512.【後日談4】錬金術の神は怠ける


午後の自宅のベッドにて。

俺はのんびり転がりつつ、首輪型PCで撮ったネコ科魔獣の写真を整理中だ。

お、この写真いいな。後でプリントアウトして雑貨屋クローバーの壁にかざろう。


などと思っていると、首輪型PCに封印している鑑定神ソフが、突然怒鳴どなりだした。



『おいトミタ! 貴様、最近たるんでるんじゃないか!?』


「にゃー(何なんだ突然)」



ソフは封印されているせいで、喋るのにも魔力MPを使うから、普段は無駄口を叩かず黙っているのだが。

どうやら何か俺に言いたい事があるらしい。



『以前、究極の錬金術【アルス・マグナ】を使って以降、何も成していないじゃないか!』


「にゃー(いや? 色々あったぞ。

俺が2匹に増えたし、魔王の集会にも参加したし、錬金術工房の奴らを鍛えたし、それから……)」


『そんな枝葉末節(しようまっせつ)な事、神でなくても出来る事だ!

貴様、錬金術の神の座に居ながら、その役職を全うせず、食っちゃ寝、食っちゃ寝の体たらく!

神として恥ずかしくないのか!』



いや、俺、ただの猫だし?

むしろ猫のくせに働きすぎだと思うが。



「にゃー(錬金術の神の仕事についてなら、錬金術スキルを沢山作ったぞ?)」


『その作ったスキル、誰も活用出来ていないようだがな……』



ソフに言われて、作ったスキルの統計を見てみる。


ふむ、俺が作った4つのスキルは、約5万人が修得し、使用したようだ。


だが、誰もスキルを成長させていない。


使用者の行動履歴を参照してみる。


すると、何とほとんど全員が【等価交換】を馬鹿にして使用を中止。

【錬金大全】の読破率が1%未満。

【賢者の石】と【ゴーレム生成】に至ってはMP不足で使えないという体たらく。



「にゃー(どいつもこいつも、鍛錬が足りないな)」


『トミタ、お前は神だ。

凡人がお前と同じように、スキルを成長させられると思うな。

それに……少し意地悪が過ぎるぞ』



鑑定神ソフが、作成したスキルの情報の、隠してた部分を表示した。


――――――――――――――――――――――――

【等価交換】

自分の金、能力、時間、HP、MPを消費し欲する物を等価交換する。

修得条件:【錬金術師見習い】以上

Lv20未満:上記のみ。

Lv20到達:代わりに、同意した他人の時間を使っても良い。

Lv30到達:代わりに、同意した他人の能力を使っても良い。

Lv40到達:代わりに、同意した他人の全てを使っても良い。

Lv50到達:代わりに他人の時間を使っても良い。

Lv60到達:代わりに他人の能力を使っても良い。

Lv70到達:代わりに他人の全てを使っても良い。

Lv80到達:効果範囲を拡張出来る。

Lv90到達:自分の言い値で価値を決められる。

Lv100到達:錬金術の神と交渉出来る。

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【錬金大全】

錬金術スキルの上手な使い方が参照出来る。1回使用10MP。

修得条件:【錬金術師見習い】以上

Lv20未満:上記のみ。

Lv30到達:閲覧可能項目増加。ランクE

Lv40到達:閲覧可能項目増加。ランクD。また、錬金術スキルの獲得経験値増加2倍。

Lv50到達:閲覧可能項目増加。ランクC。また、錬金術スキルの獲得経験値増加3倍。禁術の使用が可能になる。

Lv60到達:閲覧可能項目増加。ランクB。また、錬金術スキルの獲得経験値増加4倍。パーソナル錬金空間を獲得。

Lv70到達:閲覧可能項目増加。ランクA。また、錬金術スキルの獲得経験値増加5倍。【狂気耐性・無敵】を獲得。

Lv80到達:全て閲覧出来る。

Lv90到達:全ての錬金術成果を取り出せる本『錬金大全』を獲得。

Lv100到達:世界で起きていること、起こったこと、起こるであろうこと全てが分かる。

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【賢者の石】

自らが触媒となり、金属を黄金へ変える。

変換量はレベルに応じて増加する。1回使用100MP。

修得条件:【錬金術師見習い】以上

Lv20未満:上記のみ。

Lv30到達:金属でなくても黄金に変える。黄金以外に変えることも出来る。

Lv40到達:他者の魂を凝縮し、【賢者の石】効果を持つ魔道具『賢者の石』を作成可能に。

Lv50到達:『賢者の石』を万能回復薬『エリクサー』と交換が可能に。

Lv60到達:MPのみから金属を生み出すことが可能に。

Lv70到達:自身のMPから『賢者の石』を作成可能に。

Lv80到達:不老不死となる。

Lv90到達:『賢者の石』が禁術の媒体として使用出来る。阻害されない場合、禁術の成功率が100%に。

Lv100到達:阻害されない場合、あらゆるスキルの成功率が100%になる。

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【ゴーレム生成】

単純な働きをする人形を生成する。材料は別途必要である。

1時間100MP。

修得条件:【錬金術師見習い】以上

Lv20未満:上記のみ。

Lv30到達:ゴーレムの能力が強化し、複雑な作業も出来るようになる。作成したゴーレムは自我を持つようになる。

Lv40到達:一度作成したゴーレムが自力でMPを生成し、以降追加でMP供給の必要が無くなる。

Lv50到達:ゴーレム生成装置を作成出来る。作成には外部からMPと材料の注入が必要。

Lv60到達:人造人間(ホムンクルス)を作成する。(作成には著作権使用料が別途必要)

Lv70到達:【生物生成】を獲得する。ゴーレム作成スピードが大幅上昇する。

Lv80到達:生物をゴーレムにする。

Lv90到達:生物生成装置を作成出来る。作成には外部からMPと材料の注入が必要。

Lv100到達:ゴーレム等を無尽蔵に発生させる施設『ダンジョン』を作成可能に。

――――――――――――――――――――――――



『もっと最初から情報開示していれば、例えばスキルLv(レベル)1から効果を完全に見えるようにしていれば、使用者のモチベーションが上がったのではないか?』


「にゃー(さすがにそれは甘やかし過ぎだろ)」


『最近は若い神々が、最初から効果全開のチート能力詰め合わせスキルを作って、転生者に与えている。

それに比べれば控えめだ』


「にゃー(過保護にすると転生者の成長の機会を失わせて駄目になるぞ)」



欲しがってるからって、何でもかんでも与えるのは良くないと思うがなぁ。


俺は自分の側を通る蜘蛛を爪で仕留め、四次元空間に仕舞いつつそんな事を考える。



『とにかく! 俺の目が黒いうちは、錬金術の神としての職務を怠るのは許さん!

ハーディス様に迷惑がかかるからな!』


「にゃー(結局ハーディス様かよ)」


『そうだ! ハーディス様のために、錬金術スキルを広めろォ!』



ハーディス様の部下的な俺が頑張れば、ハーディス様も潤う。

だから怠けている(ように見える)俺を頑張らせようとしているらしい。


しかし考えてほしい。

今日はこんなにいい天気だ。


つまり絶好の昼寝|日和(びより)。



「にゃー(おやすみなさ~い)」


『きっ、貴様ァアーーー!!』



その後、ソフはうるさく騒ぎ立てたが、MPが尽きたので黙ってしまった。

もちろん俺はぐっすりと昼寝を堪能した。


それ以降、ソフが何か小言を言う度に消音にしている。

上司でもないくせに俺に命令するな、っての。


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