357.【後日談2】ゾンビキャットの場合
・4属性ゴーレムと魔獣幹部ゾンビキャット
ゾンビキャットは、コーディのベッドでお昼寝していた。
先程までコーディもここで寝ていたのだが、リオン君によって叩き起こされ、今はレジで働いている。
そんなゾンビキャットの近くで、何をするでもなく指示を待っていた4属性のゴーレム達。
全員で部屋に入るとさすがに狭いので、廊下や外の庭や空中などで待機している。
朝からこの調子で、もう昼過ぎだ。
風のゴーレムが、コーディの部屋に入りゾンビキャットを起こした。
『何か指示を与えてください』と砂で文字を作る。
「アァー……コ……レ……」
風のゴーレムが、ゾンビキャットからメモを受け取った。
ゾンビキャットは二度寝を決め込んだ。
『4属性ゴーレム殿へ。
私は口下手なので、こうして手紙で要件を伝えますが、ご容赦ください。
まず、この手紙は肉球魔王様から、「4属性ゴーレム達が自主的に仕事を求めるまで渡すな」と言われたものです。
なので、結果的に渡すのが遅れたとしても、私の意地悪ではないことをご理解ください。
さて、私からあなた達へ頼む仕事はありません。
というのも、肉球魔王様から与えられたあなた達への課題が、自主性を促すというものだからです。
なので、魔獣都市または大魔導師の森、あるいは近辺で困っている人が居たら、助けてあげてください。
それを課題としますので、ご健闘を祈ります。
魔獣幹部ゾンビキャットより。
P.S.明日の、金の亡者からの課題はありません。しかし重要な話があるそうです。
それと試験ですが、金の亡者の話が終わり次第開始されるそうなので、心の準備を整えておいてください。』
雑貨屋クローバーの近くの空き地に4属性ゴーレムは集まり、そのメモを読む。
要するに、自分で仕事を見つけてね、ということらしい。
明日の予定まで書いてあるのは、ゾンビキャットなりの気遣いだろうか。
◇ ◇ ◇ ◇
炎のゴーレムは大魔導師の森の開けた場所へとやってきた。
そこではオリバー君が、魔獣都市で購入した兵隊ゴーレム相手に訓練をしていた。
しかし、兵隊ゴーレム程度では、オリバー君が本気を出すと壊れてしまう。
なのでオリバー君は自身を弱体化する魔道具装備を満載で戦っていたのだが。
ガシャリ。
とうとう兵隊ゴーレムが倒れてしまった。
「ふんッ。雑魚め」
オリバー君は剣を収め、炎のゴーレムの方へ向く。
「で、俺に何か用かッ?」
『訓練相手になりましょう』と炎の文字が浮かぶ。
「ほぅ、ならば殺すつもりでかかってくるのだなッ!」
オリバー君は弱体化の魔道具を全て外し、炎のゴーレムへと襲いかかった。
◇ ◇ ◇ ◇
風のゴーレムは、中央広場にてスキルについて教えていた。
本来ここで教えるつもりだったネコ科魔獣の講師が風邪をひいたので、代わりに教えることにしたのだ。
『つまり、スキルとは魂に刻まれたタトゥーのようなものです。
スキルはその刻まれ方によって、名前や効果が変わります。
ですが、昨今の研究によって、鑑定結果で知ることが出来る一般的な効果の他に、スキルの個性とも呼ぶべき……』
風で浮かび上がった砂の文字を、若い学者やネコ科魔獣達が懸命にメモしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
水のゴーレムは、都市にある橋の1つを修復していた。
ネコ科魔獣は手が不器用なので、こういった修復作業には基本的に他の都市の建築ギルドから人を雇うのだ。
ただ、こういった壊れかけの場所というのは、見る者が見なければ分からない。
その辺はネコ科魔獣は無頓着なので、たいていの場合は壊れた時になってから工事を外注する。
修復し終わった橋を眺め、水のゴーレムは満足げに頷き、次の仕事を探すことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
土のゴーレムは、錬金術工房で魔道具制作を行っていた。
魔道具は、魔獣から獲れる魔石という石を用いて作られる道具であり、魔法スキルを使えない者でも扱うことが出来る。
最近は人工魔石を用いて作られているらしい。
材料は好きなだけ使っても良いということで、色々な物を作ることにした。
肉球魔王様が驚くような魔道具を発明してやるぞ、と。
この日、土のゴーレムが作った四次元空間袋、時間歪曲時計は世紀の発明として歴史に名を残すことになる。
なお、肉球魔王様からすれば、ただの先人の知恵のパクリじゃないか、とのことだったのだが。
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