333.【後日談】スパルタにゃんこ続き・バステト様村中央神殿へ


4度目のベヒーモス召喚で、ようやくゴーレム達は逃げる事を覚えた。


そうだ、それでいい。

未知の敵と遭遇した場合、まずは生き残ることが大事だ。


そして相手の特徴を分析し、隙や弱点を見つける。


ゴーレム達は一歩引くこと、深く分析することが出来ていなかった。

相手の力量はもちろん、自分たちの力量すらも把握出来ていなかった。

ゴーレムが死ぬ度に俺が蘇生していたせいか、彼らは自分の命を粗末にし、特攻する性格になっていたのだ。

そんなだから今まで成長がほとんどなかったのだろう。


だが、やっと後退して観察することを覚えた。

これが出来ないようでは、これから先の特訓相手には手も足も出ない。


『主様! 危ない!』と空中に水の文字が現れる。


ベヒーモスが俺目がけて踏みつけをしようとしているのを、水のゴーレムが忠告してくれたようだ。


踏みつけに対し、俺は猫パンチを繰り出す。


ドゴウゥン! という音とともに、ベヒーモスの左足が破裂した。

手加減したので、こんなものか。


言うまでもないことだが、【破壊】スキルだろうと、ある一定以上の耐性を持つ相手には通用しない。

【絶対強者】を持つ俺には、ほとんどのスキルは通用しない。


さらに俺はヨツバの言うラスボスの能力の1つ、『クリスタル宝珠を所持していなければ一切ダメージを与えられず、スキルも通用しない』闇のヴェール能力を【肉球魔王様】称号に付与している。

俺にダメージを与えたい場合は、クリスタル宝珠を身に着けているか、あるいは【肉球魔王様】称号を奪うしか方法は無い。


もちろん実戦でこれらの耐性を試すようなことはしない。

これらはあくまで保険に過ぎない。

今は疑似空間内なので、実験としてあえて耐性のみで対処してみただけ。



「にゃー(生き残れ。目を皿のようにしてチャンスを探せ。

一見無敵に見える奴にも、必ず弱点はある)」



逃げながらゴーレム達は、様々なスキルをベヒーモスに試している。

俺はそれを観察し、ようやく彼らがベヒーモスに苦戦している理由が分かった。


なるほど。

彼らは搦(から)め手が苦手なようだ。

自分らが使うのも、相手に使われるのも。



「にゃー(単に土や風や水や炎をぶつけるだけでは駄目だ。

工夫しろ、工夫を)」



ベヒーモスは、【破壊】をしない物がいくつもある。

奴が触れている地面、光、奴自身など。

それらを利用した攻撃は通る。


また、奴自身は生物なので、空気が無くなれば息が出来なくなるし、腹が減れば食事もするし、暗くなれば身動きが取れない。

空気や飯に毒を混ぜて毒殺、大穴を掘り暗所に閉じ込め餓死させる、などの対処法もある。

時間と手間がかかるからお勧めはしないが。


あと4度ほどゴーレム達が死んだなら、ヒントを出すとしよう。

それまでに自分たちで気づいて欲しいものだがな。



◇ ◇ ◇ ◇



・アウレネ視点



やってきました、バステト様村~!


建物は基本的に木造建築。

火の襲撃を恐れているのか、溶岩の流れる地域で育つ耐火性の高い木を使っていますね~。


至る所ににゃんこさん像があって、ネコ科魔獣が転がってます~。

可愛いです~。


見た感じ、魔獣を含めて人口、およそ2000人といったところです~。

ただ、魔獣都市マタタビと比べると文明レベルが300年くらい劣るでしょうか~。

エルフ族って、新しい物を取り入れるの、あまり好きじゃないですからね~。


で、護送されている私達は、村の同族のエルフ達からあまり好意的な目で見られていないようです~。

石こそ投げられないものの、子どもエルフは武器を持った大人エルフの後ろに隠れていますね~。



「おいッ、村長宅はそっちの方向で合っているのかッ?」


「黙ってついてこい!」


「貴様ッ、人が下手に出ているからと調子に乗っているなッ!」


「ええい! 喧嘩するでないわ、この馬鹿男共!」



オリバーと武装エルフの男の言い合いを、シルフ様がぴしゃりと止めました~。

ああ、この感じ。懐かしいです~。



「村長宅へは向かわない。村長は、村中央の神殿で待たれている!」


「神殿? 俺の時代には無かった建物かッ」


「何の話だ?」



村の中央、にゃんこさん像に囲まれ、周りの建物より一回り大きな建物へ到着しました~。

中に入ると、武装エルフにより守られている、小さなガラス製のシルフ様像がありました~。



「ようこそ、侵入者の諸君。わたしが村長であり、村最強の戦士、バーナードだ」



ガラス製の像を守っている一人の男が前に出て、私達に一礼しました~。

どことなくオリバーに似ています~、末裔でしょうか~。


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