375.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】Re-Birth Project of someone's Intelligence


俺の刻んだ文字を見た者の反応はまちまちだった。



「ふざけるな! 世界が消滅するだと? 世迷い言を!」



そもそもダンジョンマスターの言う事を全部否定する奴と、



「この世界が終わるという話は、他のダンジョンマスターからも聞いたことがある。

だが、貴様にそれをどうにか出来る力があるようには思えない。

おおかた、俺たちを脅し騙して、財産を奪おうとしているんだろう?」



俺の実力を疑う奴と、



黒鉄くろがね、あなたはどう思います?」


「彼を信じるにしろ、疑うにしろ、判断材料が足りない。

もう少し詳しく話を聞いてみるのが良い」



俺の話に興味がある奴と、



「ひっ、ひぃぃ……」



ひたすら、恐怖でガタガタ震えている奴。


なるほどな。



『興味がある奴だけ、ここに残れ。

あとは町に帰っていいぞ』と地面に刻む。



しばらく待つと、2人の人間だけが残った。



「私は商人のパズズと申します。それでこちらが」


「黒鉄だ。パズズさんの専属護衛をしている」


『トミタ・ミナモトだ。肉球魔王様と呼ばれている』と刻む。


「ふむ……やはり日本人ジャパニーズですか」



俺の予想が正しいのなら、このパズズという男はおそらく、



「信じてもらえるか分かりませんが、私は元々、ゲームの住人ではなく本物の人間なのです」


「パズズさん?! この者にその秘密を話すのか?!」



やはりそうか。



「私は、このゲームの世界で既に5回死んでいます。

ここに居る黒鉄に出会ってからは、死ぬことは無くなりましたけどね。

どうやら、この世界は日本人のゲームのために作られた世界、なのですね?」


『そうだな』と刻む。



それから、リバース・インテリジェンス計画のことを簡単に話してやった。



「Re-Birth Project of someone's Intelligenceといったところですか。

私も脳の冷凍保存を生前に依頼していましたから、時代が進みこうしてゲーム上で記憶が再現されたというわけですね。

いやはや、実に興味深い!」


「だがパズズさん。

ダンジョンマスター達は誰もそんな計画について語らなかったぞ?」


「それはそうでしょう。きっと国が極秘で進めている計画ですよ。

公で実験しようとすれば、倫理規定に引っかかりますからね。

一般人が知るはずがありません」



パズズという男は、頭の回転が早くて話がしやすいな。


過去に存在した天才を蘇らせる目的で作られた、リバース・インテリジェンス計画。


人間の技術の限界で、パズズの生前のスペックを完全に再現出来ていないが、今の俺ならそれが出来る。


そして、彼をゲーム世界でなく現実世界の人間として、作り変えることが出来る。


ただし、現実世界の彼の魂は既にハーディス様に転生させられた後なので、あくまで彼を復活させるのでなく再現するだけになるのだが。


という話をすると、彼は目を輝かせた。



「はっはっは! 肉球魔王様さんは、神様の真似事まねごとが出来ると仰るわけですか!

面白い! 実に面白い方です!

良いでしょう、あなたの話に乗りましょう!」


「パズズさん、この者を信用するのか?」


「どうせこの世界は10日ほどで消滅するのです。

だったら、冒険してみるのも一興というものですよ!」



神様の真似事ってか、一応神様なんだけどな。



「さて、質問が2つあります。

その1、私だけでなく、この黒鉄も現実世界へ作り変える事が出来るのでしょうか?

その2、あなたはその対価に、何を求めますか?」


『その1については、可能だ。

で、その2についてだが』と刻む。



ゲーム世界の金や財産、物を貰ったところで、どうせ消えてしまうのだ。

そんな物を貰っても仕方ない。

それは向こうさんも承知しているだろう。


だから、俺が欲しいのは“情報”だ。



『俺の話に乗ってくれる奴を、なるべく沢山集めてくれ。

この世界で消えて無くなるのは嫌だという奴を』



勝手にこの世界に生まれさせられ、勝手に消される。

そんな理不尽は俺が許さない。

だから彼らを現実世界へ再現する。


ただ、彼らが再現を望まないのなら、それもまた彼らの人生だ。

俺は彼らの意思を尊重するつもりだ。


全ての人から話を聞くのは、いくら俺でもチートをしなければ無理なので、それはサービス終了直前でいいだろう。

なるべくなら、そういうズルはしない方針で行動したい。



「分かりました。どこへ集めましょう?」


『それは後日指示するから、とりあえず希望者の数の把握を頼む』と刻む。



その後、数言ほどやり取りをしてから、パズズ達は引き上げた。


俺も一旦ダンジョンへ帰るとしよう。

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