448.【後日談4】天才錬金術師 その4
俺達3人……いや2人と1匹は、雑貨屋クローバーに着く。
俺はアレックス君の腕から降ろしてもらった。
「ネコ科魔獣用の品物が増えたみたいだけど、内装はそれほど変わってないんだね」
「にゃー(そうだな)」
「わーい、新作の猫じゃらしだよー」
ネルは傘立てに置いてある猫じゃらしの1つをカウンターに持っていき、購入した。
「なるほど、あんな感じで首輪からお金を払うのか」
「にゃー(アレックス君にお小遣いとして、電子マネー10億マタタビをあげよう)」
「んー、いや、両替でいいよ。この金貨を電子マネーに両替するにはどうしたらいいのかな」
「にゃー(いいから受け取っておけって)」
昔はアレックス君の意思を尊重して、一切お金を与えなかったが、それで後悔した過去の自分にうんざりしている。
なので無理やりにでも渡すことにした。
「猫さん、こっちだよー」
新作の猫じゃらしを開けて、さっそくシャッ、シャッと動かして俺を挑発するネル。
よーし、一発で捕らえてやるぜ。
「んみー(わーい!)」
「君じゃないよー」
ネコ科魔獣あるある。
猫じゃらしで遊んでいると、目当て以外のネコ科魔獣が横入りしてくる。
ネルの動かす猫じゃらしは、小さな黒羽の生えた小悪魔ネコ科魔獣にカミカミされている。
ネルは猫じゃらしの奪還を諦め、手を離した。
猫じゃらしはそのまま小悪魔ネコ科魔獣に持ち帰りされてしまった。
「猫さん、俺の買い物は済んだよ」
「にゃー(そうか。次はどこに行く?)」
「明日から忙しくなりそうだから、今日はもう宿でのんびりすることにするよ」
アレックス君の用事が済んだので、俺達は宿屋に戻ることにした。
後で分かったことだが、俺が渡した金の9割を研究用の道具購入に充てたらしい。
その道具は翌日、アレックス君の実験室に運ばれた。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日。
雑貨屋クローバーのカウンターにてのんびり横になっていると、鑑定神ソフが首輪から話しかけてきた。
『アレクサンドラ、彼はいいな。見ていて気分が良い。ワクワクを思い出させてくれる。
今魔獣都市マタタビに居るゴーレム達の基礎理論も、彼が全部作ったのだったな。
あの天才錬金術師は、次に何をやってくれるのだろうな』
「にゃー(天才? 彼が?)」
『あぁ、天才だ。天才錬金術師だ。
マクドーンやカルロのようなガリ勉型の秀才錬金術師ではない。
まるで詩人のように
いつの世も、ああいった天才が世界を動かし、我々秀才は金魚の糞のように天才の後をついていくのだ』
今日のソフは饒舌だな。
ソフが外部に一言話すのに30万マタタビ相当の費用がかかるようにしてあるというのに。
そこまで話したかった内容なのだろうか。
「にゃー(ソフ、お前も凡人から見れば十分天才の類なんじゃないのか?)」
『いいや、トミタ。お前は分かっていない。
秀才は替えがきくのだ。俺が居なくても、アカシック・レコードさえあれば鑑定に支障はきたさないだろう?
トミタだって、今、創造神の代わりに雑務をこなしているだろう?
秀才が居なくても、凡人が数を揃えれば、代わりは務まるものなのだ。
だが、天才は違う。いくら凡人や秀才が数を揃えても、たった1人の天才の代わりになる事すら出来ない』
そういえばソフは、過去の天才の人間観察がしたいがために、『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』を作ったのだったな。
俺からすれば、ソフも十分ぶっ飛んだ思考の持ち主だが。
だが、ソフは現状で満足していない。
あらゆる知識を自在に操る存在、だが見据えているのは遥かな高み。
現状で満足して、のんびり生きている俺とは、生き方の姿勢からして違うのだろう。
俺はアレックス君が生まれて死ぬまで友達として接していたが、未だにアレックス君が何を考えているのか分からない。
ソフには、俺が見えてないアレックス君の一面が見えているのかもしれないな。
もしかしたらアレックス君の一番の理解者は俺ではなくソフなのかもしれない。
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