374.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】ディープ・ブルー・マリー
さて、そろそろ現実世界で2時間くらい経つな。
ゲームをし続けるのは体に良くないし、休憩することにしよう。
「にゃー(俺はログアウトする。
ニールはもう、ダンジョンへ戻っていていいぞ。)」
「キシャァァアアアルルルルーーー!」
ニールは脱兎のごとく、肉球魔王様城へ向かって走り去った。
彼にとっては、いつ死ぬか分からない状態が続いていたので、ストレスが溜まっていたのだろう。
悪い事してしまったな。
ニールが無事に離脱したので、俺もログアウトすることにした。
次にゲームを開始する際には、この場所からスタートすることになる。
地面に『2日半くらいしたら戻ってくるから、町のお偉いさんの都合をつけておいてくれ。
重要な話し合いをするからな』と刻む。
ちなみにゲーム時間5日で現実時間1日だ。
なので、半日後にログインする予定、ということだ。
地面の文字を見つつ、冒険者たちは俺を睨んでいたが、何も言ってこない。
何を考えているのやら。
相手が何を考えているのか、普段はプライバシーに配慮して見ないようにしているが、その気になれば読心術くらい出来る。
ただ、ゲームの中の住人の場合は流石に無理だ。
サーバーのゲームデータを覗けば可能だが、普通に規約違反、ってか犯罪だし。
ま、後で話し合いの時に聞けばいいか。
◇ ◇ ◇ ◇
ゲームの世界から戻った。
ヨツバは、まだヘッドセットを被っている。
俺は首輪型PCを起動し、読み上げソフトを起動し、文章を打つ。
『そろそろゲームは終わるように』と。
「そろそろゲームは終わるように」
爽やかな男子の声がPCから出る。
ゲーム外部の音は、プレイヤーに伝わるようになっている。
でないと、宅配とか来ても対応できないからな。
しばらく待っていると、ヨツバもログアウトした。
「猫さん、どうしました?
ってかボイス○イド入ってるんですね、それ」
「にゃー(ボイスロ○ド?)」
「貸してください。どれどれ、『ヨツバ、君はとても武人だよ』って、間違えた」
「ヨツバ、君はとても武人だよ」
武人?
美人って打つつもりだったのかな。
タイプミスか。
「で、わざわざ呼び出して、私に何か用ですか?」
『明日、海に行こう』と打つ。
「海?」
『お前、このまま放って置くと一日中ゲームしそうだから、外に連れ出そうと思ってな』と打つ。
「そんな訳ないじゃないですか。……チッ」
今舌打ちしたの聞こえたぞ。
「で、どこの砂浜に行くんですか?」
『いや、せっかくだから海底都市に行くとしよう』と打つ。
「海底都市?」
『そうだ』と打つ。
「了解でーす」
それからヨツバは、またヘッドセットを被り、ゲームを再開した。
俺は眠気に身を任せ、寝ることにした。
おやすみなさい。
◇ ◇ ◇ ◇
翌日。朝ごはんを済ませ、俺達は出かけた。
ここは太平洋にある海底都市、ディープ・ブルー・マリー。
水深6000mの場所に作られた都市だ。
「おぉー! 深海魚! デカいヒラヒラの何か!
カブトガニみたいな虫!
凄い! 水族館みたいですね!」
建材は主にガラスと金属。
ガラスといっても窓ガラスというより、モナリザの絵を守っている分厚いガラスをもっと強化したぐらいの強度がある。
3区画ほどあって、金持ちが住む区画が1つ、工業用区画が1つ、もう1つは観光用と研究用の区画だ。
宇宙が無重力に近い空間だとすれば、こちらは逆に水圧が厳しい場所だ。
その水圧を利用した工業機械、そんな環境で生きている深海生物を研究する学者達。
そして、俺達みたいに、水族館を眺めるように都市から深海を眺める観光者。
あるいは、深海をこよなく愛する酔狂な金持ち。
この都市には、そんな連中達が集まっている。
「らっしゃい! 獲れたての魚はどうだい!
美味しいよー!」
「にゃー(うーん、いい香り)」
「おっ! この都市で猫を見かけるとはね!
嬢ちゃん! その猫さんに1匹、どうだい!」
俺は電子マネーで、魚を1匹買った。
「まいど!」
彼はヨツバが支払ったように見えたのかもしれないが、まあいいか。
俺は魚を受け取り、咥える。
そして、再び歩き始める。
「猫さん、歩きながら食べるのは下品ですよ」
食べていない。
口に咥えているだけだ。
ヨツバは途中で、押し寿司弁当を購入した。
近くにベンチがあったので、そこに座る。
お昼ご飯の時間だ。
「骨に気をつけてくださいよ?」
コイツの骨はフニャフニャなので、そのままいける。
むっしゃむしゃ。ボリボリ。
ウマウマ。
◇ ◇ ◇ ◇
帰って、ヨツバはゲームを始めた。
俺もログインし、ゲームの中へ飛び込む。
毎日ログインボーナスは自分のダンジョンで貰えるから、話し合いが終わったら帰るか。
俺は昨晩の場所へ降り立つ。
現在のゲーム内の時間は昼間だな。
チュドーン!
何故か、俺の開始場所に地雷が仕掛けてあり、爆発した。
「やったか?!」
その周りには、毒を塗ったまきびしが散りばめられている。
その外周から、弓を構えた人が多数。
連中、俺がここに現れるのを知っていたから、罠を仕掛けて待ち伏せしていたのか。
「なっ?! 無傷だと?!」
せっかく人が、良い話を持ちかけてやろうというのに、この仕打ちは無いだろ。
というわけで、もう一度這いつくばらせることにした。
両前足をドスン。
今度は震度7にしておくか。
「「「「ぎゃぁぁあああああ?!」」」」
「にゃー(頭(ず)が高いぞ)」
俺は2本足で立ち、彼らの近くへ行き、見下ろす。
途中のまきびしは、地割れの中に飲まれていった。
揺れが収まり、俺は地面に文字を刻む。
『このゲーム、来週にβテストが終了するんだが、その際にお前達NPCは、この世界ごと消滅する。
俺ならお前達を消滅させずにどうにかしてやれるが、相応の対価は求めるぞ。
さぁ、どうする?』
彼らは話に乗ってくれるだろうか。
乗らないのなら他の場所に行くだけだが。
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