427.【後日談3】潜入! 魔獣都市マタタビ その6


・人間国からのスパイ視点



私は森の入り口で肉球魔王様と別れた後、まずは服を着ることにした。

(さっきまで猫の姿だったので全裸だった。服や荷物は肉球魔王様に持ってきてもらった)


服を着つつ、頭の中に入ってきた情報をもう一度反芻はんすうする。

驚いたことに、何一つ忘れていない。

大まかな内容だけでなく、具体的な数値までも、だ。

普通は何かに書き留めておかなければすぐにわすれてしまうはずなのだが。


人間国は肉球魔王様の情報を得て、戦争を有利に進めようとしていた。


だが、愚かと言わざるを得ない。

何故なら肉球魔王様は人間国どころか、世界中、それこそこの魔獣都市マタタビを含めた全世界の者を敵に回したとしても、負けないからだ。


肉球魔王様は強いとか弱いとか、そういう次元で語って良い存在ではない。


控えめに言って頭がおかしい。


特定条件下でなければあらゆるスキルやダメージが通用しない。

魂を8つ分、保険に持っている。

『あらゆるものを見透かす』力、『お客さんを招く』力、『毛に爆発性の成分を含ませ、毛を飛ばし爆破する』力などを持っている。

触れた者からスキルを奪うスキル【スキル強奪】、あらゆるエネルギーを操作するスキル【加速度操作】、あらゆるスキルを模倣する【限定コピー】を有している。

【加速錬成】【変性錬成】【分離錬成】を極めている。錬金術で作ったスキル【爆弾】は、とある殺人王女の模倣であるとか。

お気に入りリストの者を害しようと触れたら爆発するらしい。……殺人王女なんて聞いたことが無いが。


肉球魔王様の情報については、挙げればキリがないが、言える事はただ1つ。


触らぬ神にたたりなし、だ。



◇ ◇ ◇ ◇



・人間国からのスパイ視点



あれから数日間。

色んな店を10数店舗ほどまわり、先輩の書いた本に載っている魔獣都市マタタビの情報の情報が合っているかどうか確認した。


またこの都市では、新聞と呼ばれる情報誌が格安で入手出来る。

私は2ヶ月分の新聞を入手した。


それから雑貨屋クローバーで、魔道具電気自動車という物を購入した。

魔石や魔力、油、太陽光などで動く馬無しの馬車のようなものとのこと。

600万マタタビで購入した。


人間国で売れそうな本や道具等も100万マタタビ分購入し、都市の外に置いてある車に乗せる。

都市の中で走らせるのは禁止されてはいないものの、走行速度がかなり厳しく制限されている。

あと、駐車していたら勝手に車の中にネコ科魔獣が入っていることがあるとか。


私は今日で調査を終了し、人間国へ帰るつもりである。


車に乗る前に、車体をバンバン! と叩いて、中にネコ科魔獣が入っていないかチェックする。


車の下から白い三つ目猫の魔獣が出てきて、ぴゅーっと走っていく。



「んま゛ー(三つ目猫はクールに去るぜ)」


「油断も隙もない」



一応車の下を覗き込み、何も居ない事を確認。



「帰るとしよう」



私は人間国へ帰るために車を走らせる。

といっても、地図で行き先を指定すれば勝手に車が走ってくれる。

私は何もしなくても良い。


たったの3日間で、人間国にたどり着いた。


……。


…………。


まぁ分かっていた事だが、私を雇っていた王族は全員投獄されていた。

肉球魔王様に喧嘩を売ったからだろう。

国名も変わってしまっていた。


なので代わりに、私が得た情報は新しい国王へと献上した。


すると国王から、魔獣都市マタタビに外公館を作るので、そこの領事になって欲しいと頼まれた。

出世のチャンスなので二つ返事で了承した。


準備をした後、家族を連れて魔獣都市マタタビへと再び向かう。

私の次の仕事は、人間国と魔獣国の交流を深めることだ。


やがて私は自国をはじめ、人間国全体の失われた文化を取り戻すのみならず、さらなる発展に貢献し、歴史上の偉大な人物の中に名を連ねる事になるのだが、それを知る事は無い。


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