406.【後日談3】看病パンチ
魔獣幹部達と、主要魔獣達にお土産を渡し終え、現在は夕方。
俺は宿屋の前に来た。
次はネルとナンシーさんにお土産を渡すことにしよう。
宿屋のドアをノックする。
「にゃー(ごめんくださーい)」
「はーい。あー、猫さんだー」
ドアを開けた黒髪少女のネルが俺を見てそう言うと、周りのネコ科魔獣数匹が「呼んだ?」と言いたげにこちらを向く。
今更ながらこの魔獣都市マタタビだと、猫さんでは誰を指すのか分からないな。
俺は開けられたドアの隙間から宿屋に入る。
「あら猫さん。しばらく見かけなかったけれど、ヨツバみたいに旅行に行って来たのかしら?」
明るい茶髪をした中年女性、宿屋のオーナーのナンシーさんがカウンターに肘をついてくつろいでいた。
ヨツバみたいにというか、ヨツバと一緒に旅行してたんだけどな。
「ヨツバは帰ってすぐ寝ちゃったから、猫さん旅行のお話聞かせてー」
「にゃー(おう)」
俺はネルに付いていき、管理人室にお邪魔することにした。
◇ ◇ ◇ ◇
・アウレネ視点
ここはにゃんこさんが住んでいる森、通称『大魔道士の森』です~。
昨日からオリバーが体調を崩して熱を出しているから、彼の家にお見舞いに来てます~。
にゃんこさんが今日帰ってくるみたいなので、後でオリバーを診てもらいましょ~。
「みゅ~(病気で寝込むなんて、オリバーは情けないにゃ! おいらが守ってやるにゃ!)」
「おい、その汚い尻を俺の顔に向けるなッ! やめろ尻を近づけるなッ!」
白猫のリリーちゃんが、寝ているオリバーを気遣ってます~。
可愛いです~。
「オリバーや、調子はどうじゃ?」
「シルフ様!」
「病人は寝てなきゃ駄目ですよ~」
シルフ様が、土鍋を持って上がって来ました~。
にゃんこさんに足腰を治してもらったおかげで、こうしてツリーハウスに登って来る事が出来るみたいです~。
やっぱりにゃんこさんは凄いですね~。
シルフ様がいらっしゃったから、起き上がって出迎えようとしているオリバーを止めます~。
も~、昔からシルフ様の事が好きですね~。
シルフ様が幼い頃、自分がお嫁にするとか言ってましたからね~。
今それを言ったら「忘れろッ!」と怒りますけど~。
「卵粥を作ったから、お食べ」
「ありがたく頂くぞ」
「みゅ~(熱そうにゃ)」
リリーちゃんがお粥の入った土鍋に顔を近づけたので、それを邪魔そうにオリバーが押しのけます~。
「みゅ~(何するにゃ!)」
「ぐはッ?! このッ……!」
リリーちゃんがオリバーの腹に猫パンチして、オリバーがキレて反撃。
オリバーったら、大人げないです~。
「これ! 喧嘩するでないわッ!」
「リリーちゃん、駄目ですよ~」
「みゅ~(おいらは悪くないにゃ)」
リリーちゃんを抱きかかえます~。
この二人、相性良くないんでしょうかね~。
私はリリーちゃんと喧嘩したことありませんけどね~。
「アウレネ、その猫を連れて帰れッ!」
「みゅ~(せっかく看病に来たのに、酷い扱いにゃ)」
「しょうがない、行きますよ~リリーちゃん」
リリーちゃんを抱っこしてオリバーと離します~。
放っておくとまた喧嘩しそうですからね~。
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