407.【後日談3】壊滅的お土産センス


ここは宿屋の管理人室。

ネルとマック君は椅子に座って、壁に映し出している映像に歓声を上げる。

俺が旅行の時に撮った写真や動画だ。


ちなみにヨツバはベッドで横になってボーッとしている。

眠っているわけではないみたいだが。



「わー! 水と変な生き物がいっぱい!

光ってるのも居る! キレイだなー」



ディープ・ブルー・マリーの光景にはしゃぐネル。

そういえばネルは海を見たことが無いんだっけか。

あそこで食べた魚、美味かったなぁ。



「これは海の中の都市……? 実に興味深いね!」


「お魚さんって、こんな風に泳ぐんだー」



ネルは魚を見て目を輝かせる。

生きた魚を見るのは始めてか。

海だけでなく川にも魚は居るが、あまり見る機会は無いのかもな。



「猫さん、もうすぐナンシーさんが仕事終わってこっちに来るので、その前に二人にお土産を渡したらどうですか」



おっと、もうそんな時間か。


俺は四次元空間から箱を取り出す。

確かマック君へのお土産はこのあたりに入れていたはず。



「みゃあー(これは良い箱です!)」



どこからともなくサバトラの猫のサバさんが現れ、箱にダイブイン。



「にゃー(邪魔だ)」



サバさんを押しのけながら箱を探る。

あった、あった。


俺はマック君に、葉酸サプリの入った袋を渡す。



「ん? 何かな? 薬?」


『毎日少しずつ摂るといいぞ』とエメラルド版に刻む。


「猫さん、普通にセクハラです」


「???」



これは妊娠する可能性のある女性が、赤ん坊の先天性疾患を避けるために飲む物だ。

当のマック君は何も分かっていないみたいだが。

お、サプリの説明文を読んで赤くなった。



『次にネルのお土産だが』と刻む。


正直、これが一番悩んだ。


ネルは基本的に欲がない。

趣味らしい趣味が無い。

ブランド物やアンティークにも興味が無い。


だが、料理が得意だったのを思い出し、ならばと選んだ。



「わー! 料理本だー! ありがとー!」


「何ですか『漢の料理レシピ1万品』って」



小洒落た料理のレシピは、宿屋の娘だからある程度知ってるだろうから、これを選んだのだが。

何か問題が?


なお、電子ペーパー製なので数ページしかない。

持ち運びにも便利な一品だ。


ついでにナンシーさんのお土産は、リンス入りのシャンプーの高い物にした。

男の俺としては、入ってる成分が一緒なのに値段が違う事に納得が行かないが。


シャンプーをネル経由で受け取ったナンシーさんは、後日サバさんをそれで洗ってしまい、サバさんの皮膚が傷んでしまうのだが。

それはまた別の話。



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