510.【後日談4】魔獣都市マタタビに住みたい その2
・ある旅魔獣視点
役場での手続きが終わり、俺は住むための寮へと案内された。
俺のように人間の世話にならない奴らが住む寮で、
最近作られた新しい建物で、壁も床も綺麗な石造り。
ちなみに扉だけは木製。
扉は体で押すタイプの扉で、押して入ったら勝手に閉まる。
俺以外の誰かがここで爪研ぎしたらしく、研ぎ跡が残っている。
寮暮らしのルールとして、食事は各自、配給所に取りに行くこと。
トイレは各自、寮のトイレまたは公共トイレで済ませること。
あとは自由。魔獣都市マタタビに住まう魔獣の
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魔獣都市マタタビに住まう魔獣の掟2ヶ条
・住民をむやみに傷つけてはいけません
・たまに病院に行きましょう、爪切りとかしてもらってね
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他にも秩序を乱すような行動は取り締まられるらしいが。
あれやこれや言われても誰も覚えられないから、最低限この2つだけは守れってことらしい。
まあ楽勝だな。
俺は役場のネコ科魔獣から貰った銀色の首輪の、道案内機能を起動した。
「みぁー(配給所まで案内よろしく)」
宙に地図が表示され、現在地と目的地に印が付いている。
これは便利だな。
他にもこの首輪は、電子マネー支払い機能と翻訳機能、電子書籍読み放題機能、ビデオ講座見放題機能。
あとは【四次元空間】機能、【ヒール】機能等が付いているらしい。
後者はともかく前者は良くわからん。なお、これ以上の機能は有料で追加可能だそうだ。
◇ ◇ ◇ ◇
・ある旅魔獣視点
寮を出て、都市をテクテク歩く。
歩いていると道の所々に、太っちょ猫の木像が見える。
この都市の創始者にして世界最強の、肉球魔王様と言う奴らしい。
旅先で色んな噂を聞いたことがある。どこまで本当なのかは知らないが。
その肉球魔王様像は、目の前で子どもネコ科魔獣のオモチャにされている。
「にー(オラオラオラオラオラ!)」
けり、けり、けり。
子どもネコ科魔獣が転って、像に前足でしがみつき、キック連発している。
それを見た、親らしき魔獣が慌てて叫びだす。
「ガルルル!(こらっ、肉球魔王様像になんてことするんだ!)」
「にー(だって、良いって言ってるよ?)」
「ガルルゥゥ(そんなはずが)」
『にゃー(オモチャにしてくれて良いぞ)』
肉球魔王様像が喋った。
どうやら肉球魔王様は、この像を通して魔獣都市マタタビ全体を監視しているようだ。
なるほど。この監視体制下では、簡単には悪い事出来ないだろうな。
などと思って歩いていたら、配給所に着いたようだ。
◇ ◇ ◇ ◇
・ある旅魔獣視点
配給所には、人間が沢山居た。
ネコ科魔獣の餌はここで配られている。
ここに居る人間は、世話してるネコ科魔獣用の餌を受け取りに来た奴らだな。
「みゃおー!(6番! 6番の餌が良いです!)」
「はーい、じゃあ6番の餌を貰いましょう」
「みゅ~(10番一択にゃ、おいらは牛肉カリカリ
「リリーちゃん、先月は『チキンはおいらに勇気を与えてくれる』とか言ってたです~」
中には、餌を選ぶために人間と一緒に来ている者も居る。
10種類くらい餌があり、好きなのを選んで配給員から貰うのだ。
俺はどれがどんな味なのか知らないので、1粒ずつ味見することにした。
ボリボリ。
ボリボリ。
ボリボリ。
うーむ、どれも美味い。
というかこれらが無償配布ってヤバいな。
俺は配給員からマグロチキンミックスの3番の餌を貰い、さっそく首輪の【四次元空間】に収納した。
【四次元空間】とは空間スキルの1種で、物を無数に収納出来る便利なスキルだ。
習得は困難を極めるはずなのに、この魔獣都市マタタビでは首輪所持者は誰でも使える。
この首輪をはじめ魔獣都市マタタビでは、最先端の便利な魔道具が普及している。
それもこの都市の魅力の1つなのだ。
飯も確保したことだし、俺は配給所を出て、再び魔獣都市マタタビの探索に出ることにした。
次は良い感じの昼寝スポットを探すことにしよう。
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