439.【後日談3】ネル達、中央都市チザンへ行く その1
・ヨツバ視点
最近、妙な噂を聞いた。
雑貨屋クローバーを、他の都市でも見かけたという噂だ。
その真偽を確かめるために、ネルちゃん、スペンサー君と一緒に噂の都市にやって来ている。
本当は私とスペンサー君の2人だけで来る予定だったのだけれども、私ばかり旅行してズルいとネルちゃんに言われたので、彼女も誘った。
呼ぶ時はネル姉さんだ。ネルちゃんと一度呼んだことがあったけど、「ネルはお姉さんだよ!」と怒られた。
ここまでの移動は、ホムンクルスが操縦するジェット機のような物に乗って来た。
ジェット機もどきは歯車やら滑車やら色々なカラクリで動いていたので、落ちるんじゃないかとヒヤヒヤしてたけど、普通に安全飛行していた。
ここは中央都市チザンの入り口の門。
都市に入る前に、そこで門番をしているイヌ科魔獣のお兄さんに聞いてみた。
「この都市に雑貨屋クローバーってありますか?」
「バゥ(確か商業区の西の端っこに、そんな店があった気がするぜ。
中を巡回してる魔獣にも聞いてみな)」
「ありがとうございます」
門番の魔獣に袖の下(ドラゴンの肉。ドラゴンは基本的に他種族とつるまない魔獣、つまり敵対魔獣なのだ)を渡し、都市に入る。
この中央都市チザンは、魔獣と人間の人口が4000万も居るという巨大な都市。
もはや1つの国とも言える規模だ。
猫さんが肉球魔王様と崇められつつも、国王と見なされない理由は、この都市にもあるのだろう。
これだけ巨大な都市を運営するというのは、よほどの才能が、上に立つ者としての才能が無ければ無理だ。
「すごーい。魔獣がいっぱい居るよ」
「ネル姉さん、あまり離れないでくださいよ。
この都市、マタタビと違って治安が悪いみたいなので」
いや、自分で言っておいて何だけど、逆にマタタビが治安が良すぎるだけか。
あの都市、いたる所に設置してある猫さん像が監視カメラ機能と自動通報能力を持っているから、隠れて犯罪とか出来ないんだよね。
って、ネルちゃんが近くに居る、青色の龍鱗のような肌をしたネコ科魔獣を捕まえた。
「んな゛あ゛あ゛ーーん!!(うわぁぁぁ?! 離せーーー!!)」
「何やってるんですか」
「わーい、この子可愛いよー」
「嫌がってますよ。離してあげてください」
「しょうがないなー」
ネルちゃんがジタバタしてるネコ科魔獣を降ろしたら、ぴゅーっと逃げていった。
【鑑定】したら、ドラゲニャイとかいう子らしい。変な名前。
あと、【捜索】を使ってみると、どうやら例の雑貨屋まで200kmくらいの距離らしい。
……遠いな!
「ネル姉さん、スペンサー君、目的地が遠いので、もう一度ジェット機もどきに乗りましょう。」
「それもいいが、一度昼食をとらないか?」
「お腹すいたー」
「昼食ですか。人間が食べられる店があるといいのですが」
と思っていたが、杞憂だった。
この中央都市チザンには、ヒト科の魔獣も居る。
彼ら用の飲食店で提供される食べ物は、人にとっても美味な物らしい。
◇ ◇ ◇ ◇
それなりに美味しい店で食べたけど、会計は物々交換なので、割と沢山の肉を取られた。
あと、店に居るイケメンヒト科魔獣に声をかけまくったせいで出禁にされた。
「ちょっとデートに誘っただけでしたのに」
「ヨツバ、あれは無い」
「美味しかったねー」
ネル姉さんはイケメンには興味が無いらしい。
スペンサー君は私の節操の無さに引いていた。
「あと、この都市の移動手段を軽く聞いてみたところ、魔獣に乗るという手もあるらしいです」
「人間を乗せてくれるのか? 魔獣にとっては奴隷なのでは?」
「乗られるのが好きな魔獣も居るらしいんですよ」
私は看板を持った奴隷の人間を指差す。
看板には『猫トラ運搬・送迎屋さん』と書かれている。
「すみません、ここから200kmほど西に進みたいのですが」
「はい。旦那様に聞いてみます」
人間の奴隷はトランシーバー型の魔道具で通話していた。
ドラゲニャイ。ドラゲニャイ。
しばらく待つと、屋根から大型トラックサイズの白色でトラ柄のネコ科魔獣が降りてきた。
「んーみゃ(おおっ、お前ら肉球魔王様のにおいがするぞ。魔獣都市マタタビからの旅行客か?)」
「はい」
「んみゃお(乗りな! サービスするぜ!)」
私達はネコ科魔獣の背中に乗った。
背中はトラックの荷台みたいになっていて、乗客は私達とさっきの人間奴隷君だけだった。
「僕はこの猫トラ様に奴隷として仕えている者です。
皆様は通訳は必要なさそうですね。
都市のガイドはいかがですか? お安くしますよ?」
「ガイド料金と運賃は別ですか?」
「別です」
「なら止めておきます」
「そうですか……」
「んーみゃ(よーし! 全員乗ったな! 出発だー!)」
猫トラという魔獣は、ひょいと屋根の上に登り、かなりのスピードで走り出した。
しかし、揺れがほとんど無い。
快適。しかも背中のモフモフはまるで毛布にくるまっているような感覚。
「わー! すごーい!」
私は到着するまでの間、お昼寝することにした。
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