505.【後日談4】福袋


昼の雑貨屋クローバーのレジカウンターにて。

今日は寒いため、店内で暖を取るネコ科魔獣が多い。

何か買えよ。


お? 首輪型PCへメールだ。

何々……



『あけましておめでとうございます。 土倉花より』



着物姿で友達と並んでいる女子高生の写真が添付されていた。

向こうでは正月なのか。


俺は、電子マネー1万円分購入し、そのコードをメールに添付して、送り返すことにした。

『あけましておめでとうございます。ほらお年玉だぞ。 肉球魔王様より』

『あざっす!』速攻で返事が返ってきた。



「にゃー(正月といえば、福袋だよなー)」


「みゅ~(福袋? それって美味しいにゃ?)」



試食コーナーを何周もして、オリバー君に掴まれてこっちに放り投げられた白猫、リリーが聞いてきた。

俺は福袋について説明してやる。



「みゅ~(つまり福袋は食べ物じゃないのにゃ。残念にゃ~)」


「にゃー(いや、猫用のおやつを詰めた福袋なんかも、世の中にはあるぞ)」


「みゅ~(おやつ福袋!? どこにゃ、買うにゃ!)」



リリーがふんすふんすと鼻息を荒くする。

だが、言うまでもなく魔獣都市マタタビにも、中央都市チザンにも、この世界のどこにもおやつ福袋は無い。



「福袋ですか。いいですね、作りましょう」


「にゃー(えぇー……今から?)」



棚(たな)に商品を補充しながら俺達の話を途中から聞いていたヨツバが、食いついてきた。

でも福袋って、前もって大量に作っておくものだろうに。



「時間はかかりません。何を詰めるか私達が決めた後、ホムンクルスに作らせたらいいんですよ」


「にゃー(ヨツバがそれでいいのならそうするが)」



この店自体、ヨツバが働かなくても問題なくまわる。

だがヨツバは自分で働いているので、てっきりある種のワーカホリックなのかと思っていたのだが。


それから30分ほど何を詰めるのか話し合い、ホムンクルスに福袋制作を指示した。



◇ ◇ ◇ ◇



「本日から3日間限定!

ネコ科魔獣用福袋ですよ!」


「みー(3つくださーい)」



福袋の中身は、おやつ、オモチャ、そして豪華ごはんだ。

何とたったの5000マタタビで、3万マタタビ相当の物が入っている。

とってもお買い得なのだ。



「みゅ~(100個くださいにゃ!)」


「にゃー(お一人様3つまでだ)」


「みゅ~(ケチだにゃ~)」



いや、むしろ出血大サービスだぞ。

福袋に入ってる物は売れ残りではなく、普通に最新商品だ。

今日から3日間は赤字決算だな。


リリーは3つ買って、帰ったと思ったらまた来た。



「みゅ~(3つくださいにゃ!)」


「にゃー(お一人様、3日間で、3つまでだ)」


「みゅ~(チッ!)」



リリーは何か悪巧みを考えている顔で去っていった。


しばらくして、またリリーがやって来た。

……ゾロゾロと大人数連れて。



「みゅ~(さぁ皆、おいらのために、福袋を買うにゃ!)」


「にゃー(人海戦術はやめろ)」


「転売屋みたいな事してますね……」



リリーは、暇してる人間に手数料を払って福袋を買わせる事で、大量の福袋を手に入れ、ホクホク顔で帰っていった。

明日からは人海戦術対策しなきゃだなぁ。


こうして3日間で、雑貨屋クローバーは過去最高の売上と赤字を叩き出し、福袋セールは皆に惜しまれつつ終了したのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る