424.【後日談3】潜入! 魔獣都市マタタビ その3


□前書き□


一応食事中の方は注意。

ばっちい。



□□□□□□□□□□□



・人間国からのスパイ視点



夜。中央広場に、ネコ科魔獣が集まっていた。

私は建物の影から、こっそりと様子をうかがう。


毎晩、この中央広場で、魔獣幹部による会合が行われるらしい。

この会合を通して、魔獣都市マタタビの方針が決定される。


魔獣幹部以外の周りのネコ科魔獣は、見ているだけであまり発言はしないようだ。



「んな(今日は肉球魔王様はいらっしゃらないが、まあいいでしょう。明日は例のアレですな)」


「うんみゅう(準備万全。朝イチで開始する)」


「みー(げっ?! 明日は魔獣お風呂大作戦?!)」


「ガォ!(あっ、さっそく逃げ出した魔獣が居るぞ! 捕まえろ!)」


「みぃー(やー! 濡れるのやー!)」



ネコ科魔獣の何体かが暴れ、周りのネコ科魔獣がそれを取り押さえようとする。

明日は月に1回の、魔獣を洗う日らしい。


先輩の本によればこの魔獣都市マタタビは他の魔獣都市に比べて病気が少ないようだが、こういった清潔に関する行事も関係しているのだろう。


暴れていたネコ科魔獣達は捕まり、悲しそうな鳴き声を上げながらどこかに連行された。



「うみゅ(あと、そこに隠れて様子を見ているスパイについて)」



ギクリ。



「うみゅみゅう(肉球魔王様は放置可と判断)」


「ヒヒッ、命拾いしたねぇ」


「アァー……幸……運」



私の事はバレてしまっているらしい。

何故だ、【隠蔽】スキルは使って、姿はくらませているはずなのだが。


いつの間にか私の後ろに、三つ目の白いネコ科魔獣が居た。

先輩の家に居た奴じゃないか?


そのネコ科魔獣は私の足元に来て、スンスンにおいを嗅ぐ。



「ま゛ー(こいつはくせぇッー! ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーーー!!)」



どうやら私は臭うらしい。

【隠蔽】である程度は臭いも隠しているはずなのだが。

やはりネコ科魔獣は鼻が良いのか。

一応、毎日体をお湯で拭いているが。


服か? 靴か?

……明日、新調することにしよう。

(なお一番臭かったのは髪の毛のもよう)


ところでこいつは、私の靴をクンカクンカし続けるのはどうしてなのか。

そして口を半開きにして「臭ッ」と言いたげな顔をしているのは何なのか。

(人間の足からフェロモンっぽい臭いがする。ネコ科魔獣によってはたまらない臭いなのです)



◇ ◇ ◇ ◇



・人間国からのスパイ視点



翌朝。

宿から出ると、あちこちからネコ科魔獣の悲鳴が聞こえる。

どうやら体を洗われているらしい。


この魔獣都市マタタビには公衆浴場もあるようだし、私も体を洗うとするか。

その前に、市場で服と靴を購入するとしよう。



……。



…………。



公衆浴場では、石鹸が使い放題だった。

シャンプー(?)やリンス(?)とかいう液体の石鹸もあったが、それは別料金だった。

無駄遣いは出来ないので、石鹸だけ使った。


頭がなかなか泡立ちしなかったので、結構汚れていたのだろう。

だが、汚れを落としてスッキリした。

これでネコ科魔獣から臭いと言われないはず。


今日は肉球魔王様が、宿屋から森へと向かう予定だ。

森の中については、先輩の本に記載は無かった。

結界が張ってあり、侵入出来なかったらしい。


歩いて、都市の外に出る。

そして『大魔導師の森』と呼ばれている森の前で待機。



……。



…………。



……来た、肉球魔王様だ。



「突然の訪問失礼します、肉球魔王様。どうか私に森に入る許可を頂けませんか?

決して中を荒らさないと約束します」


「にゃー」



先輩の本によれば、『大魔導師の森』に入る許可を魔獣幹部から貰おうとしたら「ガォ!(肉球魔王様の御住まいをその汚い足で踏みにじる気か!)」と激怒されたらしい。

その一件があったので、調査は打ち切りにしたそうだ。


だったら私は直接交渉に出ようと思う。

肉球魔王様は狭量ではないようだから、ひょっとしたら許可を得られるかもしれない。


肉球魔王様が宝石の板を取り出す。

『いや、お前じゃ中に入ったら即死するぞ』と文字が現れる。



「こう見えて、【隠蔽】【気配遮断】スキルを持っています。

戦闘も、それなりに出来ます」


「……」



じーっ、と見つめられる。

スキルを使われている。

頭の中を覗くスキルだろうか。



『国に残した家族のために、スパイ活動を成功させて成り上がりたい、か。

動機はご立派だが、身の程知らずなのは若さ故か。

農民が直接国王に申し出るようなものだぞ、国が違えばそれだけで不敬罪として斬り殺されるだろう』と文字が現れる。


「無礼を承知でお願い致し「にゃんこさーん、リリーちゃん洗い終わりましたよ~」「みゅ~(はぁ~さっぱりさっぱりにゃ!)」



都市から、エルフと白猫が出てくる。

肉球魔王様のお気に入り人物リストに入っていた、アウレネというエルフ、リリーという白猫魔獣だ。



「今日の森のすごろく大会、にゃんこさんも参加しませんか~?」


『参加しよう』と文字が現れる。



肉球魔王様がこちらに振り向き『お前も参加するのなら、森に入れてやってもいいぞ』と文字が現れる。

もちろん二つ返事で了承した。



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