442.【後日談3】寝ぼけてやらかす
ここは火葬場。
彼の葬式には、俺と彼の子どもしか参加しなかった。
その生涯をゴーレムの研究に費やした、天才錬金術師、アレクサンドラ、通称アレックス君。
だが、彼の研究は俺にしか理解されなかった。
彼の子どもにさえ、馬鹿にされていた。
世間のアレックス君の評価は、役立たずの変わり者、だった。
俺はフランベル国に、このゴーレムが、国のあり方、そして国力を大きく変えるから、支援して欲しいと何度もお願いした。
しかし、フランベル国の新国王は、その重要性を理解しなかった。
こんな国滅びてしまえ。
アレックス君が、ゴーレムの研究以外に費やした、資金集めや国王の説得や、その他無駄な時間をもし研究に費やしていたならば。
きっと今頃ゴーレムが市場に出回っていただろう。
俺が資金援助すると言っても、全部断られた。
研究が完成すれば国が手のひらを返して援助してくれるから、心配するな、と言われて俺は納得したのだ。
もう少し強引にでもお金を渡しておくべきだった。
あと一歩。
大きな魔石の安定供給。
この課題さえクリアすれば、ゴーレムを使い放題に出来るのに。
炎が燃え上がり、アレックス君の死体が焼かれる。
「にゃー(あぁ、アレックス君。俺を置いていかないでくれよ……)」
燃え上がる炎に向かって前足を伸ばす。
◇ ◇ ◇ ◇
「……ん? ここは猫さんの家?
俺は何をしてたんだっけか」
「すぴー、すぴー」
「寝てるのは猫さん、だよね。変な首輪付けてるけど。おーい、起きろー」
ゆっさ、ゆっさ。
誰だ、朝っぱらから俺を起こしに来てるやつは。
それにしても懐かしい夢を見た気がする。
夢の内容は思い出せないけど。
目を開ける。
……?
……、…………!
「にゃー(アレックス君が何でここに?!)」
「おっ、起きた。やほー」
26歳の、物取りに殺された時の姿で、銀髪緑目のマック君似の男、アレックス君がそこに居た。
俺は猫像から過去の映像を取り込み、状況整理する。
ふむふむ。
ははーん。
……どうやら寝ぼけてアレックス君を蘇生したらしい。
蘇生対象が転生していた場合は不発になるはずなのだが。
運が良かったのか悪かったのか、蘇生に成功してしまっていた。
というわけで、やってしまったものは仕方ないので、アレックス君を連れて命君のダンジョンへ四次元ワープ。
寿命無限化と魂損傷の治療を行ってきた。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は今、ハーディス様の神スペースに居る。
蘇生した者の寿命無限化したのがバレたらしい。
「ちなみに知らせてくれたのは鑑定神ソフですよ」
「にゃー(おい、馬鹿。お前自分から居場所をバラしてどうする)」
『ハーディス様を信仰する者として、見過ごせなかったのだ。俺はどうなってもいい』
あーあ、今日からソフ狙いの奴らが俺の元にゾロゾロとやって来るぞ。
面倒な。
「トミタ、寿命を迎えた者の魂が私の元に来て、スキルを返還するのは知っていますね?」
「にゃー(うん)」
「我々冥王と呼ばれる者は、魂が得た経験、あなた方が言うところの経験値とかレベルというのを回収しているのですよ。
もし魂が寿命を迎えなかったら、どうなりますか?」
「にゃー(経験値の循環が滞るな)」
「えぇ、今回は数十人程度なので大したことありませんけど、あまり大人数でそれをされたら世界の維持が困難になるので、めっ、ですよ」
ハーディス様に釘を差された。
ま、さすがの俺もそこまで大規模にやらかしたりしない。
……一応、【蘇生】スキルに鍵かけておくか。
ハーディス様にお詫びの品(ババロア)を渡し、俺は神スペースから出た。
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