367.【後日談2】【クロスオーバー(メニダン)】拝啓。リバース・インテリジェンス計画を遂行中の皆様方へ。



俺はエメラルド版を取り出し、『何だそれは』と文字を刻む。


「何って、食材とゲームですが」


『お前、洋服が欲しいって、前に言ってなかったっけ?』と刻む。


「な、何の事でしょう?」



ヨツバは目をそらし、吹けない口笛をヒューヒュー吹く。

ゲームなんてどこででも買える物より、現地の特産品を買えばいいのに。


ま、ヨツバの事をあまりとやかく言えるほど、俺も大した事してないけどな。



『にしても、わざわざ食材を買わなくても、どこかで外食すれば良かったのに』と刻む。


「外食は高いじゃないですか」


「……」



ヨツバのやつ、俺の渡した金をほとんどゲームにつぎ込んだな?



「さて、私はすき焼きを作りますが、猫さんはどうします?」


『俺も食うぞ。野菜無し、肉はタレ無しで頼む』と刻む。


「それ、ただの焼いた肉じゃないですかー」



だって野菜は(ネコ科の)体に悪いし。

塩分も腎臓に悪いし。


ヨツバはカセットコンロを2つ取り出し、手際よく材料を刻み、鍋に投入。

その横でフライパンで肉を焼いてくれた。


ヨツバの焼いた肉は、特に霜降ったりしない普通の肉だった。

食材のレベルとしては、魔獣都市マタタビの方がマシだな、これは。


明日からは、キャットフードを食べることにしよう。

確か、キャットフード・ソムリエの店があったはずだ。



「くぅ~! すき焼きには日本酒が合うッ!

日本に生まれて良かったです!」


『いやビールだろ』と刻む。


「猫さんは、お酒、飲めないじゃないですか」



飲めなくはないんだろうけどな、耐性的に考えて。

ただ、俺の姿を見たネコ科魔獣が真似したりすると、困ることになるから駄目だな。


食べた後、ヨツバは買ったゲームのVRヘッドセットを被り、ゲームを始めた。


俺は、とある場所へと首輪PCでメールを送ることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



・????視点



『拝啓。リバース・インテリジェンス計画を遂行中の皆様方へ。

キャットフードも湿って味わいが落ちる季節となりました。

皆様方に置かれましては、益々ご活躍の事と喜び申し上げます。

さて、私肉球魔王は、私の首輪型PCの元へやって来た、貴組織の監視するNo.565625を、彼の意思を尊重し処分致しました。

ですので、今後No.565625を探す事は、国庫をいたずらに圧迫するのみならず、皆様方の貴重な時間を無駄にしてしまうでしょう。

No.565625の事は諦め、どうか引き続き計画を続行なさってください。

なお、以下の者は贈賄、横流し、詐欺を働いているので、計画成功のために早めに除名するのが良いでしょう。

……』



……何だ、これは。


肉球魔王と名乗る者から送られた、1通のメール。


それは、No.565625が既に居ないこと。

No.565625を探すのは無駄だから止めろ、とのこと。


そして……計画の邪魔をしている者のリストが載っていた。


恐ろしいのは、メールに記載されているうち、私が把握している者に関しては全て正しい事が書かれているということだ。


で、私が把握していない者についても、正しい事が書かれているとしたら?


私は国に対して、強力なカードを手に入れたことになる。


これをネタに彼らを脅せば……研究費が湯水のように使えるぞ!


よし、さっそく行動に移るとしよう。



◇ ◇ ◇ ◇



・トミタ視点



翌日。

ヨツバは朝食を食べながら、備え付けのテレビを見ていた。



『次のニュースです。□□大学AI開発部名誉教授のXX氏が、何者かによって殺害された模様です。

場所は……』



昨日メール送った人が殺されたか。


国を脅して、返り討ちにあったんだろう。

ま、自業自得だがな。



「チャンネル変えていいですか?」


「にゃー(やだ)」



俺は前足をクロスさせバツを作った。


ピッ。


だが無情にも、よく分からない芸能人のニュースに変えられてしまった。


ま、いっか。

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