522.【後日談5】憎しみと愛の献身 その5


□前書き□


グロ表現(虫)注意!



□□□□□□□□□□□























・ゴキブリ科魔獣の巣にて



ここは魔獣都市マタタビから3kmほど離れた、ゴキブリ科魔獣の集う巣。


ゴキブリ科魔獣は、魔獣国チザンからは敵対魔獣扱いされている。

当然、魔獣都市マタタビに潜入しようものなら、ネコ科魔獣のおやつ・オモチャになってしまう。



「キュッ、キュ(おい、大ニュースだ!)」


「キッ(何だよ)」


「キュキュ(俺達の進化の方法が分かったんだ! 古文書の解読班が見つけた!)」



ゴキブリ科魔獣は、巣の広場に集まる。

長老魔獣が喋る。



「キュキュ!(皆の衆、我々の進化のための方法、それは……魔獣都市マタタビを横断することだ!)」


「「キュー!(えぇーー!!?)」」



魔獣都市マタタビ、それはゴキブリ科魔獣にとっては悪魔の都。


近づこうものなら、ネコ科魔獣によって殺される。


食べられてしまうならまだ分かる。

だが奴らは、自分たちを殺して、オモチャみたいに転がして遊ぶ非道な連中だ。


なので、ゴキブリ科魔獣は魔獣都市マタタビへ近づかない。


だというのに、進化へ至る方法が、よりによって魔獣都市マタタビの横断!?



「キュッ(20年前の我らの祖先、ブラックアイアンゴッキー様の書き記した古文書。

それによれば『肉球魔王の都を横断せし我、試練を乗り越えし者として神より昇格の資格を賜る』とある)」


「キュウ(つまり魔獣都市マタタビを横断することが試練、ってことですか)」


「キュ(あぁ。もちろん参加は自由。ただし、当然、生きて帰る保証は無い)」



長老ゴッキーが周りを見渡す。

皆、力強く頷く。



「キュー!(やりましょう! 我らの力を合わせれば、きっと乗り越えられるはず!)」



こうして、ゴキブリ科魔獣達の試練が始まった。



◇ ◇ ◇ ◇



・肉球魔王様視点



昼寝時。ネコ科魔獣達は眠たそうにあくびしている。


春の陽気に誘われ、皆、液体のごとくべたーっと寝っ転がっている。


……ん?


カサカサカサカサ!


人間の手のひらサイズのゴキブリ科魔獣が3000体くらい、向こうから走ってきた。

何のつもりだ?


むくっ。

ネコ科魔獣達が、足音によって目が覚め、体を起こす。



「なー(わーい!)」



ベシッ! タッタッタ! ベシベシベシ!

ネコ科魔獣達はゴキブリ科魔獣をやっつける。



「にゃー(遊んだ後は、手を洗うんだぞー)」


「なうー(はーい)」



俺はホムンクルスに、ゴキブリ科魔獣の死骸の片づけを命じる。

ふむ、2999体ほど葬られたらしい。


そして数匹、魔獣都市マタタビから外に出て行ってしまったようだ。

一体彼らは何のために都市を横断したのだろう?


む? 都市から出たゴキブリ科魔獣が、進化しているぞ。

だが、都市のすぐそばで進化しようとするのは危ないんじゃないか?


案の定、都市から飛び出したネコ科魔獣によって、進化中のゴキブリ科魔獣は葬られた。

可哀そうに。後で回収して、料理してやるとしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



・錬金術師アレクサンドラ視点



ネルおばさんには、2人の娘が居た。

2人は、宿屋とは別の店で、いわゆるホステスの運営をしていた。


ブロンズ色の髪をしたナンシーさん似の見た目のヴァニラ。

おっとりした性格で、仕事ではお客さんの日々の不安や不満、ストレスをすべて受け止めていた。

ヴァニラはその包容力で、お客さんの活力を取り戻すプロだった。


金髪をした、ヴァニラの妹、カリン。

ヴァニラとは真逆の性格で、ネルおばさん譲りの元気さ、活発さを持つ。

カリンはそのポジティブさで、お客さんを褒めちぎるプロだった。


そんな2人は、ネルおばさんの子育ての影響で、錬金術をかじっていた。

俺の死後、何を思ったのか、こんな場所を作り上げたというわけだ。


2人が運営していた店の前に着いた。


ガチャリ。


少し香水の香りのする、薄暗い店内に入る。



『いらっしゃいま、えっ!? アレクサンドラ様、し、少々お待ちください……!』



骸骨の受付嬢が奥へと走る。


……。


10分ほど待たされ、



『ど、どうぞ。支配人の2人が奥でお待ちです……』


「ありがとね」



骸骨嬢の頭を撫でて、俺は奥へと歩く。

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