513.【後日談4】3匹目の錬金術の神


・ヨツバ視点



雑貨屋クローバー、レジカウンターにて。

猫さんはレジを枕にして昼寝中。私は首輪型PCでネットサーフィン中。



『……という事が昨日あったのだ』


「はぁ、そうですか」



猫さんの首輪型PCには、鑑定神ソフを名乗る者が入っているらしい。

彼は、猫さんが寝ている間に、私に愚痴ってきた。

猫さんは錬金術の神としての資質が無い、と。


猫さんが錬金術スキルを広めることで、錬金術の神としての格が上がり、それは猫さんの魂を昇華させる。

その魂の経験を、ハーディス様という超絶美人(鑑定神ソフ談)が美味しくいただく。

それによってハーディス様はさらなる力を得る。


みたいな事を聞かされたけど、そもそもハーディス様って誰だっけ?

聞いてみたいけど、聞いたらもっと長話されそう。やめとこ。



『そうそう、トミタが作った錬金術スキルの詳細だ』


「はぁ」



スキルの詳細な鑑定画面を見せてもらった。

【等価交換】のLv70到達、代わりに他人の全てを使っても良い。

本当ならかなりヤバい。



「こんな、他人の人権というか、尊厳を踏みにじるようなスキル、猫さんが広めるわけないじゃないですか」


『だが作ったのは奴だぞ』


「んん? それはおかしな話ですね」



猫さんは基本、お人好しだ。

相手が自分に害を及ぼすとかでない限り、例え極悪人相手でも自ら手を下したりしない。

むしろ積極的に更生の機会を1度は与えている。


そんなお人好し猫さんが、こんな悪いスキルを作る理由は?



『おっと、トミタが起きる。俺は退散するか』


「にゃー(う~ん、マグロのお刺身……)」



私の考えすぎか。

多分そんなに考えずにノリでスキルを作ったのだろう。

そうに違いない。



◇ ◇ ◇ ◇



・???



ようやく魔王の1人を討伐した。

これで救った世界は1000を超えた。


だが、先程倒した魔王は奇妙なスキルを使ってきた。

錬金術の勇者である俺が知らない、【等価交換】というスキルを。


そのスキルは、人をまるでゲームのこまのように使い倒す、クズスキルだった。


鑑定した結果、スキルの作成者は、錬金術の神。

名前は何と、俺と同じトミタ。


この世には自分そっくりな者が3人は居る、という。

だが、自分が複数居るというのは驚きだ。



「ニャン(しかも魔王かよ)」



言うなれば、闇堕ちした、平行世界の俺、か。


であれば仕方ない。

俺がそいつを始末するしかないな。



「ニャーン(四次元移動!)」



俺は、魔王トミタの元へと向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(肉球魔王様)視点



……やっと来たか。


向こうから仕掛けてくれた方がやりやすかったから、待っていたのだが。

どうやら向こうはかなーり鈍感らしい。俺の存在に気づくのが随分と遅かったな。


以前、もう1匹の俺が現れた時点で、あと1匹、俺と同じ魂の形の存在が現れる事は分かっていた。

錬金術の神は3体で1つ、らしいからな。

【錬金術の神】称号を俺が得た時点で、俺が3匹になる事が確定事項だったわけだ。


だが、向こうさんは勇者で、しかも謎の正義感に囚われている。

俺が魔王というだけで、合体拒否されるだろう。

一応説得してみるが、多分聞いてくれないだろうなぁ。


まぁいい。

丁重におもてなしてやるとしよう。



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