358.【後日談2】金の亡者の場合
□前書き□
※鬱&胸糞展開なので読まなくてもOKです。
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翌日、4属性ゴーレム達は、錬金術工房へ来ていた。
金の亡者からの課題は無く、代わりに重要な話があるとのことだった。
「早いですね。約束の時間までまだ30分はあるのに」
「うんみゅう(今はコイツら仕事が無い。
よほど暇だったんだ)」
錬金術師のカルロ君と、カルロ君の肩に乗った魔獣幹部の金の亡者が出迎えた。
「じゃ、行きましょう」
「うみゅ(付いてきて)」
カルロ君と金の亡者は四次元ワープした。
4属性ゴーレムも、それに続いた。
◇ ◇ ◇ ◇
ここは錬金術工房から500m地下にある遺跡の入り口。
そこへ1人+5体は四次元ワープした。
光る石が所々に埋め込まれた、石造りの遺跡。
四次元ワープでは、遺跡の中へは侵入出来ないように、仕掛けが施されている。
「人工魔石は、全てこの遺跡の中で作られているんだ」
「うんみゅっ(入り口から先は、少しでも抵抗すれば遺跡から追い出される。
だから、何があっても受け入れること)」
言うと、カルロ君と金の亡者は、遺跡の入り口の門をくぐり、中へ入った。
4属性ゴーレムも付いていく。
途中、カルロ君と金の亡者の歩きが止まった。
その訳を、4属性ゴーレムはすぐに知ることになる。
遺跡が、肉球魔王様の記憶の一部を追想させてきたのだ。
◇ ◇ ◇ ◇
・フランベル国、錬金術工房
風のゴーレムの眼の前に映像が現れる。
これは過去のフランベル国に起こった、錬金術師大量殺戮事件の日の映像だ。
肉球魔王様から話だけ聞いたことがある。
マック君、いやニコ様と呼ばれていたソレは、下品な笑みを浮かべて、工房に居る最後の錬金術師の胸にナイフを突き立てた。
「ぐふっ?! ニコ様、な、何を……」
「ぐんなーい。さて、これで終わりだな。
資料は全部焼いたし、錬金術師は全滅。
フランベル国はもはや新兵器の開発は出来ない。
あーっ、残念。くふっ」
部屋を見渡すと、ソレによって殺された錬金術師の死体が10体ほど。
全て、フランベル国で錬金術の兵器の研究をしていた者の死体だ。
「あとは、適当に兵士共を殺すかなーっ」
「なっ、ニコ様、これは……?!」
「お? 巡回の兵士さんかー、運が悪いね君ぃ」
兵士は武器を構え、叫ぶ。
「何者だ貴様!」
「酷いなー、この国のスペッシャルな錬金術師である俺のことを忘れるなんてなぁ」
「ニコ様はそんな口調で喋らないっ! 偽物め!」
言うやいなや、兵士はポケットから巡回用ハンドベルを鳴らす。
「おっとぉ? 増援を呼ぶのかぁ?
でもぉ? 雑魚が何人集まろうと俺には勝てないんだろーけどなっ!」
どどどどど。
「ニコ?! いったいどうなっている?!」
「にゃー!(マック君?! くそっ、殺人鬼め!)」
パーシー君と肉球魔王様が駆けつけた時、ソレは、巡回用の兵士の首を両手で締め上げていた。
ジュワッと音がなる。
兵士の首は焼け、落ちた。
肉球魔王様は、ソレがマック君を殺したスライムが、マック君の皮をかぶって好き勝手している存在だとすぐに気づいた。
すぐに森のアウレネ達に協力を要請するために四次元ワープで一時撤退した。
「ん、今の猫は魔獣か。けっけっけ。
俺から逃げるとは、格の違いが分かっているお利口さんだねぇ」
「ニコじゃないな、お前! ニコをどうした!」
「どうしたってぇ?」
ソレは、くるくると頭を回転させる。
「殺したのさぁ! この国に戦争を仕掛けるのに邪魔なんでなぁ!」
パーシー君は、ソレの首を剣ではねる。
「無駄無駄無駄ァ!」
首から上を失ったソレは、パーシー君に襲いかかる。
しかし戦闘技術が無いのか、ソレの攻撃をパーシー君はかわす。
そしてパーシー君はソレの四肢を剣ではねる。
「おおぅ、さすがにここまでスプラッタされちゃ、再生が追いつかないなぁ。
仕方ねぇ、逃げるか」
ソレの正体は、水袋のような魔獣、スライムだった。
自身を、錬金術の材料に忍び込ませ、錬金術工房のマック君の試験管内に潜り、隙を見てマック君を乗っ取ったのだ。
普通のスライムは人の目につかない場所でひっそり暮らしているのだが、ソレは転生者だった。
しかも魔獣に転生したのを言い訳に、人殺しを何とも思わないクズだった。
マック君の死体からニュルニュルと出てきたソレは、窓の方へ逃げてゆく。
「にゃー(逃がすと思っているのか)」
「デブ猫の友の仇めッ! 覚悟しろッ!」
「炎の矢をプレゼントです~」
肉球魔王様とオリバー君とアウレネが、ソレを追いかけ、始末した。
「……」
パーシー君は、守れなかった妻と仲間の兵、錬金術師達を見て思う。
自分はこの件で責任を問われ、おそらく死刑、もしくは終身刑か良くて奴隷落ちとなるだろう。
息子のアレクサンドラも、奴隷落ちや四肢切断などの酷い冷遇を受けるに違いない。
下手に生き残るくらいなら、死んだ方がマシ。
そんな未来を、一体何を心の支えとして生きれば良いというのか。
ふと、手元の剣を眺める。
パーシー君は、良くない事を思いついた。
肉球魔王様がマック君の亡骸の場所へ戻る。
傍にあったパーシー君の死体を見て驚き、肉球魔王様は泣き叫ぶ。
アウレネとオリバー君がなだめるが、遅れて駆けつけた兵士が、この惨状を彼女たちの仕業だと判断した。
肉球魔王様は、アウレネとオリバー君を連れて逃げた。
その後、フランベル国の王の元へ肉球魔王様が赴き、誤解は解けた。
しかし、フランベル国の錬金術技術や兵器開発は諸外国から大いに遅れる形となり、フランベル国は衰退してしまった。
◇ ◇ ◇ ◇
・錬金術工房、地下遺跡
風のゴーレムは気がつくと、広い地下空洞の高台に立っていた。
眼下には、巨大な炎に沢山の大きな鍋、それにハシゴの上から材料を投入するゴーレム。
鍋をかき混ぜるゴーレム、鍋から石を取り出すゴーレム、それを運ぶゴーレムが見える。
ここは人工魔石製造施設か。
人工魔石はゴーレムと魔道具の材料。
要するに、魔獣都市マタタビの軍事・産業の中枢というわけだ。
先程の幻影は、この地下空洞へ体をワープさせる際の目隠しの役目を持っていたのだろう。
どうやら通る度に幻影を見せられるらしい。
この施設の場所がバレると、間違いなく悪用しようとする者が現れる。
あるいは魔獣都市マタタビを攻める場合は、最優先で標的にされるだろう。
隣には3属性ゴーレムが並んでいる。
金の亡者とカルロ君がとことこ前から歩いてきた。
「うみゅう(さすが肉球魔王様の自慢のゴーレム。
ボク以外の他の魔獣幹部達は皆、肉球魔王様が惨めな結果を味わった事を受け入れられず、遺跡から拒絶された)」
金の亡者は、付いてきて、と高台から降りる。
「うんみゅーん(ここは魔獣都市の心臓。いわば弱点。
この遺跡で作られた人工魔石は、ボクやゴーレムが地上へと運んでいる)」
歩きながら、金の亡者は続ける。
「うみゅ(火車達が何を言ったかは知らない。
けれど、彼らは肉球魔王様の弱さや脆さから目をそらした。
肉球魔王様がネル達を連れてくる前、どれだけ濁った目をしていたか知ってる?)」
4属性ゴーレムは首を振る。
「みゅううみゅ!(ボクらでは、肉球魔王様のふさぎ込んだ心を開くことは出来なかった!
偉そうなことを行っても、肉有魔王様からすれば魔獣幹部もゴーレムも、ドングリのせいくらべ!
もっと頼って欲しかった……!)」
「ん? どうしました?」
金の亡者はカルロ君に抱きついた。
カルロ君は優しくなでてあげた。
「金の亡者はここに来ると、さっきの追想のせいか、いつも抱きついてくるんですよ」
『肉球魔王様の力になれないのが、悔しいのでしょう。我々も同じです』と炎の文字が浮かぶ。
4属性ゴーレム達は思った。
敵の弱さだけでなく、肉球魔王様の弱さも理解しなければ、真の意味で仕える事は出来ないのだ、と。
なお、先程の幻影は肉球魔王様からすれば、事実をありのまま受け入れ次に活かす、という研究者マインドを忘れないようにするための仕掛けだったのだが、誰もそれに気づきはしない。
落ち着いた金の亡者は、4属性ゴーレムに向かい、これから始まる試験内容を伝えた。
それは、あと5分で魔獣都市マタタビの中央広場へ攻めに来る予定の5人の勇者集団を無力化せよ、生死は問わない、とのことだった。
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