351.【後日談2】猫さん、首都へ行く その5
・国王ゴルン視点
「にゃー(定例報告と、国営料を貰いに来た)」
あぁ。予知夢通りか。
余の前に、肉球魔王が現れる。
そして魔獣都市マタタビの活動内容などの定例報告が始まる。
その後は国営料を払う事になっている。
国を運営出来ているのは肉球魔王の抑止力のおかげなので、その対価を払う、という契約を結んでいるのだ。
肉球魔王は宝物庫へ向かい、人間から徴収した硬貨を回収するのだろう。
そして、その代わりにと、回収した金額の100倍以上する金銀財宝などを寄越すのだろう。
しばらくして、それらは余の部下達により盗まれ、彼らは処刑されるのだろう。
【予知夢】スキルで見た夢の通りに。
それを回避するためには【予知回避】を使わなければならない。
しかし、それには代償が必要だ。
代償は、余が支払う以外にも、余に命を捧げる覚悟で忠誠を誓っている者達から支払わせる事も出来る。
だが彼らに代償を支払わせるのは忍びない。
せっかく鍛えたレベルを、スキルを、貯めた物を、肉体の一部を失わせることになる。
不届きな新入りの部下のために、そこまでする必要はあるのだろうか?
いっそ代償を支払わずに見殺しにすべきなのか?
いや、しかし……
「にゃー(ところで、国営料を貰う前に、一つ尋ねたいんだが)」
「何だぁぁあ」
……んん?
このような問答、予知夢の中に有っただろうか?
「にゃー(『不幸になりたくないんだろう、えぇ? だったら俺に、金を払うか腕を切り落とせ』
そんな事を商業区の誰かが言ったとしたらどうなる?)」
肉球魔王は、部屋で飛んでいる小さな虫の方をキョロキョロ見つつ、そんな事を言った。
脅迫とゆすりか。
「良くて懲役10年。
何度も行っているようであれば死罪といったところだぁぁあああ」
肉球魔王は、自分が脅迫じみたことをしていると思っているのだろうか。
それとも、商業区にそのような輩が居たと報告しているのだろうか。
「にゃー(よし、この国の法律に
裁くのは俺のホムンクルスだ。行って来いホムンクルス。
こっちは任せておけ)」
……何を言っているのだ?
違法をした者が居たとしても、それを裁くのは国家の仕事だ。
「にゃー(【強化限定コピー】。シルフ婆さんのスキルをコピー完了。
そして『俺はあらゆる魔法を破壊する。ブレイク・ザ・スペル!』)」
肉球魔王が両前足を挙げると、眩しい光が発生した。
ビキ、ビキ、ビキ、ビキ!
ガシャン! ガラララララーーッ!
何かが、崩れたような音、いや感覚を覚えた。
それは【予知夢】状態が破られた感覚だったのだと、後で知る。
「にゃー(ホムンクルスから連絡が来た。
お前に予知夢を見させて、集団を【予知夢】スキルによって操っていた張本人。
不幸を防ぐ手段だぞと言い、【予知回避】使用者達から搾取していた
そう言った肉球魔王は、ジャンプして部屋で飛んでいた虫を捕まえて食べた。
肉球魔王の言っている意味が、この時は理解出来なかった。
肉球魔王は宝物庫の方向へ向かって【四次元空間】を使用し、中の硬貨を全て回収し、その代わりにと、余の姿の巨大ガラス像をくれた。
……あれから数日後。
余の所持するスキル【予知夢】と【予知回避】は消えた。
スキルを司る神が死ねば、スキルが消滅する事も有る、と妻が言う。
余へ【予知夢】と【予知回避】を与えた神は、死んだらしい。
余はあれから、予知夢を見なくなった。
今のところ、王政に問題は無い。
例え未来が見えなくとも、余には信頼する部下達が居る。
何も不安は無い。
ガラス像は商業区に設置した。
そこを、いずれは観光名所の1つにしてみせよう。
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