350.【後日談2】猫さん、首都へ行く その4


中央都市チザンは、東京15個分くらいの面積の巨大都市であり、大きく4つの区に分かれている。


まず商業区。

これは都市の一番外周円上に位置する。

一番賑わっている、中央都市の顔。


外からやって来た商人や旅行客の滞在が許されるのは、この商業区だけだ。

それよりも内側は、基本的に都市の人間以外、許可なく入ることは許されない。


あとは外側から順に農業区、貴族区、そして王城のある王族区。

各区画ごとに30mほどの巨大な壁がある。


農業区では、上質な肉や皮、ミルクや木が手に入る。

ここで採れる物の9割はチザンの王族貴族用か農業区民が自分で食べるかであり、残り1割が商業区へと回される。

俺がさっき食った肉も、農業区の上質な牛顔鳥の肉だ。


貴族区には、チザンの貴族の半数が住んでいて、学問や研究などが盛んに行われている。

貴族達は働かなくても物資が支給されるのだが、彼らの多くはワーカホリックである。

たまに聖地巡礼とか言って、大魔導師の森の近くまで来て拝んでたりする、変わった連中だ。


王族区は、その名の通り国王のゴルンと、その血縁者達が暮らしている区画だ。

この国の行政はここで行われている。

王族の雇っている者も住んでいて、この区画で住むことがこの国における大出世とのこと。


で、俺が今から向かうのは王族区の王城だ。


一瞬で国王の前に四次元ワープしてもいいのだが、どうやらそれは彼らの心臓に悪いらしい。

なのでとりあえず、王城の門の前にワープした。



「にゃー(こんにちは)」


「「「「「「……」」」」」」



門の6体の魔獣門番は一言も喋らずに扉を開け、俺が通れるよう道を開けた。

無駄に喋らないのは何ともプロっぽい。

いやプロか。



「ようこそ、肉球魔王様。

奥で国王がお待ちです」



扉の向こうから首輪を付けた、紳士服の男が現れた。

人間の奴隷、か。


人間は手先が器用だから、雑用係にでも使っているのだろう。


俺は人間君の後をついて行った。



◇ ◇ ◇ ◇



「では私はこれで」


「にゃー(ご苦労様。これはチップだ)」



人間君に、ガラス細工の国王ゴルンの小さな人形を握らせた。

彼は非常に当惑している。

そうえいば、この国、というかこの世界にはチップの文化は無いんだったか。


まあいいか。


俺は王の間へ向かう。

門番が黙って扉を開ける。


国王ゴルンの臣下8体が並んでいる。

その奥に国王ゴルンが居る。



「肉球魔王、に一体何の用だぁぁあああ!」


「にゃー(定例報告と、国営料を貰いに来た)」



ゴルンの問いに対し、俺はそう答えた。


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