402.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】置き土産
翌日。
とうとう旅行も今日で終わりだ。
帰るのは昼過ぎの予定だ。
旅行初日から何度か、このマンションの管理人にメールしたのだが、一向に返ってこない。
で、ちょっと調べてみたら出張先で入院しているらしい。
交通事故で意識不明の重体、だそうだ。
なので置き土産代わりに【ヒール】をかけてやった。
今頃は目が覚めて周りが慌てているに違いない。
この世界であまり人の人生を変えてしまうと怒られるのだが、このくらいならいいだろう。
さて、ヨツバの調子は……って、この音は、
「ボリボリ、ボリボリ」
「にゃー!(おぉぃ! 何食ってる?!)」
ヨツバからキャットフードを取り上げる。
あぁ、そこそこ減ってる。
割と高かったのに。
「いえ、軽くて味も控えめなので、朝食に良いと思いまして」
『全然良くないぞ?!』と首輪型PCで打つ。
シリアルを食べる感覚でキャットフードを食べる奴があるか。
ちゃんと人間らしい食事をしなさい。
俺はヨツバに、コンビニで買った(昨日土倉花に買わせた。お金は俺が払った)惣菜パンを渡す。
「こっ、これは焼きそばパン! 食べるの百何年ぶりでしょうか……」
『それ食べたら、荷物の整理しておけよ。
今日の昼に帰るからな』と打つ。
「もぐもぐ。分かりました」
ヨツバと一緒に朝食を摂り、俺はお別れの挨拶をしに、土倉花の部屋に行くことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
土倉花は電子版の広告チラシを見ていた。
ふむ、今日はポテチが安いのか。
「にゃー(おはよう)」
「うぉっ、びっくりした!
……音もなく、いきなり背後に現れないでよ」
そうは言っても、ネコ科は足音を肉球で消音しているから、仕方ない。
『短い間だがお世話になったな。俺は今日帰るぞ』と首輪型PCで打つ。
「ああ、うん、突然だね。
もう驚かないけど。またね」
『お礼に部屋に、俺の姿の木製像を置いていってやろう』と打つ。
「要らないよ?!」
どっこいせ。
部屋の隅(すみ)に、木製像を置いた。
「デカっ?! 本物より大きくないコレ?!」
『さよならだ』と打つ。
「待て! この木像、持って帰れ……って重っ?! 像、重っ?!」
『人生に困ったら、この像に祈れ。そしたら助けてやろう。じゃあな』と打つ。
「現在進行系で困ってるんだけど?! 部屋に勝手に、余計なインテリア置かれて困ってるんだけどーー?!」
俺は四次元ワープで、マンションの自室へと戻った。
別れというのは、いつの世も辛いものだな。
◇ ◇ ◇ ◇
・鑑定神ソフ視点
ここはどこかの洞窟内。
俺の体と魂は今、『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲームの世界に閉じ込められている。
即死級の呪いやスキルに関しては、俺は耐性を付けている。
ただ、それ以外の耐性に関しては多少の穴がある。
例えば今回みたいな、殺さず閉じ込めるタイプの能力とか、だな。
ま、死ななければ大したことはない。
『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲーム内に居るせいで、能力が人間の3倍程度しか無いが、問題無い。
『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』の人間と違い、ここに居る俺は魂がある。
つまりスキルを使う事が出来るのだ。
まったく、トミタは詰めが甘い。
これで閉じ込めた気になっているのだからな。
奴が四次元ワープした瞬間、俺に対する警戒が緩くなる。
そこを狙ってスキル【再構築】を発動だ。
これで再び現実世界へと俺の体が再構築さr
「スキルなぞ、使ってんじゃねぇ!」
「ぶはっ?!」
どこからともなく現れた謎の青髪の男の斧に、俺はふっ飛ばされた。
視界は再び洞窟内。
俺は死に戻りをしたらしい。
謎の男は居ないな。
アレは何だったのか。
まぁいい。
再びスキル【再構築】を発動s
「スキルなぞ、使ってんじゃねぇ!」
「ごふぅ?!」
またもや謎の男に、俺はふっ飛ばされた。
再び死に戻る。
……理解した。
アレはスキル使用を無効化するガーディアンだ。
アイツが居る限り、俺はスキルを使用する度に殺される。
いや、正しくはゲーム内に留められるというわけか。
仕方ない。
やりたくないが奥の手を使うとしよう。
俺は人間の神。
あらゆる人間の可能性を引き出す事が出来る。
つまり人間の姿をしている者が出来る事なら、ほぼ全て俺も出来る。
スキルの使用無しに。
もう一度スキル【再構築】を発動しようとする。
「スキルなぞ、使ってんじゃねぇ!」
「馬鹿の一つ覚えか! 喰らえ、時止め!」
これで奴は動けなくなり、俺だけが動けブッハァ!
「ふん、軟弱者は消え失せろ」
馬鹿な、何故時を止める能力が使えなく……あぁ、そうか。
これは俺の体ではないからか。
俺の本来の体は、人間の3倍程度の能力なぞという弱い体ではない。
今の俺の魂の器は、ゲームが提供した外殻。
言い換えればアバター。
つまり今の俺は人間ではないから、人間の神としての能力が使えなくなったのだ。
俺の体も、この世界のどこかに封じられているはずだ。
確かトミタは肉体ごと封印したはずだからな。
トミタは、1000年間、閉じ込めの刑と言ってたな。
『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』の住人と同じ条件で、1000年生き延びてみろというわけか。
スキルを使わず、死んでも死ねないこの世界で。
冗談じゃない。
1000年以内に脱出してやるぞ。
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