345.【後日談2】創造主代理


自宅でのんびり箱詰めになっていると、目の前に書類の山が現れた。


創造スキル持ちという理由で、創造主代理である神様の1人の俺に、その仕事内容を送ってきたのだ。


仕事は出来高できだか制。

期限は無いが、なるべく早く頼むとのこと。


で、その仕事内容だが、大きく3つに分類される。


その1。新しい世界の創造。

その2。現在有る世界の維持、調整、回復。

その3。回復不能となった不良世界の除去、破壊。


その1は、物質や生命、その世界の法則を、創造スキルで作るというもの。

キ○スト教に、神様が6日で世界を作ったってのがあるだろう、そんな感じだ。


その2は、言ってみれば世界の監視。

場合によっては『天罰』と称して文明破壊を行ったり、『勇者召喚』と称して他の世界の住人を送ったりする。

人間が調子に乗っている所に、魔王という存在を作って人間を黙らせる、とかもあるな。


その3は、神様でもどうしようもないくらい取り返しがつかなくなった世界を、いわば消す行動だ。

そういう世界を放っておいたら、別の世界まで駄目になる可能性があるからな。

例えるなら腐った食べ物、あるいはがん細胞みたいなものか。


で、俺の目の前にある大量の書類は、ほとんどその2の『勇者召喚』許可願いだった。

神様達がふざけた『勇者召喚』を行おうとしている場合は、創造主が許可しないことになっている。


ま、大抵の場合は許可が下りるんだけどな。

世界をブチ壊す邪神を召喚したい! とかでない限りは。



「にゃー(許可、許可、許可、こいつは駄目。

許可、許可、条件付きで可、許可……)」



ポン、ポン、ポン。

肉球スタンプをテンポ良く押していく。

時々書類に追加条件を書く。

完成した書類は消えて、自動で各神様へと送られる。


『天罰』許可願いは全部突き返した。

理由があまりにも神様側の身勝手だったので。


『世界創造』願いが1つあったので、来週にでも取り掛かるか。

『世界破壊』願いは5つあったが、ゴーレム達に偵察させた後で取り掛かることにする。


30分ほどで書類の山は片付いた。

いい暇つぶしになった。


やることも終わったし、昼寝でもするか。

おやすみなさい。



◇ ◇ ◇ ◇



・ヨツバ視点


魔獣都市マタタビ。

この世界における、最も文明の発展している都市の1つ。


ネコ科魔獣と、名目上は奴隷の人間が、手を取り合って暮らしている。


軍事や農業、雑用などはほとんどゴーレムに任せ、ネコ科魔獣は周辺の魔獣狩り。

人間はネコ科魔獣の世話をしたり、合間に自分の趣味を楽しんでいる。


猫さんの影響か、錬金術と医療については異常なほど発展しているけれど、それ以外は私が居た1000年前とあまり変わらない。

せいぜい魔道具が少し便利になったくらいかな。


で、そんな魔獣都市マタタビには、1000年前有った物のうち、無くなっている物もある。


例えば冒険者ギルド(誰も危険を犯す必要がなく、交番で十分らしい)。

例えば出版ギルド(印刷用の小型魔道具が出来て、ギルドより小さな商会で十分になった)。

例えば奴隷商館、奴隷……奴隷!



「あぁー! イケメン奴隷逆ハーレムぅうー!」


「ヨツバ、奇声を上げてどうしたのー?」



市場で、一緒に買い物をして帰っている途中、ネルちゃんに不思議がられた。


モテないどころか、出会いの無いのを嘆くこの気持ちは、ネルちゃんには一生理解されないんだろうなと思う。


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