347.【後日談2】猫さん、首都へ行く その1
ここは夜の中央広場。
魔獣幹部の会合の時間だ。
「なーん(で、肉球魔王様の連れてきた者達へのサポートの件ですが……)」
「うみゅう(一通り、やれそうな事はやった)」
「にゃー(だな)」
以前カルロ君に、ネルの錬金術指導をしてもらおうとしていた件だが。
100年分過ごす間に、マック君がネルに教えて、ついでに俺が教えて……
結果、カルロ君よりむしろネルの方が錬金術の能力が上回ってしまった。
なので指導はいらないよ、とのことだった。
ナンシーさんの宿屋には、シャムの両親のために新しい窯を導入した。
俺がお金を出そうとしたら、ヨツバに止められた。
それはシャムと両親が出すべきだ、と。
じゃあ代わりにホムンクルスを助っ人に雇わせようとしたら、ヨツバとリオン君に全力で止められた。
何でだ。ホムンクルスは超便利なのに。
俺の四次元空間内にも、戦闘用ホムンクルスを100体ほど購入して忍ばせているが、4属性ゴーレムの出番が無くなるくらい便利だぞ。
4属性ゴーレム達には、破壊予定の世界の偵察に向かわせているが……早く帰ってこないかなぁ。
で、マック君用の錬金術施設だが、カルロ君の錬金術工房を拡張し、大部屋を1部屋与えることにした。
2ヶ月くらいしたら出来上がるはずだ。
パーシー君の修行だが、100年分過ごしていた時に、眠っている彼に意識フルダイブ型戦闘シミュレーター大部屋のヘッドギアを被せて、特訓させた。
リオン君にはホムンクルスを与えたのだが、どうも気に入って貰えなかった。
ならば仕事の負担を減らしてやろうと、カルロ君の所で鍛冶職人として雇ってもらった。
おかげでリオン君の仕事量を減らすことが出来た。
働きすぎていたからな、彼は。
何故かその後ヨツバに、余計なことをしないでください、と怒られたが。
ブラディパンサーは、ふいごをフミフミしたいと言っていたので、魔道具のふいごを改造して、エンチャント付与効果のあるふいごを与えた。
これをフミフミすることで、フミフミに応じたエンチャント効果を付与出来るようになる。
「で、ヨツバって子が言ってた、適当な近未来世界へ買い物に行きたいってのは無理かねぇ」
「にゃー(出来ないことはない)」
ただ日帰りだと厳しいし、現地のお金を調達する手間を考えると……2週間くらい欲しいな。
「あぁ、そういえば明日はキメラが、首都チザンへの定例報告に行くんだったねぇ」
「ガゥ!(何か要件はある?)」
「アァー……ヤ……ク……ソ……ウ」
「なーん(美味い肉を頼みますぞ)」
「にゃー(そうだ、今回はキメラじゃなくて俺が行くぞ)」
……。
バッ!
魔獣幹部達とネコ科魔獣達が、一斉に俺の方へ向いた。
何だよ。
「なお!(肉球魔王様が向かうのであれば、その付き添い任務、この私めが!)」
「いいや私だよ」
「うみゅう(お金稼ぎのチャーンス)」
「アァー……イッテ……ラッ……シャイ」
「ガォ!(俺が今回の当番だぞ、誰にも譲らん!)」
「にゃー(だから俺一人で十分だってば)」
お金を(主に命君のダンジョンで)使いすぎたから、ちょっとせびりに行くのだ。
そんな姿、他のネコ科魔獣に見せると教育に悪い。
ゾンビキャット以外の魔獣達が付いてきたそうにしていたが、断ることにした。
報告内容、火車とゾンビキャットのお遣いの内容をエメラルド板に書き留め、俺は明日、この国の首都チザンへ向かうことにした。
◇ ◇ ◇ ◇
・中央都市チザンにて
その日の夜、二本の角を持つ悪魔、魔獣の王ゴルンは夢を見た。
夢の中では、肉球魔王が城にやって来て、宝物庫に有る、人間から奪った金を全部持って帰ったのだ。
それを阻止しようと部下たちが肉球魔王へ立ち向かうも、全て無力化された。
代わりにこれをやる、と魔道具やガラス細工、金銀財宝を渡されたが、それらの価値は持ち帰られた金の数百倍以上はあった。
……そして、財宝に目がくらんだ新入りの部下達が盗みを働き、捕まり、広場で処刑された。
そんな夢を、彼は見た。
彼の夢は予知夢であり、必ず実現する。
代償を払い、予知夢を回避しない限り。
さて、誰に代償を払わせたら良いのだろうか。
朝、夢から覚めたゴルンは、頭を抱えることになった。
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