461.【後日談4】猫さん、猫を拾う その2


ここは魔獣都市マタタビ東地区病院、手術室。

子どもネコ科魔獣達が手術台の上でスヤスヤ寝ている。


死にかけの子どもネコ科魔獣には応急処置的に【ヒール】を使って治してやったが、この3体、目や心臓が悪いから治してもらうことにする。


医者のネコ科魔獣が超音波エコーガイド下で血液を数滴、試験管内に四次元ワープさせる。



「クルナーオ(では、採った血液を用いて心臓を作ってきますねー)」



前世ではその進歩を見届ける事が出来なかった再生医療も、ここでは当たり前のように行う。

【加速錬成】を使うので、3分以内に臓器が出来上がる。


そしてこの手術室内では、【時間停止】スキル下で心臓移植を行ってもらう。

他の手術部屋では、目が悪い2体が網膜移植を行う予定だ。



「クルナゥ(心臓出来たので、手術開始しますねー)」



手術はゴーレム補助下で行うので、かなり正確で素早い手術が可能だ。

止まった時間内で10分相当程度で最後の縫合が終わった。



「クルナー(終わりましたよー)」


「にゃー(お疲れ様)」



世の中には異世界に来たってのに、スキル無しで医療を広める奴も居るらしいが。

使える物は何でも使えばいいんじゃないかと思うけどな。



◇ ◇ ◇ ◇



子どもネコ科魔獣を拾って2週間。大魔導師の森にて。


白猫リリーが子どもネコ科魔獣に狩りの指導(?)をしていた。

カラスの魔獣、バッドクロウを相手させている。



「みゅ~(そこにゃ! そこで畳み掛けるにゃ!)」


「みー!(こんにゃろー!)」


「びぃぃっ(死ねぇ!)」


「んーみぁ(サブミッション(関節技)こそ王者の技よ!)」


「ガァ!(ギャァァァ痛い痛い痛い!)」


「にゃー(あまり汚い言葉遣いは駄目だぞ)」



哀れ、バッドクロウはネコ科魔獣のサンドバッグにされた後、リリーに首を掻っ切られ、俺達の昼ごはんになってしまった。



◇ ◇ ◇ ◇



ここは夜の魔獣都市マタタビ中央広場。


子どもネコ科魔獣を拾ってからひと月ほどが経ち、彼らはミルクを卒業し、固形食を食べ始めた。

今も木箱の中で、小皿から少量の小さいキャットフードをモグモグと食べている。



「んなー(来月は予防接種を考えなければいけませんな)」


「うんみゅう(肉球魔王様のお子様には、お金をかけて最高の教師を用意して、エリート教育すべき)」


「おしゃれな首輪を用意しなきゃだねぇ!」


「ガゥ(ほーれ、しっぽだぞー)」


「アァー……チッ……チャーイ」


「にゃー(お前ら子どもネコ科魔獣の相手ばかりしないで、夜の会合しろよ)」



魔獣幹部達が子煩悩で仕事をサボっている件。


仕方がないので、俺が明日の魔獣お風呂大作戦の資料チェックをしている。

……ん? シャンプー代の計算が合ってないぞ。

あと、ボランティアが30名ほど足りない。



「にゃー(ゾンビキャット、お前、他の事考えながら仕事しただろ。減給にするぞ)」


「アァー……イヤン」


「にゃー(いいから急いで追加のボランティアを手配しろ)」


「深夜だから人間を集めるのは厳しいねぇ」


「にゃー(中央都市チザンのヴァンパイアなら起きてるだろ)」



とぅぉるるるるる……ガチャ。



「にゃー(あぁ、もしもし。元締めのお姉さん? 急な電話ですまないが……)」



俺が交渉している時に、子どもネコ科魔獣の1体はキメラと火車のしっぽをオモチャにして遊んでいる。

化け猫は、別の子どもネコ科魔獣の毛づくろいをペロペロとしている。

金の亡者は残りの1体と一緒に追いかけっこをしている。

こいつら……。


そんなこんなで月日は流れ、独り立ちの日が近づいてきた。


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