548.【後日談5】異世界転移! 魔獣都市マタタビ その19
・転移者 橘若菜視点
私は夢を見ている。
白い床がどこまでも続く不思議な空間。
金髪美青年姿のロキサス様は、心配そうな顔でこちらを見つめていた。
イケメンの
そんなロキサス様が話しかけてきた。
「こんにちは橘さん」
「こんにちはー」
ロキサス様に近況報告も兼ねて、お話しすることにした。
まず若ニャンの寿命は、マンドラゴラと違っている事を話した。
前回会った時に私が取り乱していたので、ロキサス様はそれ以降ずっと心配していたのだそうだ。
すぐに報告すれば良かったなぁ。
途中、立ち話も何ですし、とロキサス様は白い机と椅子を取り出した。
机にティーカップとポット、クッキー入りのバスケットを並べ、どうぞ、と紅茶を入れてくれた。
紅茶はいい香りがする。
思わぬところから大金を貰った話をすると、「貴族や商人はあの手この手で転移・転生者を取り込むことがあるので気を付けてくださいね」と言われた。
今のところは大丈夫だろう。
話をしつつ、おいしく紅茶とクッキーを頂いて、私はロキサス様にお別れをし、夢から覚めた。
◇ ◇ ◇ ◇
目が覚めると、葉っぱの生えた白猫、若ニャンと目が合った。
若ニャンを抱っこしてベッドから起き上がる。
「おはよう」
「にゃああああん(ぐっもーにん)」
床を見ると、人の家なのに我が物顔で寝転がっている暴力的白猫。
その暴力的白猫に対し、赤毛子猫のイブが前足でテシテシとちょっかいをかけているのが見える。
赤毛子猫は、ブレイブキャットという名前の魔獣かつ女の子なので、イブと呼ぶことにした。
若ニャンと違って、この子は名前を付けられるのに抵抗は無さそうだった。
ただ人間の事は目の敵にしているようだけど。
「にゃあああん(起きたなら、さっそく役場と大工ギルドと錬金術工房に行くよー。リリーはイブの面倒を見ててねー)」
「みゅ~(任せるにゃ)」
「みゃーん(置いてかないでよー)」
若ニャンがドアに飛びつき開けて、部屋から出ていこうとする。
イブがそれに付いていこうとするのを、暴力的白猫が抑える。
「いや、その前に朝ごはん食べたいのだけど」
「にゃああああああん(後にしろー)」
昨日、若ニャンには、私が1億マタタビ貰った事を伝えた。
その使い道を相談したところ、以下のように決まった。
なお、この都市では税金は一銭も取られないため、うっかり全額使っても翌年に莫大な税金を取られるとかそういうことは無い。
1000万マタタビを、赤毛子猫が大人になった時に渡す。
これは役場で――弁護士的な人が居るらしい――正式な文書を残してお金を預けておけば、私に何かあった場合でもお金が渡されるのだそう。
その手続きを、今日これから行うために役場に向かう。
1日50万マタタビx10日で、錬金術工房で家庭教師を雇い、魔石の加工を習得する。
魔石の加工は資格こそ必要無いものの、非常に危険なので、独学で学ぶより誰かに教わった方が良さそうだと思ったから。
おおよそ普通の錬金術師が習得するのに必要な日数は7日程度。余裕をもって10日程度を見積もる。
その予約を入れるために、今日、大工ギルドの後で向かう。
5000万マタタビでこの家を、錬金術師に適した形に改築する。
現在は庭で大鍋錬金をしているが、雨の日だと出来ないし、うっかり爆発したり毒ガスが出るといった事が無いとも限らない。
大工ギルドに予約を入れるために、今日、役場の後で向かう。
1個100万マタタビほどの規模で、新規事業を10個ほど考えている。
若ニャンと旅行の話していると、魔獣都市マタタビには体験型の事業が少ないようなので、そこにチャンスがありそうだ。
OL時代での経験が活きてくるだろう。
残りは貯金しておき、生活費にする。
使い過ぎ? ……いや、ほとんど自己投資かつ必要経費だから問題無い。
◇ ◇ ◇ ◇
家から出て、若ニャン、大鍋(翼で飛行中)とともに、まずは役場へと向かう。
私は朝食として、お土産でもらった栄養バー(満足区画産)を、歩きながらボリボリ食べる。
「そういえばさ」
「にゃあああん(なーに?)」
「イブはどうして、私や人間を目の敵にしてるの?
若ニャンは、理由知ってる?」
もしかして、イブは人間に酷い事されていたのかもしれない。
「にゃああん(えっとねー、イブの話では、人間はきゅいーんってノイズを立てるから嫌いなんだってー)」
「きゅいーん?」
「にゃあああああん(イブを拾って、まず彼女の親に説教しようと思って会いにいったんだけどねー)」
「母猫に会ったんだ!?」
てっきり、イブ入りの箱をそのまま持ち帰ったのかと思ったよ。
「にゃああああん(イブの母親の住んでいた家は、貧乏になってイブを養う余裕が無いって話だったよー。
その家は、人間がデンティスト(歯科医)として働いてたけど、治療失敗で貴族の魔獣から慰謝料ぼったくられて、人間が借金漬けになって売られたってさー)」
「はー、大変だ」
「にゃあああん(いつかイブが母親の元に帰りたいって言うかもしれないから、その時はお別れだなー)」
「うーん、本人はどう思ってるんだろう?」
「にゃああああああん(まだ幼子だし、あんまり分かってないかなー。ただ、母親に捨てられたのは知ってるっぽいよー)」
イブは小さいのに、大変なニャン生を送ってきたんだね。
私も、なるべく優しくしてあげなきゃ。
そんな事を考えつつ、役場に着いたので手続きを行うことにした。
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