344.【後日談2】100年分過ごす


ネル達を蘇生して3ヶ月が過ぎた。


命君に頼んで、ダンジョンで魂損傷治療を、蘇生した全員分行ってもらった。

治療は、ハーデス様を機械で再現したような魔獣が行った。


その方法というのは、魂損傷を治療する者と治療される者の空間の時間の流れを加速させるという荒業だ。

時間の流れを加速させることで、はたから見れば短時間で魂損傷を治療出来るというわけだ。


ただし、加速中の空間に居る者の時間感覚は通常と変わらない。

要するに、100年分の時間を加速させたら、その空間内の者は、例え現実では短時間であったとしても、100年過ごしたのと同じ感覚になるのだ。


そんなに時間を加速させたらブラックホールが出来る、だと?

それは魔力の無い地球周辺での話であって、他の場所ではそんな事は起こらない。


ともかく、魂損傷治療を行ってもらった。

一応ナンシーさん達一般人は治療中眠ってもらった。


ネル達は治療中は勉強したり、一緒に居た俺や仲間と遊んだり、意識フルダイブ型戦闘シミュレーター大部屋で修行したりした。

およそ100年分くらいだ。

現実世界の時間で100秒程度だが。


もちろんその間、MPはほとんど回復しない。

なにせMPの回復量は実際の時間によって決まるので。


なら、機械ハーデス様はどうやって、100年分の【魂修復】スキルを使ったというのか?


……それは単純に力技だった。

つまり、外部からMPを分けるスキルを用いて、機械ハーデス様へ補充するというものだった。


おかげで加速中の環境で機械ハーデス様はMP切れを起こすことなく、全員分の魂損傷を完治させてしまった。


その後、命君にお礼の1兆Gを渡し、俺達は元の世界に帰った。



◇ ◇ ◇ ◇



「ああ、懐かしい……俺達は戻ってきたのかッ!」



オリバー君がしみじみ言っているが、現実世界では行って帰ってくるまで1日も経過していないのだがな。



「よーし、にゃんこさんのお願いも達成したことですし、今日は飲みましょ~!」



魂損傷のことは、今のところ伏せている。

で、俺は100年分、あのダンジョンで一緒に暮らしたいと、ネル達に頼んだのだ。


理由を聞かれたが、寿命関係の事はあまり喋ると他の神様に目をつけられるから、あえて言わなかった。

なので関係のないリリーと、既に魂損傷治療が終わっているフランベルジュ、ゴーレム達、あと魔獣幹部達も連れてきていた。

……コーディがゾンビキャットと離れたがらないせいで、魔獣幹部達にバレてしまったのだ。

魔獣幹部達にはとりあえずやっこさんを倒してもらって、寿命無限化してもらったが。


そして魔獣幹部達は真面目に100年分も修行したせいで、それはもうパワーアップし過ぎている。

こいつらの1体だけでも世界征服出来るんじゃないかな。



「なん!(では肉球魔王様! 晩の会合にてまた会いましょう!)」


「うみゅう(カルロも連れて行けば良かった)」


「ガゥ!(それにしても、本当に1日も経っていないんだな!

いや、肉球魔王様を疑ったわけじゃないが)」


「肉球魔王様に不可能は無いのさぁ」



別に俺が何かしたわけじゃないんだがな。



「アァー……ダ……ッ……コ」


「ぎゅー」



ゾンビキャットを、コーディが優しく抱きしめている。

羨ましいくらい仲良しだな、あいつら。



「猫さん、またねー」


「さようなら」



ヨツバが、眠っているナンシーさんを背負って帰る。

ネルがそれに付いていく。


ネル達の外見は回復魔法を使って変わらないようにしてある。

ナンシーさんが起きたら、年取ったしわくちゃのネルが居たとか、嫌だろうからな。


シャムとその両親は、俺の四次元ワープで宿屋に送ることにした。

よいしょっと。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る