460.【後日談4】猫さん、猫を拾う その1


雑貨屋クローバーで使うお肉などを仕入れに遠征に来た俺は、とある木箱を見つけた。


ここ中央都市チザンは、魔獣都市マタタビと違い、最低限の生活の保証などは無い。


つまり、明日の生活もままならないほど貧しい者も居るということだ。



「みー!(えーん! えーん!)」


「びぇぇえん!(ママー! ママー!)」


「……」


「にゃー(可哀相に。捨てられたのかお前ら)」



木箱には、子どもネコ科魔獣が入っていた。

前世と違って、毛布や新聞すら入っていない。


1体、鳴き声も出せないほど衰弱して死にそうになっている。

この3体は、生まれつき心臓や目などが悪い個体っぽいな。

親が育てるのを放棄してしまったのか。

治療もタダじゃないからな。


人(?)助けはキリがないからあまり行っていないが、ここで会ったのもなにかの縁か。

助けてやるとしよう。


衰弱していた奴に【ヒール】をかけ、ミルクを小皿に入れて木箱の中に入れる。

哺乳瓶ほにゅうびんが必要かもと思ったが、皆ペロペロと小皿から飲めているようなので大丈夫か。


そして俺も木箱の中に入り、四次元ワープで木箱ごと魔獣都市マタタビへ向かった。



◇ ◇ ◇ ◇



魔獣都市マタタビには、魔獣の孤児院みたいな場所がある。

そこで3体を引き取ってもらおうと思ったのだが。



「みー!(ママー)」


「びぃぃう(ママー)」


「んーみゅ(ママー)」


「にゃー(俺はママじゃねぇ)」


「にぁん(あらあら。肉球魔王様から離れませんわねぇ)」



ミルクを飲んで落ち着いたのか、俺にくっついてスヤスヤと眠ってしまった。

どうしようこいつら。


とりあえず起きるまで待つか。

寝ている間にノミ取り液を体に塗っておくか。

起こさないようにそーっと、そーっと。



◇ ◇ ◇ ◇



雑貨屋クローバーにて。


起きた子どもネコ科魔獣が、ガチャ玉オモチャに飛びついて遊んでいる。


結局、魔獣の孤児院で引き取ってもらう事は出来なかった。

起きた後、俺から引き離される時、めちゃくちゃ泣かれて気が引けてしまったのだ。


で、結局、しばらく大きくなるまで俺が世話してやる事にした。



「猫さん、子ども産んだんですか?」


「にゃー(だから俺はママじゃねぇ)」


「いやぁ、そのお腹見れば、あと10匹くらい入ってそうじゃないですか」



そう言いつつ、ヨツバが俺のお腹をペシペシとはたく。

プルンプルンとお腹が揺れる。



「それにしても、毛も生え揃っていない子達ですね。

なで心地は正直微妙ですが。

よしよしよしよしよしよしよしよしよしよし」


「びぃぃ(やめろー)」



ヨツバが子どもネコ科魔獣をナデナデする。

ナデナデされている奴は嫌がっている。



「よしよしよしよしよ……うわぁぁ! ゲリウ○チしたぁ!?」


「にゃー(そりゃ赤ちゃんだからな)」



生まれてしばらくは、トイレが自分で上手く出来ないから、母親がお尻を舐めて刺激してやって、オシ○コやウ○チをさせているんだったっけ。


ヨツバは、子どもネコ科魔獣お世話用のティッシュを取り出し、ウ○チを拭き取る。

おい、店内のゴミ箱に捨てるんじゃない。不衛生だろ。


こうして、俺のプチ子育て生活が始まったのだった。

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