404.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】後始末と帰還


□前書き□


これにてクロスオーバーは終了です。


□□□□□□□□□□□


ヘッドセットを被り、『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲーム内へと入る。


ダンジョン入り口には、いつぞやのヨツバの配下の魔獣達が居た。


俺はパワードスーツを脱いで、彼らを迎え入れる。

商人のパズズから購入したお茶と焼き菓子を差し出す。



「にゃー(いらっしゃい。ヨツバとは仲直り出来たのか?)」


「それが……」



話を聞くと、どうやらヨツバから一方的にお別れを言い渡されたらしい。

アイツも素直じゃないな。



「にゃー(で、お前らはどうしたい?

このままゲーム内に残り続けるか、消えるか、それとも……)」


「その件で、ご相談がありまして」



ふむふむ。

ほうほう。



「にゃー(可能だが、一生奴隷みたく、こき使われるかもしれないぞ?)」


「問題ありません。ぜひともよろしくおねがいします」



まぁ、頼まれたならするけど。

本当にいいのだろうか。



◇ ◇ ◇ ◇



現実世界の時刻で、午前10時になった。

先日告知した通り、俺はチートモードを起動し、再び全NPCにメッセージを送信する。



『おはよう。以前に告知したように、この世界は現実世界の今日で消滅する。

現実世界で暮らしたい者は、現実世界へと連れて行ってやろう。

消滅するのは嫌だが電脳世界に留まりたいという奴は、別の電脳世界を用意するのでそこに住んでもらおう。

どちらも嫌だという奴は、残念だがお別れだ。転生する事もなく、消滅してしまうだろう。

この3つのどれも選ばなかった者は、自動的に電脳世界に住む選択肢となるので注意だ。

では、各自、目の前に表示した選択肢から1つ選んでくれ』



送信後、俺の元に選択結果の数値が表示される。


別の電脳世界に住む、を選ぶ者がほとんどのようだな。

消滅を選んだ者は今の所ゼロ。


現実世界に再現されたいという者が多すぎたら魂もどきを作り足す必要があったが、どうやら足りそうだ。


さて、それでは作業に移るとしよう。


俺はゲームからログアウトした。



◇ ◇ ◇ ◇



俺は『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲームサーバーの所へ四次元ワープした。


まずは、電脳世界に留まりたい者について。


このゲームの正式版に、彼らのデータをそのまま移すことにする。

正式版は、ソフの配下が管理する予定なので、彼らに任せるとしよう。

一応、ゲームに詳しそうな命君に相談役を頼んでおくか。


サーバー内の鑑定神ソフの魂データと肉体データは危険物なので、俺の首輪型PCにデータを移した。

一応、神様としての仕事は出来るようにしてあるから大丈夫だろう。


続いて現実世界に再現されたい者について。


まず彼らの記憶データをメモリカードに移し、メモリーカードを肉体に埋め込む。

そして肉体に魂もどきに注入する。


こうすることで、メモリーカード内の記憶データが魂もどきに浸透するのだ。


出来あがった生物達は、俺のホムンクルスが様々な異世界へと送り届ける。


ちなみに向こうで死んだら、魂もどきがハーディス様の元へと送られ、再度転生する。

その時に魂もどきは本物の魂へと生まれ変わる。


早々に作業を終えた俺は、ホムンクルス達の帰還を待つ間に、ヨツバの配下の魔獣達に頼まれた処理をすることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



窓際でのんびりと日向ぼっこしていると、ヨツバが戻ってきた。



「ただいま戻りました」


「にゃー(おかえり)」


「猫さんは、ゲームの住人を現実に再現する作業は終わりましたか?」


『つつがなく終了したぞ』と首輪型PCで打つ。


「……」



ヨツバが何か聞きたそうにしていたが、言葉を飲み込んだ。

十中八九、ヨツバの配下の魔獣がどうなったか聞こうとしたのだろうけど。



「そういえば、外は大変なことになってますよ」


『何が?』と打つ。


「このマンション、自衛隊と警察に囲まれています。

何でも、猫さんが『地球の光を一時的に遮断し、世界中の住人を恐怖に陥れる』という世界規模のいたずらをしたので、国際指名手配されたみたいです。

猫さんは、土倉花さんの口封じしてませんでしたよね?

彼女から情報が漏れて、生きてるってバレてますよ」


『あぁ、それか』と打つ。



現地住人は俺に感謝するどころか、俺に罪をなすりつけるという恩知らずな事を考えたらしい。

まったく、困ったものだ。



『俺の用事は済んでるし、ヨツバが良いのなら、もう帰るか』と打つ。


「そうですね」



ヨツバは少しさびしそうな顔をしている。


そんなヨツバに、俺はダンボール箱を渡す。



「……これは?」


『ヨツバのホムンクルスだ』と錬金術でエメラルド版に刻む。

現地住人と喋る機会も無いし、首輪型PCで文字を打つのもやめだ。


ダンボール箱から、小人型のホムンクルスが100体現れ、ヨツバに敬礼をする。



『こき使うなり、一緒に遊ぶなり、好きにすると良い』と刻む。


「そういえば、首輪型PCを注文した際に、一緒に注文しましたね。

ありがたく頂戴しましょう」



ヨツバは俺と同じように、ホムンクルス達を四次元空間に収納した。



『よし、帰るか』と刻む。


「えぇ」



俺達は、魔獣都市マタタビに向かって、加速度を操り、飛ぶことにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・土倉花視点



私は、友達の金髪美少女、百乃(ももの)アリーと一緒に、ゲーセンを出る。



「いやー助かったよ、アリー」


「まったく、何なんですの?!

ゲーセンでシューティングゲームの勝負をしている最中に警察に話しかけられるなんて、聞いたことがありませんわ!

わたくしのボディガードが睨みを効かせたから、あなたが連行されず良かったものを」



ウチのマンションに来た肉球魔王様が、世間を騒がせてるっぽい。

その事を根掘り葉掘り聞かれた。


で、自衛隊と一緒に肉球魔王様の部屋へと突撃したらしいけど、どうやら既にもぬけの殻だったとか。


私の部屋の肉球魔王様の像については教えていない。

教えたら絶対に面倒なことになりそうだから。


マンションの他の住人は、ちらりと見かけたという程度で、ほとんど肉球魔王様の事は知らないみたいだ。


私に取材しようと何人か声をかけてきたけど、アリーが全部追い払ってくれた。

持つべきものは社長令嬢の友達だね。


何度も肉球魔王様とは何者か、と聞かれたけれど、私だって知らないし。

宇宙空間でも平気だったみたいだし、もう究極生命体でいいんじゃないかな。



◇ ◇ ◇ ◇



・『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のヨツバの配下視点



ヨツバ様に仕えていた我々人型魔獣は27体。

我々全員、肉球魔王様の力により肉体と魂を授かり、現実世界に生を受けた。


といっても、ゲーム内の肉体とは違った小人の肉体。

ホムンクルスと言うらしい。

ゲーム内の我々の肉体よりも能力が凄まじく高いのには苦笑したが。


我々は、ホムンクルスとして、もう一度ヨツバ様に仕えることにした。

正体は明かしていない。

ヨツバ様を支えるのに、そんな情報は不要だ。


我々以外にもヨツバ様に仕えるホムンクルスが73体も居る。

彼らに負けないように、精一杯働くことにしよう。


ヨツバ様の生活を豊かにするために。




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