514.【後日談4】3匹目は合体拒否する その1



・トミタ(肉球魔王様)視点



ズウゥゥウウンン!!

何かが衝突したような音と、地面の揺れ。

雑貨屋クローバー内のネコ科魔獣達が、何事!?何事!?と慌てた様子でニャーンニャーン鳴いて走り回っている。


揺れが収まったと同時に、魔獣幹部の火車が俺の所にやって来た。



「んなーう(大変ですぞ! 都市の外に、肉球魔王様に似た、巨大ネコ科魔獣が現れましたぞ!)」


「にゃー(あぁ、了解。俺に任せておけ)」



3匹目の俺は、小心者なのか、山のように巨大な姿をしているようだ。

俺は窓辺にジャンプし、窓辺からその姿を眺める。


おっと、奴と目が合った。

俺を認識したらしい。



「ニャーン(平行世界の俺よ、覚悟しろ!)」


「にゃー(いや、厳密には平行世界じゃないぞ。俺たちは同じ世界の住人じゃないか)」



平行世界とは、例えるなら別々の建物。

俺と彼は、住んでいた場所こそ異なるが同じ建物内、つまり同じ世界に住んでいる。

ただ住んでいる階層(高さ)が違ったというだけの話だ。


分かりやすい例で言えば、この世とあの世は異なる場所だが、平行世界ではなく同じ世界に存在する。

存在している階層(高さ)が違うというだけの話だ。

天国が空のはるか先だったり、地獄が地面よりはるか下だったりで表現されるのは、そういった理屈なのだ。


まぁそもそも天国や地獄を並行世界と言い張るなら、それはもう解釈や言葉遊びの問題だ。

俺の知ったことではない。


とか思ってたら、奴は雑貨屋クローバーの真上に四次元ワープしてきた。

そしてその巨体で雑貨屋ごと俺を潰そうとしているらしい。


だが、俺は悪意監視網を常時張っている。

今回使用する防御機構は対談モード。

奴は見えないあみに絡め取られ、俺の神スペースへと飛ばされた。



「にゃー(さて、接待しに行くとするか)」



俺も自分の神スペースへと飛ぶ。



◇ ◇ ◇ ◇



ここは俺の神スペース。

畳の敷かれた和室にて、俺と3匹目の俺が向かい合っていた。


神スペースでは、体は転生開始時と同じ姿となる。

つまり、3匹目の俺も普通猫サイズに戻っている。



「にゃー(いらっしゃい勇者トミタ。知っているとは思うが、俺は肉球魔王様と呼ばれる者だ)」


「ニャーン(魔王……! 殺す!)」



繰り出された右前足猫パンチを、俺はひょいと避ける。



「ニャン(馬鹿な、【攻撃力∞】のスキルを使っているはずなのに、発動しないだと!?)」


「にゃー(変化しやすいってことは、影響されやすいってことだ。

まして【鑑定】に頼りっきりだと、簡単にステータスをハッキングされてしまうぞ。

俺がお前の攻撃力を10に固定した)」


「ニャーン(くそ、俺の配下の英霊が付いてきていない!? どうなってる!?)」


「にゃー(そっちは、俺のホムンクルス達が足止めしているぞ)」



俺と勇者の俺との対談に、横槍よこやりは入れさせない。

神スペースの利用料金の神ポイントも、24時間分を前払い済み。

誰にも邪魔させないぜ。


美味しいカリカリに、まぐろちゅるるーんを乗せた餌の皿、そして新鮮な水入りの皿を、彼の前に置く。

だが、2つの皿は払いのけられた。俺は皿を四次元空間に仕舞い直した。



「ニャン(何のつもりだ!)」


「にゃー(まぁ落ち着け。俺はお前と敵対するつもりはない。まずは話し合うとしよう)」



こうして勇者トミタとの対談が始まった。

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