396.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】ギュィーン


俺は今、『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』のゲーム中だ。


ここは、俺のダンジョンを乗せたコロコロジェット君の近くの、地面の上。

今の俺の身体能力では、コロコロジェット君から降りる事は出来ても、登る事は出来ない。


『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』はアップデートによって、身体能力の上限下限が設定された。


具体的には、下限は一般人の平均値。

上限はオリンピック記録の2倍以内。


これにより実質、俺は弱体化された。


今の状態では、レバーを引っ張る力、アンカーを下ろしたり引き上げたりする力なども足りない。


だが問題ない。


『メニィ・ダンジョンズ・オンライン』では、プレイヤーが自分で道具を作る事が出来るのだ。

俺がコロコロジェット君を作ったように。


俺にはこの2つの装備品のおかげで、斬撃と打撃を3m以内なら好きに飛ばす事が出来る能力がある。


――――――――――――――――――――――――

呪われたパーティハット(レア度E)

【説明】キラキラ模様の、小さな三角帽。

【効果】なし

※飛ぶ斬撃(斬撃を3mほど飛ばす事が出来る)

※無手の呪い(武器を装備出来ない)

――――――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――――――

呪われたTシャツ(レア度E)

【説明】「シャケ!」という文字と魚がプリントアウトされたTシャツ。

どう見ても鮭には見えない。

【効果】遊泳速度上昇

※飛ぶ打撃(打撃を3mほど飛ばす事が出来る)

※無足の呪い(靴装備を装備出来ない)

――――――――――――――――――――――――


そのおかげで、物質を分子レベルで好きに操作出来るので、実質何でも作れる。


さっそく工作開始だ。



◇ ◇ ◇ ◇



というわけで、魔獣の素材と地面の金属などを組み合わせ、俺用のパワードスーツを作った。

電動アシストにより、バッテリー1つで約8時間、常人の20倍の力が発揮出来る。


装着してみた。

傍から見れば、黒い猫のロボットに見えるだろう。


動く度にギュィーン、ギュィーンとうるさいが、仕方がない。



「にゃー(さて、俺のダンジョンの中には、パズズ達が居るはずだな。

かなり放置してしまったが、まあ死んでも復活する世界だし、いいか)」



外で狩った動物の肉を一応与えてはいたものの、ゲーム時間は現実世界の5倍の速さで進んでいる。

で、俺は現実世界で何日放置してたっけ。

多分、ゲーム時間で半月くらい放置してる計算になるのかな?


……食料、足りてないかもしれないな。


ギュィーン、ギュィーン。

俺はコロコロジェット君に登る。


ギュィーン、ギュィーン。

そしてダンジョンの入り口にある、剣の刺さった台座に触れ、ダンジョン内に入る。



「肉球魔王様ですか?」


「にゃー(久しぶりだな)」



ギュィーン、ギュィーン。

商人のパズズと、その護衛の黒鉄くろがねの2人が、入り口近くに居た。

俺は彼らに駆け寄った。ってか、やっぱり稼働音がうるさい。



◇ ◇ ◇ ◇




この世界には疲れない馬だけでなく、調教された大型魔獣(疲れない)などが居て、移動にはさほど困らないらしい。

空を飛べば俺のコロコロジェット君よりも速い速度が出るのだとか。


で、パズズは俺が居ない間、俺が注文した通り、現実世界で再現されたいと願う人を、世界中から俺のダンジョンへと集めた。

このゲームはβテストの世界なのでかなり小さく作られているので、ゲーム時間で半月もあれば、住人を移動するのは十分可能だったのだろう。



「ところで、その姿は何なのですか?」


『猫型パワードスーツだ』と地面に刻む。

うーん、一面砂だから読みづらい。


ギュィーン。ビビーーーーッ!

パワードスーツの指から炭の粉末を噴射し、文字を描く。

これなら読めるか。



「かっこいいーー!」



パズズが目を輝かせて見ている。

子どもか。



「私にもパワードスーツ作って貰えませんか!」


『やだ』と描く。



いい大人がションボリするなよ。



『で、現状はどうなってる?』と描く。


「はい。ここに居る住人7575人が、再現希望とのことです。

一応全世界に再現希望の者をここに送るようにお願いしたのですが、ダンジョンマスターによって連絡が閉ざされた町が3つ、そもそも会話に応じない町が9つ。

残りの全ての町からは、移住が完了しています」


『何か問題は起きていないか?』と描く。


「住居は、簡易テントを手配し、食料は肉球魔王様から頂いた物を分配しています。

ただ、食料が足りなかったので、私のポケットマネーで、近くの町からいくらか購入しました」



『これを売って、資金にしてくれ』と描き、俺は持ってる魔獣の素材を渡す。



「では、そのように手配します。

今後の予定はどのようになっていますか?」


『現実での最終日前日に、再度希望者が居ないかを全世界に向かって問いかける。

で、現実での最終日に、希望者全員の再現を行う。それまでは特に何もしない』と描く。


「わかりました。各町からの代表へ、そのように伝えておきます。

黒鉄から質問はありますか?」


「現実世界に再現する、と言っているが、具体的にはどうやるんだ?」


『現実世界に、肉体となる体を作って、そこに魂もどきを入れて、記憶を刻み込む』と描く。


「……まるで神のような所業だな」



まるでも何も、俺は神様なのだが。

そんなに威厳が無いのだろうか。


『俺って威厳ある?』と描いたら、首を横に振られた。

何でだ。

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