504.【後日談4】ボトルキャット その4
昼の魔獣都市マタタビにて。
今までここに住んでいるネコ科魔獣は、基本的に普通猫サイズ未満の者は、ほぼ居なかった。
なので今回、ピンポン猫を迎えるにあたり、都市の西に新たに極小魔獣区画を設けた。
今後、サイズの小さな魔獣はこの区画に住むことになる。
生活用品に関しては、必要に応じて中型魔獣が、品を持ってこの極小魔獣区画に配達することになるだろう。
ピンポン猫が普通に魔獣都市をウロチョロしたら、潰されたりしそうだからな。
作りたてのミニチュア都市で、小さな魔獣達がちょこちょこと動いている。
可愛い。
びゅぉぉおおおお!
突風がふいた。
「みいぃぃーーー……(あーれー)」
「にゃー(って、何匹か風に飛ばされたー!?)」
どんだけ軽いんだよ!
タンポポの種か!
俺は急いで錬金術で網を作って投げ、飛ばされた5体を救出した。
そして急ごしらえで、極小魔獣区画を囲むようにドーム状にアダマンタイト製の風よけを設置。
ドームは雨よけにもなる。風邪をひく心配も少なくなるだろう。
次に内部に照明用の小型魔道具を設置した。
体の健康のために適度な量の紫外線を昼の間放出し、夜になると月明かり程度の明るさになるように設定しておく。
ドームの入り口だが、普通猫の2倍以下のサイズなら通れる。
俺は腹が引っかかりながら通る事が出来る。
入り口には門番として小型ホムンクルスを1体設置しておく。
「にゃー(ふー、こんなところか)」
ピンポン猫を潰さないように注意しつつ、ころりと横になる。
彼らは遠巻きに俺を見ている。
「み(あなたは誰なのー?)」
「にゃー(俺は肉球魔王。この都市で一番偉い奴だ)」
「みぅ(わーい、王様だー)」
王様呼ばわりしてきた白い奴が、俺の腹の上に乗る。
そしてゴロゴロ言いつつ俺の腹をモミモミし始めた。
何するんだ。
それを見た他のピンポン猫達が、俺の腹に次々と乗り、ある者は昼寝を始め、ある者はペロペロと舐め始めた。
自由な奴らだ。
……カワユス。
◇ ◇ ◇ ◇
「んなおー(偽ボトルキャット工場に勤めていた者の家族の世話の手配等、終わりましたぞ。
……肉球魔王様?)」
「にゃー(ハッ!?)」
腹の上の毛玉達を
恐るべしピンポン猫。
俺に乗ってるピンポン猫をそっと降ろし、ドーム入り口から
外に火車が居た。彼の大きさではここを通れない。
「にゃー(他に問題は無さそうか?)」
「んなう(今回の件は、錬金術工房と我々がほぼ片付け、アレクサンドラ研究所は一切関与しなかったのですが……良かったので?)」
「にゃー(ん? 別に向こうが損するような話は無かっただろう?)」
「んな(金の亡者が、ピンポン猫保護にかかった費用はアレクサンドラ研究所が負担すべきだと言っているので)」
「にゃー(それは勝手にこっちがやったことだ)」
「んなぅあ(まぁ、そうですな。後で金の亡者を説得しておきますぞ)」
火車は用が済んだので、俺の元からテクテクと去る。
俺も宿屋に行こうかと思ってると、後ろから視線を感じる。
振り返ると、腹に乗ってたピンポン猫達が、入り口でみ、み言ってる。
「み(王様また来るー?)」
「にゃー(おーう)」
「みぃ(じゃあ待ってるー)」
俺は都市の運営に手出し口出しはなるべくしないようにしているのだがな。
だが彼らの居住スペースは出来たばっかりだから、まだまだ改良の余地があるだろう。
それまでは、
決して愛らしい姿にデレデレしている訳ではない。
今度来る時に彼ら用のおやつを用意してやろうとか思ってないからな。
こうして偽ボトルキャット問題はつつがなく解決し、ピンポン猫は魔獣都市マタタビの一員となったのだった。
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