441.【後日談3】ネル達、中央都市チザンへ行く その3



・ヨツバ視点



うぷっ、ケーキを食べ過ぎた。

気分悪い。



「ヨツバー、あれ見てー」



ネルちゃんにつられて噴水広場を見る。

下半身が魚の人間、じゃなくてヒト型魔獣の人魚だ。

残念ながら女性だけど。


彼女が歌を歌っている。

何語かは知らないけれど。

周りには魔獣が集まり、歌に聞き入っている。


歌が終わり、周りが拍手する。

歌っていた魔獣に、メダルやら人形やら食べ物やら座布団等が投げられる。

この都市は物々交換なので、投げ銭は物で行うのだ。

ちなみに歌が下手だった場合、石が投げられる。


私達は紙に包んだドラゴン肉のブロックを投げる。



「よろしければ、彼女の歌が収録された魔道具はどうですかー」



彼女の側に居た奴隷の人間が魔道具を販売している。

この都市は魔獣都市マタタビよりも商魂たくましい。

何というか、生きるために必死なんだろう。


ネルちゃんはお土産に魔道具を購入した。

そしてスペンサー君と一緒に先程の歌の感想を言い合っている。

ちょっと疎外感。


路上ライブなんて珍しくない世界に住んでいた私は、ネルちゃんとスペンサー君が何でこんなに感動しているのか理解出来ない。

多分アウレネの方が歌は上手だと思うのだけど。



「旅行って楽しいなぁー」


「そうだな。我輩達の常識がいかに狭かったのかが分かる。

きっと世界にはまだ知らない事が沢山あるのだろう」


「そうですね」



まぁ二人の会話に水を差すほど空気が読めないわけじゃないから、適当に相槌を打つ。


それからスペンサー君のリクエストで高級洋服店に入り、ネルちゃんのリクエストで本屋に入り、私は露店で適当にお土産を漁り……


しばらくすると夕方になったので、魔獣都市マタタビに帰ることにした。

西門から出て、飛行機型魔道具に乗り数時間。

夜に魔獣都市マタタビに着いた。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ(猫)視点



中央広場にて。

今日も魔獣幹部達による会合が行われる。



「うんみゅう(先程、肉球魔王様の客人のネル様、ヨツバ様、スペンサー様が帰った)」


「んなお(中央都市チザンにはスラムがあったり、人さらいが居たりしますからな!

無事で何よりですぞ!)」


「アァー……オ……ミ……ヤ……ゲ」



ゾンビキャットが、ネル達から預かったお土産を取り出す。

箱型の魔道具?

ふむ、歌が録音されている魔道具か。



「みゃああああ!!(お魚のにおいだーーー!!)」


「にゃー(いや、ただの魔道具だな。歌い主のにおいが付いているだけだろ)」


「みゃおお……(えー……)」



食べ物じゃないから、ネコ科魔獣達のテンションが下がる。

この食いしん坊どもめ。


魔道具はオルゴールみたいな形をしている。

なかなかオシャレな物を買ってきたな。


歌を再生する。

これは舟歌バルカロールだな。

う~む、いい声。


だがネコ科魔獣達は興味が無いらしく、会合が終わって各自追いかけっこに勤しむ。


俺は前世の学生だった頃のバンド時代を思い出しながら、歌に聞き入っていた。


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