506.【後日談4】キャリーバッグ


森の自宅にて。

俺は首輪型PCを使って、映画鑑賞していた。

あミャぞんプライムに加入すれば、見放題になるのだ。


ササミチップをかじりつつダラダラしていると、自宅の外のリリーの声が聞こえた。



「みゅ~(朝だにゃ~、おいらに朝ごはんを寄こすにゃ~)」



……。


ハッ!? もう朝じゃないか!

映画を6本も見たせいで、徹夜してしまったぞ!?


いかん、不規則な生活は体を壊してしまう。

日光を浴びて、体内時計を元に戻さねば。


……。


……スヤァ。



◇ ◇ ◇ ◇



「にゃー(ということがあったんだ)」


「猫は夜行性なので、夜起きて朝寝るのは自然なのでは?」


「にゃー(そうなのか?)」


「いえ知りませんけど」



夕方の宿屋にて。

ヨツバは水槽のメダカに餌をやりつつ、答えた。

今日はネルとナンシーさんは中央都市チザンへ買い物に出かけているので、宿屋にはヨツバ一人だ。


サバさんがシュタッ! とヨツバのスカートに飛びつく。

ヒラヒラしてるから猫心がくすぐられるのだ。


シュッ! シュバッ! ポスッ!

ぴょんぴょん跳ねていたサバさんがヨツバにぶつかり、ヨツバがメダカの餌をこぼした。



「っと、やめてくださいよー」


「みゃうー(何ですかコレ、美味しいです!)」



ペロン、ペロン。

サバさんが床に落ちたメダカの餌を舐めて食べる。

サバなのにメダカの餌、ぷぷっ。


一応、ヨツバのあげている餌はサバさんが食べても大丈夫な成分である。



「こら! いい加減にしてください!

もう怒りましたよ!」


「みゃおー(わーん、離してくださいー!)」



ヨツバに抱きかかえられたサバさんは、管理人室に連れて行かれた。

俺もついていく。


そしてサバさんは、キャリーバッグにひょいと入れられ、閉じ込められた。



「みゃーう!(えーん、出してくださいー!)」


「駄目です。30分くらい反省してください」


「みゃーおー!(酷いです!)」



サバさんが泣きわめくが、ヨツバは宿の受付の仕事に戻ってしまった。




30分後。


サバさんはキャリーバッグ内でまったりしていた。

この閉塞感は、これはこれで悪くないらしい。



「はい、もう出ていいですよ」


「みゃーん!(嫌です! 出たくないです!)」


「出てくださいってば」


「みゃー!(酷いです!)」



ヨツバがサバさんをキャリーバッグから出そうとするが、それに抵抗するサバさん。

何だこれ。


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