象
・出産を2回行ったオス、メスは原則避妊手術を行う
・出産を行っていないオス、メスも避妊手術を受けられる
・希望があれば精子、卵子は冷凍保存出来る
・この制度は、人口(ニャン口)ピラミッドの形状に応じて、年に1度程度の見直しを行う
「うみゅう(避妊手術を受けた者へ、都市から現金を与えるようにするかどうかを、決めかねていたはず)」
「与えるようにすれば、ちゃんと避妊手術を受けてもらえる確率が増すねぇ」
「んなー(逆に、必要も無いのに、お金欲しさに避妊手術を受ける者もあらわれる恐れがありますな)」
問題はそこだよな。
「ガゥ(現金支給を無しにした場合に考えられる事と言えば、避妊手術を受けない者が多数現れることか)」
「んなー(都市から逃げ出す者、反対勢力を作り出す者が多数現れるでしょうかな)」
「うんみゅう(全員の同意を得るのは無理。不安や不満を、金で解決できるのなら金で解決すればいい)」
そして、話し合いの結果。
財政的に問題無さそうなので、避妊手術を受けた者に対して、2万マタタビを支給することが決定。
お金目当ての者に関しては諦めるが、一応他の補償などが使えないか話し合いを行うこととする。
また、避妊手術の様子を、映像音声配信魔道具で配信する事も決定。
その手術の様子が配信される被験者を誰にするか、話し合った結果。
魔獣幹部、周りの野次馬一同、誰もやりたがらなかった。
まぁそうだろうな。
「にゃー(というわけで、俺が人柱になろう)」
人柱じゃなくて猫柱か?
とにかく、俺は明後日、1000年以上を共に過ごした(?)おいなりさんωを取ってもらうことになったのだった。
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