403.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】飽きた
自室へ戻ると、ヨツバはヘッドセットを被ってベッドに横になっていた。
どうやらゲーム中らしい。
俺はダンボール箱に入り、錬金術を使って、空の魂もどきを大量に制作することにした。
現実世界に再現されたい奴の記憶を、この中に入れるのだ。
記憶の入った魂もどきを、肉体に込めれば現実世界への再現が完了するのだが。
さすがに俺1人では手が足りない。
肉体の作成はホムンクルス達に任せるとして、俺は魂もどきを作る作業に入るとしよう。
昨日までの希望者の分の魂もどきを作るのに、1時間くらいかかるかな。
魂もどきが出来たら、いったん俺もゲーム世界に入って、彼らの意志を改めて聞くとしよう。
さて、作り始めるか。
◇ ◇ ◇ ◇
・ヨツバ視点
ここは『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲーム内の、私のダンジョン内。
世界樹製の壁の大部屋に、イケメン魔獣達が私を囲い、
「お待ちしておりましたヨツバ様、我々は」
「あー、あー! 聞こえないし聞かないです!
今から私は独り言を喋るので、黙って聞いていてください!」
何かを喋ろうとしたのを遮り、私は一方的に発言する。
「よーく考えたら、別にあなた達にこだわる必要はなかったんですね!
このゲームの正式版が出たら、そっちで改めて魔獣達を集めればいい話ですし!
なので、全然、ぜーんぜんっ! 寂しくありませんから!」
「ヨツバ様……」
「それじゃ! 私はログアウトします!
あなた達と居ると、私の貴重な時間が無駄になるらしいですからね!
……ばいばい」
何かを言いたげにしていたイケメン魔獣達から顔を背け、私はログアウトした。
これでいい。
これでいいんだ。
彼らはゲームのデータ。
私は生身の人間。
決して分かり合えることはない。
彼らは私を拒絶し、私は彼らを拒絶した。
これでお互い様だ。
これがあるべき姿だと言うのなら、そうなんだろう。
生身の人間同士なら気まずいけれど、彼らはデータで、すぐに消滅する運命にある。
彼らが消えた後、私は一時的に喪失感に襲われたとしても、時が経てばコロッと忘れるのだろう。
ヘッドセットを取り外す。
猫さんはダンボール箱に入って、体をローリングさせている。
何してんだか。
◇ ◇ ◇ ◇
・トミタ視点
飽きた。
ひたすら
予定数の8割を作ったところで、俺の集中力が途切れた。
この体になってから、随分と飽きっぽくなった気がする。
ネコ科という種族の傾向なのだろうけど。
体をゴロンゴロンさせてのんびりしていたら、ヨツバと目があった。
もうゲームは終わりか?
ヨツバはため息をつき、「お土産を買いに行ってきます」と言って出ていった。
彼女はお土産は旅行の最終日に買う派らしい。
俺は気が向いたら買う派だが。
さぁて、気分転換も済んだことだし、空の魂もどきを作る作業に戻るとしよう。
こうして俺は、ゲーム内の住人を現実世界に再現する準備を終えた。
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