440.【後日談3】ネル達、中央都市チザンへ行く その2


・ヨツバ視点



ゆさ、ゆさ。



「ヨツバ、着いたよー」



ネルちゃんが私を揺さぶる。

私はお昼寝から目を覚ます。


首輪型PCで時刻を確認。



「ふむ、到着までおよそ1時間ってところですか。……随分と早いですね」



時速200kmくらい出てたってことだよね。



「もう運賃も渡したし、降りて探索しよーよ」



猫トラから降りると、猫トラはキャットフードの大盛り袋に頬ずりしていた。

魔獣都市マタタビと違って、ここではご飯はタダではない。

魔獣も働かないと食べていけないのだ。


まぁ猫トラはネコ科魔獣なので、その気になれば外で狩りとか出来るだろうけど。



◇ ◇ ◇ ◇



猫トラと奴隷君にお礼を言って、徒歩で歩くこと5分。



「あの猫トラさん、いとこが群れのリーダーなんだって。

今日、いとこの猫トラが魔獣都市マタタビで猫さんに挑戦してるらしいよー」


「へー、そうですか。お、見えた。アレですかね」



雑貨屋クローバーと書かれた看板、そして葉っぱを加える猫のシンボル。


猫さんが支店を作ったという話は聞いていない。

私も作った覚えは無い。


つまりこの店は、なりすましだ。

何と悪質な。


というわけで、抗議すべく突撃することにした。



「たのもー!」



バン! と扉を勢いよく開けると、人間のお客さん達が何事かとこちらを見ている。

ネコ科魔獣は我関せずと言わんばかりに、店内のカフェコーナーでおやつをムシャムシャと幸せそうに食べている。


品揃えは、雑貨屋クローバーと同じ……同じ?!


そんな馬鹿な。

雑貨屋クローバーの品物は毎週少しずつ変化させているし、何より独自ルートでの仕入れ、そして独自開発の品物ばかりだ。

ここまで同じ物を揃えるのは、例え偽物でも難しい。


まして、ここにある品物は魔獣都市マタタビの物とほぼ同じ。



「にゃ~む~(これはヨツバさん。雑貨屋クローバー支店にようこそ)」


「あっ?! あなたは猫さんの!」



紫色の不気味な猫型ホムンクルス、ニボシ君が私達を出迎えてくれた。



「にゃ~おん(わざわざ中央都市にいらっしゃって、どうしました?)」


「この店は何ですか! 聞いてませんよ!」


「にゃ~おぅ~(よくぞ聞いてくれました!

この店は肉球魔王様の偉大さを広めるために作った支店のうちの1つです。

既にこの中央都市チザンの商業区の西区では、他の商店を圧倒していますよ!

そろそろ東区と南区、北区にも1店舗ずつ支店を増やそうかと思っていたところです)」


「……この事は猫さんは知ってるんですか?」


「にゃ~ん(肉球魔王様はあまり野心を持っていらっしゃらないから、支店を広げるのに反対されそうだったので。

とりあえず店舗を広めて、引っ込みがつかないようにしておこうかと)」


「アナタ猫さんの配下ですよね?!

何勝手な事やっちゃってくれてるんですか!」



とりあえず、首輪型PCを起動。

今の会話の動画をメールに添付して猫さんに送った。


……返信が来た。

『とりあえずホムンクルス達には今夜お説教をしておく』とのこと。

そのメールをニボシ君にも見せた。



「にゃ~う~……(そ、そんなぁ! 私達は肉球魔王様のためを思って行動したのに……)」


「店長に内緒で支店を増やすって、そんな非常識な事したら怒られますよ普通」


「にゃ~も(ぐすん)」



さて、どうやらここに来た目的は果たしてしまったらしい。



「抹茶ケーキ1つー!」


「では吾輩は苺ティラミスを1つ」


「……」



ネルちゃんとスペンサー君は、カフェコーナーに座ってまったりくつろいでいた。

確かに二人には関係ない事だけど、少しは私を気にかけてくれてもいいんじゃないかなぁ!

特に私の奴隷のスペンサー君は!


ムシャクシャしたので、私もカフェコーナーでケーキを5つほど食べてやった。


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