534.【後日談5】異世界転移! 魔獣都市マタタビ その5
・転移者 橘若菜視点
雑貨屋クローバーを出て、帰路につく。
お腹も膨れたことだし、次に何しよう。
「確かロキサス様は、何を為せとか言ってなかったはず」
ひょっとすると、伝え忘れているだけなのかもしれない。
とりあえず今日はそのまま家に帰って、ロキサス様ぬいぐるみに祈って、聞いてみるとしよう。
「にゃあああああん(たーんらいと。そこの配給所でご飯をもらうよー)」
頭に葉っぱを生やした白猫、緑草猫が、私の肩に乗りつつ命令する。
「え? さっき食べたでしょ」
「にゃああああ(ちがーう。さっきのは、たまに食べる
配給所で配っているのは、毎日の一般的なご飯)」
「うーん、食べすぎじゃ?」
「にゃあああああああ(あーもう、全然伝わってなーい。いいから寄るー)」
「仕方ないなぁ。ところで」
緑草猫の両脇に手を差し込み、持ち上げる。
「私は橘若菜。君の名は?」
いつまでも緑草猫じゃ呼びづらい。
自己紹介も兼ねて、名前を教えてもらうことにした。
「にゃあああああああん(ペットじゃないから、魔獣に名前なんて普通はないー)」
「じゃあ私が付けてあげようか」
「にゃああああ(ふざけんなー、あいむのっとゆあぺっと)」
全然可愛げが無いね、この緑草猫。
「じゃあ何て呼べばいいの?」
「にゃああああああああんん(若菜さんちのニャンドラゴラ)」
「長い、ってかニャンドラゴラって名前あるじゃん」
「にゃああああ(それは種族名、ゆーが人間って名前じゃないのと同じー)」
変な種族名だ。
ファンタジーラノベでよく見る、マンドラゴラって魔物の亜種かな。
それはともかく、配給所という所に着いた。
ドアは金属製だなー、と思ったら自動で開いた(スライド式)
さすが最先端の錬金術の都。
私達は配給所に入った。
◇ ◇ ◇ ◇
・転移者 橘若菜視点
中は普通の石造りの床。
何で木製じゃないんだろう。
※ネコ科魔獣が爪とぎしてしまうからです。
若菜さんちのニャンドラゴラ(長いので略して若ニャン)は肩から降りて、猫たちが並ぶ列の後ろに並んだ。
おっ、若ニャンの前に並んでいた白猫が振り向いた。
そして若ニャンの鼻に自身の鼻を近づける。
猫同士の挨拶ってやつだ、可愛い。
ん?
若ニャンの頭にピロピロと生えた葉っぱを、白猫が両手でつかんだ。
猫って、ピロピロした物が好きだなぁ。
とか微笑んで見てたら、
がぶり!
ムシャムシャムシャ!
白猫が若ニャンの葉っぱにかじりついて食べた!
「にゃあああああん(ぎゃーーーーー!!!!?)」
「みゅ~(う~ん、マズーイ! もう一口にゃ!)」
白猫は、マズイとか言ってるくせに、さらに葉っぱを食べようとする。
私は若ニャンを急いで抱きかかえ、救助した。
「みゅ~(何するにゃ)」
「それはこっちのセリフだよ!?」
ザザザザッ!
どこからともなく駆けつけてきた猫達によって、白猫が囲まれた。
猫神トミタ様と、その横には猫じゃらし(草)を咥えた、渋い顔の黒猫が居る。
「にゃんくるにゃ(白猫リリー、ニャンドラゴラ・タイプ
「にゃー(いつかやると思ってたぞリリー。大人しく捕まって貰おうか)」
「みゅ~(来いにゃトミタ! 側近のホムンクルスなんか捨ててかかってこいにゃ~!)」
10秒後、
犯罪が起きて逮捕まで、1分もかからなかった。
これが、ロキサス様が一番安全と言っていた理由かな。
「にゃあああああん(自慢の葉っぱが、食べられちゃったよー、後で
「体は大丈夫?」
「にゃあああああん(やー、あいむいんぐっどこんでぃしょん。病院も必要ないよー)」
元気そうで何より。
そして再び列に並ぶ。
並んでいる間が暇だったので、若ニャンから首輪型魔道具の事を聞いた。
電子マネー支払い機能は知っていたけど、他にも道案内機能、翻訳機能、電子書籍読み放題機能、ビデオ講座見放題機能。
さらに【四次元空間】機能、【ヒール】機能も付いているのだとか。
これ以上の機能については、雑貨屋クローバーや錬金術工房にて、お金を払えば追加してもらえるらしい。
「いや、ドン引きだよ。詰め込み過ぎだよ。
これ、盗まれたらどうするの」
「にゃあああああん(どんうぉーりー。魔獣都市マタタビの住人は全員持っているよー。
それに本人しか使えない仕組みだから、仮に盗まれても他人は使えなーい)」
ってか首輪に道案内機能あったのなら、若ニャンの道案内、要らなかったよね。
口にするのは失礼だから言わないけど。
「次のお客様どうぞー」
「にゃああああああん(きたー! マグロチキンミックスの3番ー!)」
「はい、どうぞ」
若ニャンは、首輪型魔道具の四次元空間機能を使って、貰ったマグロチキンミックスの餌を収納する。
「次のお客様どうぞー」
「『栄養満点、体若返り!?』の28番で」
配給所では、人間もご飯を貰える。何と無料で。
配給は1ヶ月に1度。
食材かレトルト食のどちらかを貰うことが出来る。
当然、自炊は面倒なのでレトルト食を選ぶ。
レトルトパックの山が詰まった段ボール箱を渡され、さっそく首輪型魔道具の四次元空間機能を使って収納する。
「にゃああああん(【四次元空間】スキルを持っていると、首輪と空間共有できるー。
初期設定では共有オンになっているから注意だよー)」
要するに、【四次元空間】スキルと首輪型魔道具の四次元空間機能は、初期設定では同じ空間を使っているというわけだ。
今のところ変更する必要は無さそうなので、このままにする。
私達は、配給所を出た。
食料も確保したことだし、家に帰って、ロキサス様ぬいぐるみに祈って、何を為すべきなのか聞いてみよう。
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