438.【後日談3】挑戦者


魔獣都市マタタビの北にある草原。

今日はここに、魔獣国チザンの各地から、ネコ科魔獣を中心に色んな奴が集まっていた。

半分以上は見学客だが。


魔獣都市マタタビには、俺や魔獣幹部に逆らうネコ科魔獣は居ない。


逆に言えば、魔獣都市マタタビに住んでいないネコ科魔獣の中には、俺や魔獣幹部の言うことを聞かない連中も居る。


そしてその中には、自分こそがネコ科魔獣最強であると疑わない奴も居る。


そんな連中が襲撃しに来たら、ゴーレムや配下が相手し、穏便に帰ってもらっているのだが。


年に1回、そんな連中相手に、俺や魔獣幹部自らが戦う場を設けている。


これは連中を納得させるだけでなく、俺達の強さを見せつけるパフォーマンスも兼ねている。


俺への挑戦者に関しては、ネコ科魔獣以外にも、魔獣国チザン最強と自負している魔獣も挑戦しに来る。

今日の俺への挑戦者は、あと174体ほどだな。



「みぇぇええええ!(俺様は暴走魔獣、猫トラ! お前をひき肉にしてやるぜぇ!)」



横から見たらトラックっぽいモフモフの大型ネコ科魔獣が、俺に体当たりしてきた。

俺は両前足で受け止める。


もふっ。



「みぇぇん?!(馬鹿な?! 俺様の体当たりで吹っ飛ばないだとぉ?!)」


「にゃー(どすこーい)」



猫トラをそのまま投げ飛ばす。



「うんみゅう(円の中から出た。猫トラの負け)」


「はい、次の魔獣の番だねぇ!」



戦闘不能になるか、円の外に出たら負けになる。

いちいち全員を瀕死にするのは面倒だからな。

俺はともかく、魔獣幹部達は手加減が下手だから殺しかねない。


魔獣幹部達は既に自分達への挑戦者を片付けた後であり、俺の試合の審判をしている。

あと173体。



「俺は中央都市チザン出身、ゴルン様直属近衛兵隊長のバルス!

いざ勝負! うぉぉおおおおお!」



二足歩行の牛魔獣が突進してくる。

ひらりとかわして、背中に手加減猫パンチ。



「ぬぉぉおおおおお?!」



円の外に吹っ飛ぶ。

あと172体。



「ンガー(問題です。服屋でポーズ取ってるネコ科魔獣は?)」


「にゃー(知るか!)」



砂で出来た体のネコ科魔獣を猫パンチで円の外へ吹っ飛ばす。



「ンガォー(マネキン、招き……答えは招き猫でーす)」



なぞなぞに構っているほどこっちは暇じゃないんだ。

あと171体。



◇ ◇ ◇ ◇



ようやく挑戦者を全員片付けたので、俺は宿屋に癒やされに来た。

ナンシーさんが受付で首輪を使って電子書籍を読んでいる。



「にゃー(ごめんくださーい)」


「あら、猫さん。どこから入ったのかしら?

ネルならヨツバと一緒に遠出とおでしたわよ。

おやつでも食べる? サバさんには内緒よ?」



ナンシーさんの差し出したササミチップスを食べる。

ポリ、パリパリ。う~ん、香ばしい。


ドタドタドタ。

においと声を聞きつけたサバさんが、管理人室からやって来る。



「みゃう~(あーっ! ずるいです!)」


「まぁ、見つかっちゃった。はい、サバさんもどうぞ」


「んみゃ~(いただきます!)」



サバさんと一緒におやつタイムだ。

まったりだぜ。


それにしてもヨツバとネルはどこに行ったのだろうか。

その気になれば探す事は出来るけれど、あんまりプライベートに首を突っ込むのもデリカシーに欠けるよな。

やめとくか。



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