382.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】ビアガーデン
夕方。俺はヨツバと土倉花を連れて、とあるホテルの庭で開催されているビアガーデンにやって来た。
「今日はゴチになりまーす」
「ってか、連れてきて良かったんですか、猫さん? この子、未成年ですよ?」
『個人認証システムで、未成年にはお酒が出ないように装置が設定されてある。
それに、AI搭載超小型自動飛行監視カメラなる物が、いたる所に飛んでいて人間達を監視している。
土倉花に誰かが酒を渡そうものなら、すぐにロボットの警備員が駆けつけてくるぞ』と首輪型PCで打つ。
「近未来パネェです」
「???」
ヨツバと俺のやり取りに、土倉花が首をかしげる。
彼女にとっては、こういう社会は当たり前過ぎて、何を今更言ってるのか、といった感覚なのだろう。
前に並んでいた人たちが入場し、俺達の番になった。
スーツ姿の受付のお姉さんが迎えてくれる。
近未来でも、あんまり服のデザイン変わらないんだな。
合成繊維の素材に関しては随分と進化したっぽいけど。
「いらっしゃいませ! 何名様でしょうか?」
「3名です」
「2名と、ペット1匹ですね! 畏まりました!
ペットの糞はお持ち帰りくださいね!」
「にゃー(俺はペットじゃないぞ)」
俺は受付のお嬢さんに抗議した。
一応ペット同伴許可のビアガーデンなのだが、大抵は連れてきていない。
外に連れ出せば病気を貰うかもだし、そうでなくてもストレスになるからな。
良識のある飼い主ならまず連れてこないだろう。
一応俺の奢りということになっているので、俺は3人分の食事料金を前払いした。
後払いとどちらにするか選べるのだが、俺は前払い派だ。
「えっ?! 高次知能生物?!
し、失礼致しました……」
俺達の名前やちょっとした情報が、受付嬢の持っている電子ペーパーに表示され、それで気づいたのだろう。
ってか、ホテルの従業員にしては対応や言葉遣いが雑だな。
新入りだろうか?
じーっ。
「(猫の高次知能生物が私を見ている……ハッ!
猫同士が目を合わせるのは、喧嘩の合図だったはず!
つまり、私は今喧嘩を売られている?!
あわわわ、さっきの対応で怒らせちゃった?!)」
何故か知らないが、あたふたしながら百面相している受付嬢。
お客さんの前ではもうちょっとポーカーフェイスになった方がいいと思うぞ。
「すんませーん、予約した安沢っすけどー」
「猫さん、受付の女性を舐め回すように見るのは失礼ですよ。
仕事の邪魔になっているから、行きますよ」
「にゃー(あーれー)」
ヨツバに首根っこ掴まれて、連れて行かれる。
というか俺がセクハラしたみたいな言い方はやめろ。
◇ ◇ ◇ ◇
ドリンクはセルフサービス、料理はビュッフェ方式で食べ放題。
ヨツバと土倉花も、自分の好きな物を取りに行った。
俺は、魚介類料理のコーナーに居る料理人のお兄ちゃんに向かってタイピングする。
『マグロ寿司のシャリわさび抜きを4つ。カツオのたたきのネギ生姜タマネギ抜きを1つ。それから』
「(面倒な客だー?!)」
お兄ちゃんが一瞬笑顔をヒクつかせた。
すまんが俺のワガママにちょっとだけ付き合ってくれ。
◇ ◇ ◇ ◇
俺は、ヨツバと土倉花の居る席に着く。
「猫さん、何ですかソレ」
「にゃー(お刺身の山と、ただの水)」
お兄ちゃんがわざわざ俺のために3匹ほど魚を捌いてくれたのだ。
ありがたい。
水は本当にただの水だ。
ヨツバはというと、皿にポテトフライ、フランクフルト、枝豆、スルメを炙ったものを載せ、ビールを飲みながら食べていた。
チョイスがおっさん臭い。
土倉花はドリンクにコーラを選び、グラタンと生ハム入りポテトサラダ、明太子スパゲッティを食べていた。
若者よ、沢山食べて大きくなってくれ。
「美味しそうですねソレ。私も貰いましょう」
カチン! 俺の箸とヨツバの箸が交叉する。
「にゃー(このお刺身は誰にも渡さん)」
「1口くらいいいじゃないですか! ケチ!」
カン! カカッ! カカカカカカカカ!
俺たちは高速で箸をぶつけ合う。
「オラオラオラオラオラオラオラオラオラオラ!」
「にゃー(無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄無駄ァ!)」
「何やってんだか」
土倉花はスパゲッティをクルクル回しながら、俺たちに呆れていた。
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