470.【後日談4】魔王が集まる その1


称号は免許証のようなものだ。

発行元は神様の連合だったり、魔王の連合だったり、実力者の集まりだったりと色々だが。


称号を持っていれば、いろんな権利を獲得出来る。

ただしそこには義務も生じることがある。


今日、1000年に1度の魔王称号、エセ魔王称号を持つ者達の会合が開かれるそうだ。

実力者しか招待されていないらしく、この世界では俺とシルフ婆さんだけが招待されている。


これに参加しない場合、魔王称号が1段階下のものになってしまうらしい。

俺としては別にどうでもいいのだが、シルフ婆さんが一緒に参加したがっていたので、俺も行くことにした。

参加は本人のみであり、同伴者は認められないらしい。



「バステト様の偉大さを知らしめる、いい機会じゃ!」


「にゃー(俺は目立つ事はしない予定だが)」



会合って言っても、せいぜい会食と世間話くらいだ。

あと表彰とか、かな。


さて、行くか。


俺達は招待先の座標へと飛んだ。



◇ ◇ ◇ ◇



神様はどんなショボい奴でも、転生者管理権限さえあれば、神スペースという空間を使う権利を貰える。


一方で魔王スペースという空間は、上級魔王に認められているごく一部の連中しか使用が認められていない。

俺? 神スペースを放棄すれば魔王スペースを使ってもいいとのことだが、別に出来ることはあんまり変わらないし、要らない。


その魔王スペースの1つ、「蒼い炎の魔王城」にて会合は行われる。

壮大なお城だ。魔王は図体がデカイ奴がたまに居るので、ソイツでも入れるようにと、高さがそこそこある。


石造りの城、鉄製の大きな扉。

ふむ、門番は居ないらしい。



「にゃー(ごめんくださーい)」


「バステト様、この紐を引っ張ればベルが鳴るみたいじゃの」



ああ、呼び出しベルか。

猫生が長すぎて、割と人間の流儀を忘れているな。


ゴゴゴゴゴ。

扉が開かれる。


色んな世界の文字で『どうぞ中へお進みください』と書かれた張り紙がある。

観光地の案内っぽい。とりあえず進むか。


玄関を抜けるとホールになっていて、主に人型、たまに魔獣型の魔王達がワイン片手に話し合っている。



「何で勇者って、俺達を目の敵にしてるんだろうな?」


「アレだろ。人々の心を1つにするための仮想敵にされているんだろ。

アイツらにとって都合の良い事が起きたら、神様ありがとう。

都合の悪い事が起きたら、おのれ魔王め、って感じで」


「そういや最近、天罰がなくなったよな?」


「それなんだが、ヤバい魔王が現れて前代未聞の大量神殺しをしたらしいぜ」


「確かトミタとかいう……」



ヴァンパイアっぽい男と、骸骨っぽい男が俺の方を見る。

骸骨がパッと笑顔になる。



「わぁ! 可愛らしいですね!

触ってもいいですか?」



だがシルフ婆さんが「無礼者め! この御方はバステト様じゃぞ!」と怒鳴る。

というか最近は猫だ、可愛い、ってあんまり言われなくなったな。

ネコ科魔獣だらけの国に居るせいか。



「にゃー(いいから、いいから)」


「ですがバステト様……」


「バステト様かぁ、確かエジプトの猫神だっけ」


「猫ってエジプトから来たんだよな~」


「いやw○kiによれば起源は中東らしいぞ」



俺は骸骨にモフられる。

下手くそだ。あと骨なのでゴツゴツしている。

普通の猫なら噛み付いてるぞ。



「ところで確かペット持ち込みは禁止だった気がするが」


「この御方はバステト様じゃと言うとるだろうに!」


「というかこの場に居るのって全員魔王じゃなかったっけ」


「するとこのバステト様も魔王?」



この「蒼い炎の魔王城」では、参加者の名前が頭の上に表示されるようになっている。

俺は勝手にその機能をオフにしていたが。

機能をオンにしてやった。



「ふーん、トミタって言う魔王なのか……え?」


「大量神殺しのトミタ?」


「にゃー(よろしく)」


「「……」」



2体の魔王が見事なスライディング土下座をする。



「「しっ、失礼しましたぁ~!

知らなかったとはいえ、モフったりして申し訳ありませんでした!!

どうか御慈悲を~!!」」



俺はそんなつまらない事で怒ったりしないぞ。

人を恐怖の大王みたいに扱うなし。

人じゃなくて猫だが。


とりあえずお近づきの印に、超高級チキン肉の干し肉をプレゼントだ。

仲良くしようぜ。


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