412.【後日談3】ゾンビキャットの帰還


雑貨屋クローバー横の共同スペースの台所にて。

ネル、ヨツバ、シャムが集まっていた。

時々女子同士で集まって料理の練習をしているのだとか。



「今日はチョコレート作りをしたいと思います」


「猫さんにあげるのー?」


「いや、リオン君にプレゼントしようかと。

ってか猫って確かチョコ駄目じゃなかったですか?

首輪型PCで検索……うん、駄目ですね、下手すると死にます」


「残念ねぇ」



俺は暇なので、絨毯じゅうたんの上に転がり、昼寝することにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・魔獣都市シャケにて



凍った大地に、大勢のアザラシ科魔獣が集まり、ゾンビキャットを囲んでいた。



「ゲェェェエエッ!(この度は、食糧難に対する食肉の支援、並びに養殖場の危機を救ってくださり、ありがとうございました!)」


「キュゥウウッ!(ありがとー!)」


「アァー……ウ……ン」



食糧支援をし、養殖している魚の疫病を【ヒール】で取り除き、薬を餌に混ぜる指導を終えたゾンビキャットは、今日帰る。

アザラシ科魔獣から感謝の言葉とともに、名物の魚肉ソーセージをプレゼントされた。



「ゲェェッ、ゲレェッ!(ご注文通り、イカや塩を始めとするネコ科に有害な物は一切使用せず、魚肉から塩分を分離し取り除いた特注魚肉ソーセージをご用意致しましたよ!)」


「アァー……感……謝」



食糧難で困っているアザラシ科魔獣に魚肉ソーセージをたかるのはどうかと思ったが、代わりに大量の食肉を持ち込んだので彼らが困ることは無いはずだ。

寒い気候なので食肉は冷凍保存出来るし、万が一足りない場合は追加支援を行う予定となっている。


ゾンビキャットは感謝の言葉を背に、魔獣都市マタタビへと帰ることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ視点



昼寝から目が覚めると夜だった。

誰も俺を起こしてくれなかったらしい。

まあいいけど。


外からネコ科魔獣の騒ぐ声が聞こえる。

ゾンビキャットが帰って来て、魚肉ソーセージの取り合いが始まっているらしい。


なお魔獣都市マタタビの建物の外壁は遮音性に優れているので、よほど耳が良くない限り、人間には外の騒ぎの音は聞こえない。

俺やネコ科魔獣は耳が良いから普通に聞こえるけどな。


外に出る。

ソーセージを咥えたネコ科魔獣が、追いかけられている。

仲良くしろよ。


中央広場に向かうと、ぐったりした魔獣幹部達が居た。

手分けしてソーセージを分け与えたのだろう。

数がそれほどでもなかったみたいだから、取り合いが起こったっぽいが。



「にゃー(お疲れ様)」


「んなぁ(これは肉球魔王様! つい先程、ゾンビキャットが帰還しましたぞ)」


「アァー……報……告……書」



ゾンビキャットから報告書を受け取る。

ほう、今回の食糧難は養殖場が過密だったから、疫病の被害の拡大が早く起こった可能性が高いというわけか。



「にゃー(幸いアザラシ科魔獣自体に疫病は感染しなかったわけだが、もしこれがアザラシ科魔獣に感染したとすれば……)」


「都市が1つ無くなっていたかもねぇ」



食糧支援だけでなく、こういった知識の伝授も必要かもしれないな。

向こうの代表に手紙を出して、留学生を募るとしよう。


数ヶ月後、アザラシ科魔獣の留学生がネコ科魔獣にかじられる事件が発生するのを、この時の俺は知らない。



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