349.【後日談2】猫さん、首都へ行く その3
中央都市チザン。
ここは全ての魔獣国の中でも、最大規模と言っていいくらいの巨大都市だ。
人口、というか人間と魔獣は合計4000万くらい居る。
人間は奴隷として肉体労働させられたり、見世物にされたり、食われたりする。
扱いは酷いもんだが、歴史上人間が魔獣達にしてきたことを思えば、こうなるのも仕方ない。
昔の俺だったら、正義感に駆られて人間達を開放しただろうか。
そんなことをしても、今度は人間が魔獣へ同じことをするとも知らずに。
ま、この都市の人間がどうなろうと、俺には関係のないことだ。
商店街の方向へ歩く。
この国は基本的には物々交換だ。
俺が提供するのは魔獣都市マタタビで作った薬と、労働力となるゴーレム、あとは雑貨屋クローバーで扱う商品などだ。
肉はマタタビ周囲で獲れるのよりも、チザンで養殖している方が美味いので、あまり交換してもらえない。
火車とゾンビキャットに頼まれた買い物を済ませ、俺は軽食を摂るために『箱庭の猫』に向かう。
ネコ科魔獣用の外食専門店だ。
火車達がよく通う、オススメの店らしい。
木箱の外観の店の中は、薄ら明かりが灯っていて、大量の木箱とクッションが無造作に置かれている。
ネコ科魔獣同士で毛づくろいしていたりもする。
「ガウゥッ!(奥の席は常連のための席だ。
一見(いちげん)さんは手前の席に座りな)」
奥に行こうとしたら、黒豹の店員の魔獣に注意された。
仕方ないので入り口近くのクッションに着き、注文をする。
「にゃー(日替わり定食Bを1つ)」
「クルナン(畏まりました)」
厨房から声が聞こえる。
ネコ科魔獣は耳が良いから、お客さんの注文は店内のどこからでも聞こえる。
ちなみにメニューが読めない奴は、これが欲しい、と指し示せばOKらしい。
それにしても、俺は警戒されているようだ。
店内に居たお客さんのうち、俺の場所に近い連中は隠れてしまった。
全員、この都市で生まれたネコ科魔獣なのだろう。
魔獣都市マタタビ生まれの奴なら、絶対俺に絡んでくるからな。
席の1つ1つに、猫じゃらしが置かれている。
外で歩いている人間を呼びつけ、遊んでもらうことが可能だ。
しないけどな。
「クルナー(おまたせしました。日替わり定食Bでございます)」
「にゃー(ありがとう)」
ネコ科魔獣の中には、2本足で立てて、手先が器用な奴も居る。
厨房のネコ科魔獣の彼が、作った料理を運んで来た。
猫草の生えた小さな鉢に、表面を軽く焼いたヒレ肉のステーキ。
ステーキのソースは、色んな血をブレンドした液体だ。
当然、塩などの体に悪い調味料は入っていない。
俺は四次元空間からナイフとフォークを取り出し、ステーキを切って食べる。
ウマウマ。
「みゃん(おいおい、あのネコ科魔獣、ナイフとフォーク使ってるぜ)」
「なーぅ(人間が化けてるんじゃね?)」
「みゃお(変わってるなぁ)」
そこの物陰から覗いている君たち。
人間に聞こえないくらいの小声で喋っていようと、聞こえてるぞ。
まあいい。
お次は猫草をかじる。
んー、悪くない。
「みゃぅ(草はそのまま食べるんだ)」
「なーぁ(何で肉はナイフとフォークを使ったんだろう?)」
「にゃー(それは、食べる時に口周りが汚れないようにするためだ)」
「「「みゃなみー(聞かれてたー?!)」」」
覗いていたネコ科魔獣達はびっくりしたのか、箱の中に隠れてしまった。
俺は食事が済んだので、会計を済ませることにした。
雑貨屋の商品である、アダマンタイトの爪とぎをお金代わりに出すと、店員は喜んでくれた。
そして店の外へ出る。
あと1時間くらい時間を潰そうか。
俺は近くのお店の屋根に登る。
う~ん、いい天気。
時間まで、昼寝することにした。
首輪のPCで目覚ましをかけておいたので、時間になったら鳴るはずだ。
おやすみなさい。
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