416.【後日談3】そっぽ向く


ネコ科魔獣と人間が、首輪を通して意思疎通出来るようになった。


そのおかげで、以前よりもネコ科魔獣から、積極的に人間に話しかけるようになった。


大通りを散歩してみると、色々な声が聞こえる。



「ぶみゅー(餌くれ、餌)」


「ガルルル!(遊んでー、遊んでー)」


「みゅ~(抱っこするにゃ!)」


「くるなーん(開けろ! この扉を開けろー!)」



なお、人間側からすると要求が増えて面倒になったそうな。

あと餌くれコールは首輪が無くても分かるらしい。

心が通じ合ってるってことなのか。


散歩してると、前からナンシーさんが歩いてきた。

お買い物の帰りらしい。



「あら、猫さん」


「にゃー(こんにちは)」


「この特製の首輪を付けてる同士だと会話が出来るんだけど。

猫さん、その首に付けてる首輪の代わりに、この特製の首輪を付けてみない?」



プィッ。

俺はそっぽ向いた。



「ふーん? まぁいいわ。ネルと仲良くしてね」


「にゃー(おぅ)」


「一緒に帰りましょうか」



てってって。

俺はナンシーさんに付いていく。


てってって。トタトタトタ。

ドスドスドス。


俺は後ろを振り向く。

ネコ科魔獣が何体か付いてきてる。



「にゃー(何なんだお前ら)」


「くるにゃ!(暇だから付いてくー)」


「なー(付いてくと美味しいおやつが食べられると聞いて)」


「ガル!(行列を見ると並びたくなるんだー、分かるでしょ?)」


「にゃー(帰れ!)」



結局、宿屋の中まで付いてきた。

そして図々しく、おやつコールを連呼する。



「おやつはいいけれど、お金取るわよ?」


「くるにゃーん(ケチ!)」


「なぁ……(今月はピンチなんです……)」


「ガルルゥ!(帰ろー、帰ろー)」



ナンシーさんの一言で、ネコ科魔獣は帰ってしまった。

これが年の功ってやつか。

宿屋にやって来る荒くれ者の対応は慣れたものだ。

見た目は若くても立派なオバサンのナンシーさん。



「猫さん、ひょっとして失礼な事考えてないかしら?」



プィッ!

俺はそっぽ向いた。

何でバレたし。



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