356.【後日談2】キメラの場合


・4属性ゴーレムと魔獣幹部キメラ


魔獣都市マタタビには、いたるところにネコ科魔獣が居る。


しかし、彼らの大きさは大きくても、せいぜい馬車程度である。


だが、当然ながらネコ科魔獣にはもっと大きな者も居る。


そういった連中は、魔獣都市マタタビの中だけでは窮屈で暮らせない。

当然、人間の奴隷の世話を十分に受けることも出来ない。


そんな連中に対し2日に1回、都市の外にて住まいや食べ物を提供し、暮らしのサポートをしているのが、魔獣幹部キメラである。



「ガォ!(で、俺は仕事に行くけど、4属性ゴーレムさん達はどうする?)」


『付いていきます』と炎の文字が浮かび上がる。


「ガゥゥ(そう? 付いてきても退屈かもだけど、まあいいか。

今日は大型魔獣の子どもの面倒を見ることになっているんだ。

さっそく、行こうか)」



◇ ◇ ◇ ◇



4属性ゴーレム達とキメラが、大型ネコ科魔獣の親子が集まる平原に着いたところ、1体の母親魔獣が近づいてきた。



「グルルル!(キメラさん、私の子どもが1体、見つからないんです!)」


「ガォゥ!(えっ、行方不明?!)」


「グルァ!(はい、昼寝していた隙に居なくなってしまいまして……一昨日の事です……)」


「ガゥ!(一昨日かぁ……さすがにそれは)」



母親の側にいる子ども達を見るに、まだろくにネコ科言語が話せない子どもだろう。

餓死しているか、野生の魔獣に食われた可能性が高い。


キメラが、どう慰めようか悩んでいると、



『風の噂では、魔獣都市マタタビの広場で、迷子のネコ科魔獣が発見されたそうです。

毛並みの特徴的に、奥様の子では?』と風で巻き上げられた砂の文字が浮かぶ。


「ガォ!(マジか! ちょっと行ってくる!)」



キメラは、背中の翼を広げて飛んでいってしまった。


4属性ゴーレム達も付いていこうとしたところで、子どものネコ科魔獣に飛びつかれた。



「みゃー!(わーい!)」


「なー!(珍しい形のゴーレムだー!)」


「にゃん!(登れー!)」



4属性ゴーレムは、色々な毛並みのネコ科魔獣の子どもにくっつかれた。

下手に振りほどけば怪我をさせてしまう。


仕方ないので、キメラが帰ってくるまで、4属性ゴーレムは子ども達の遊び道具になることにした。



◇ ◇ ◇ ◇



キメラが、子どものネコ科魔獣を咥えた警察官のネコ科魔獣を咥えて、戻ってきた。

そこにはジャングルジムと化した4属性ゴーレムの姿があった。



「ガゥウ(ただいま)」


「みゃー! みゃー!(えーん! えーん!)」


「グルル!(坊や!)」



キメラは、咥えた警察官をぞんざいに下ろす。

警察官のネコ科魔獣はひらりと着地し、咥えている子どもをそっと下ろす。

母親ネコ科魔獣は、見つかった息子をペロペロ毛づくろいした。



「んにゃ(奥さん、どうやらこの子は、【テレポート】スキルを持っているようですよ。

魔獣都市マタタビの中央広場まで来たのは、スキルを使ったのでしょう。

また迷子になっても困るので、一人前になるまでスキルの封印をお勧めします)」


「グルルゥ!(まぁ、凄い! けれど確かに、今はまだ必要ないわね。

スキル封印、よろしくお願いします)」


「んにゃーお(畏まりました。それでは……)」



警察官のネコ科魔獣が【スキル封印】を施した。

これで3年間、【テレポート】が使えなくなった。



「んにゃむ(では、私はこれで失礼します)」


「ガァ!(お疲れ様ー!)」



キメラは、魔獣都市へと帰っていく警察官へ手を振った。


さて、とキメラは4属性ゴーレムの方へ振り返る。

彼らは肉球魔王様以外とコミュニケーションを取ることが出来ていないので、その辺を改善して欲しいとのことだったが。



「ガゥゥ(……改善の必要あるか?)」



ネコ科魔獣の子どもと遊んでいる4属性ゴーレムを見て、キメラは呟いた。

警戒心の強い子どもも居ただろうに、日が暮れるまで子ども魔獣全員が、仲良く4属性ゴーレムにくっついていた。


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