346.【後日談2】鍛冶の負担が減るよ! やったねリオン君!


・ヨツバ視点



「ヨツバお姉さま! か、鍛冶場に怪しい箱が……!」



ドワーフのリオン君が雑貨屋に入ってきて、レジに居る私の所にやって来た。

怪しい箱?


レジをスペンサー君に任せて、鍛冶場へ向かう。



◇ ◇ ◇ ◇



・ヨツバ視点



鍛冶場には、黒い材質の、棺桶みたいな箱が3つ、並べられていた。

ブラディパンサーがしきりにクンクン匂いを嗅いでいる。



「俺がトイレに行っていた間に置かれていたんだ……」


「ふーむ、なるほど」



リオン君が驚いたのも無理は無い。

これは猫さんが注文した物だろう。


だって、箱に張ってある紙は伝票。

それも“日本語”で書かれている。

ホムンドール社から送られたホムンクルスとのことだ。


私は箱の1つを開けてみる。



「うわっ、何だこれ?! 人が入ってる?!」


「これがホムンクルスかぁ」



中に入っていたのは、オレンジ色の髪の、男に見える何か。

ぱっと見た感じ、心臓の心拍も無いので、これは造り物だ。



「リオン君、これは猫さんが送った物です。

心当たりはありますか?」


「そういえば、鍛冶場にホムンクルスを助手に付けるって言ってたな。

これのことか?」



残り2つの箱を開けてみる。

オレンジ色の髪の女性、オレンジ色の毛皮の猫、に見えるホムンクルスが入っていた。

……いや、猫はホムンクルスとは言わないのかな?


彼らは一斉に目を開けた。



「うわっ?!」


「……」



むくり。彼らは箱から起き上がり、リオン君の方を向く。



「「はじめまして。我々はホムンドール社が製造した、鍛冶特化型ホムンクルスでございます」」


「ナナーン(でございます)」


「は、はぁ」



リオン君は当惑している。

いや、私の方を見て、どうしようって顔されても。



「「リオン様の鍛冶の負担を減らすべく、我々は導入されました。

どうかご命令をハァハァ」」


「ナナナーン(ハァハァ)」



ホムンクルス達の息が荒い。

リオン君に私の袖を掴まれ、部屋の端に引き寄せられた。



「(ヨツバお姉さまどうしよう。この人達怖いんだけど!)」


「(うーん、猫さんに頼んで返品してもらっては?)」



ぼそぼそと話す私達。

すると猫さんがどこからともなくやって来た。



「にゃー(仕方ないな。返品は出来ないから、カルロ君にでも押し付けるとしよう)」



猫さんは『要らないのなら、他所に連れて行くぞ』とエメラルド版に刻んだ。

リオン君は迷わず要らないと答えた。


3体のホムンクルスは、錬金術師のカルロ君の所で引き取られ、鍛冶を行うことになった。

3体のホムンクルスの稼ぎは、雑貨屋クローバーに入ることになっている。


早く、安く、そして近未来技術による優れた鍛冶を行うその鍛冶場は、すぐに評判となった。


その評判はあまりに圧倒的過ぎて……


1ヶ月もしないうちに、リオン君への仕事依頼は10分の1以下になってしまった。

雑貨屋としては全然損をしていないからいいのだけれど、リオン君はとても悔しそうにしていた。



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