417.【後日談3】肉球魔王様、人間国へ向かう
夜。中央広場にて魔獣幹部達の会合が開かれた。
今日の議題は、一部の人間国との外交について。
以前、人間国のうち3ヶ国が、勇者召喚を行った。
そのうちの1国の勇者4人は、国から逃げた。
残りの2国の勇者8名は、国の言いなりになるように洗脳されているそうだ。
ま、その気になればすぐ洗脳解除出来るので、今は放って置くことにしているが。
以前にそれら人間国3ヶ国とは、勇者召喚を行わない約束をし、その代わりに魔獣都市マタタビから食糧支援を行っていた。
人間国の多くは、栽培のノウハウの大半を失ったらしい。
かなり食に困っていたのだ。
だが、彼らが約束を破ったので、食糧支援をストップしている。
そろそろ1ヶ月経つ。
一応、国が正式に謝罪すれば、食糧支援を再開することにしている。
魔獣幹部達は、違約金を徴収すべきだと言ってるが、そもそも違約金を支払う能力があるなら食糧支援など受ける必要はない。
勇者に逃げられた国からは、既に謝罪の言葉と国王の一族数人の捕虜を受け取って、代わりに食糧支援を再開した。
残りの2国は、どうやら魔獣国チザンを攻め滅ぼす算段らしい。
2国のトップの連中は、魔獣国チザンを倒せば、人間の国全体が豊かになると疑ってないようだ。
もう何というか、救いようがないな。
「んなー(見せしめに、人間国の勇者を処刑してやりましょうぞ!)」
「にゃー(彼らに罪は無いから、洗脳解除したらそのままこちらで保護しよう)」
「うみゅう(違約金を人間国から無理やりでも徴収すべき)」
「にゃー(金の亡者、お前は人間国のコインが欲しいだけだろ)」
「……」
金の亡者は無言で毛づくろいを始める。
とあるラスボスは素数を数えて気分を落ち着かせるそうだが、ネコ科魔獣は毛づくろいして気分を落ち着かせる。
図星だったらしい。
「あたしらが攻めなくても、あと半月で食糧が尽きるねぇ。
放っておくってのも手だけど」
「にゃー(それだと餓死者が酷いことになるぞ)」
「アァー……自……業……自……得」
「にゃー(悪いのは一部の連中だけなんだよなぁ)」
能力の無い物が上に立つと、全体が駄目になる。
生前でも、この世界でも、何度も見た。
王様を始めとする為政者が、自分勝手な事をした。
そのせいで民衆が苦しんでいる。
だから、その状況を変えるためにはトップを変える必要がある。
人間国の連中もそれに気づいている者は多い。
革命軍っぽいのも出来てるし、そいつらが動くのは時間の問題だ。
多分、勇者や軍が出払った時に一気に動くと思われる。
だが、それでは遅すぎる。
食糧難で、人間国の2人に1人は餓死してしまう。
「にゃー(革命軍を焚きつけるか、あるいはいっそ俺たちで攻めるか)」
「んな(被害が少ないのは、後者でしょうな)」
よーし、人間国を乗っ取りましょ~!
出陣じゃ! バステト様の出陣じゃ!
……アウレネとシルフ婆さんの声の幻聴が聞こえる。
俺、疲れてるのかな。
◇ ◇ ◇ ◇
昨日のうちに手紙で、2国の人間国へ使節を送るという事を伝えた。
そして今日、魔獣都市マタタビからの代表として、俺が行くことにした。
本当は魔獣幹部達に任せる予定だったが、ちょっと困った事があったのだ。
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【四次元空間】スキルは定期メンテナンス中です。
メンテナンスは本日夜に終わる予定です。
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【四次元空間】スキルのメンテナンスの日らしい。
5000年に1度くらいなのだが、間が悪い。
今日は【四次元空間】が使えない。なので四次元ワープが使えない。
あと、荷物の持ち運びを四次元空間に頼り切りだった魔獣幹部達が途方に暮れたのだ。
今は魔獣幹部達は、レンタル四次元空間を業務に使ってる店に説明や補償を行う業務に追われている。
なので、暇している俺が向かうことになった。
「にゃー(行くぞ、ネクロクロウ)」
「カー!」
大魔導師の森に住んでいるカラスの魔獣のネクロクロウに、運んでもらう事にした。
俺を掴んだネクロクロウは、空高く飛ぶ。
「みゃあああああ!(肉球魔王様がカラスの魔獣にさらわれてるー?!)」
「なーご(この鳥野郎! 待てー! 肉球魔王様を放せー!!)」
眼下のネコ科魔獣達が騒いでいるが、まぁ問題無いだろ。
よーし、出発だ。
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