443.【後日談3】究極の錬金術


自宅にて。

アレックス君には、アウレネからスキルコピーした【スリープ】で眠ってもらった。

今から多少の荒事が起きるので、余計な詮索をされないために。


俺はさっそく鑑定神ソフを狙っている奴らにメールを送る。

『こっち来たら容赦しないぞ』と。


だが警告を無視して突撃しに来た神が約1000万体。

こちらを攻めに来る準備をしている神が約2000万体。



「にゃー(お前の客だぞソフ。今だけスキル使っていいから何とかしろ)」


『ならば有象無象うぞうむぞうは俺が始末する。【鑑定】そして【鑑定干渉】』



◇ ◇ ◇ ◇



・ある野心家の神視点



鑑定神ソフの能力。

【鑑定】した者の情報の完全把握。

【鑑定】した者の行動の未来予知。

そして【鑑定】した者への鑑定結果への上書きによる【鑑定干渉】。


さらにあらゆる知識が載っているというアカシック・レコードの管理。


これらの能力が手に入れば、私ならば全ての者の頂点へと立つ事が出来る。

そのためには鑑定神になる必要がある。


鑑定神になるための条件はただ1つ。

アカシック・レコードの所有者となる事。


つまり力ずくで奪ってしまえばいい。


とはいえ、相手は鑑定神。

生半可な手では【鑑定】で企みが看破されてしまう。

また、【鑑定】をこちらが使うと鑑定神にいいように操られてしまう。


【鑑定】を極力使わないようにし、【鑑定】を回避し、【鑑定】を阻害し、その上で鑑定神を欺(あざむ)く。

また、同じく鑑定神の力を狙う者を見つけたら、邪魔されないように葬らなければならない。

私は既に8体の神を亡き者にした。


そして鑑定神の配下が居ない今、襲撃のチャンスである。

鑑定神の現在地を知る神は私と、トミタしか居ない。

(この野心家の神は気づいていませんが、沢山居ます)

そのトミタは鑑定神の地位に興味が無いらしい。


私は森の結界にこっそりと穴を開けて侵入し、あくびしているトミタの首輪に手を伸ばす。

トミタや、トミタの配下にバレるようなヘマはしていない。

あとは首輪の中に潜入し、アカシック・レコードを奪うのみ。


――――――――――――――――――――――――

鑑定結果

名前:ゼロ

説明:上位の神の1人。無を司る陰キャ。

最近、鑑定神になろうとしている身の程知らず。

――――――――――――――――――――――――


――――――――――――――――――――――――

鑑定干渉

ゼロのHPの現在値、最大値が0になりました。

ゼロは死亡しました。

ハーディス様、どうぞ供物でございます。

――――――――――――――――――――――――



馬鹿な?! 私の存在がバレただと?!

それに確か鑑定神ソフは今、トミタによってスキルを封じられているはず!


私の魂は、ハーディス様の元へと召された。



◇ ◇ ◇ ◇



【鑑定干渉】は鑑定結果を現実ごと上書きするスキル。

ソフはそれを、こちらに向かってきた神達に撃つ。


これで相手のHPをゼロにすれば、そのまま相手が死ぬ。


ただし俺のように、鑑定神の鑑定にあまり頼っていない相手だと、効果がほとんど出ない。


襲撃準備が整ったのか、新たに向かってきた神も合わせて残り約8000体、それも手練てだれ相手か。



『これ以上は、首輪の中からでは手出し出来ないな。首輪から出して貰えるなら話は別だが』


「にゃー(駄目に決まってるだろ。どさくさに紛れて逃げようとするんじゃねぇ)」



とはいえ、この数の神様連中をまともに相手にするのは骨だ。

仕方ないな。奥の手の1つを使うか。


ちょちょいの、ちょい。



◇ ◇ ◇ ◇



向かってきた神様は、元の場所に返した。



『トミタ、貴様……』


「にゃー(これで元通り、平穏な日々だ)」


『事実を自分の思い通りに書き換える、究極の錬金術【アルス・マグナ】、まさか使えたとは……』



鑑定神ソフが狙われていたのは、彼の持つアカシック・レコードの影響力が大きすぎるからだ。


なので、アカシック・レコードの所有権を『神全体』に変更した。

今後はw○kiみたいに、神の誰でもが情報編集出来るようになる。

編集記録は残るので、イタズラ編集したら他の神から怒られる。


さらに今回襲ってきた神から鑑定神ソフとアカシック・レコードの記憶を全部奪った。

ついでに鑑定神ソフがアカシック・レコードを作ったという事実を、歴史上から消去した。

もはや鑑定神ソフは、狙われるどころか無名の存在となった。



『その力があれば、全てを掌握し、全神の頂点に立つ事も出来るのでは?』


「にゃー(だがこの力は、俺が本気で望まなければ、上手く使えないんだよなぁ)」



だから、ネル達が一度死んだという事実を無かったことにする、という事も出来ない。

俺が本気で望んでいないから。

あの辛い記憶ですら、俺にとっては大事な思い出だから。


全神の頂点に立ちたいと思わないから、それも出来ない。

俺が本気で望んでいないから。

そんなのは他の野心家に任せればいい。


なお、この力を持ったラスボスも、異能殺しの主人公を倒すイメージが足りずに自滅したらしい。

身の丈に合わなかった力だったのだろう。



「にゃー(さて、俺も二度寝するか)」


「ぐー……」



眠っているアレックス君の横で丸くなり、あくびする。

おやすみなさい。



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