332.【後日談】バステト様村へ到着


・バステト様村、物見櫓にて



ここはバステト様村の物見櫓ものみやぐらの1つ。

監視者のエルフとさび茶のネコ科魔獣が、高所から村周囲を観察している。


村へ近づく者が居る場合、監視者が警告の鐘を鳴らす。


もちろん鐘は、エルフが手持ちの小さなハンマーで鳴らす。

ひもが付いた鐘つきなんて設置した日にゃ、ネコ科魔獣がイタズラで鳴らしてしまう。



「なーおーん(前方に動く何者か発見でぃ!)」


「どうした、まだ飯の時間じゃないぞ」


「なうー(てやんでぃ、べらぼうめ! 敵襲だ、こんにゃろう!)」



見張りのネコ科魔獣が、鐘に猫パンチする。


カーン、カーン、カーン、カーン。


4回鐘を鳴らす。敵襲や警戒の合図だ。



「ちょ、勝手に鐘を鳴らすなよ?! ……ん?! アレは何だ?!」


「なー!(ばっきゃろう! 今更気づいてんじゃねぇぞ!

早く弓を構えろってんでぃ、べらぼうめ!)」



ネコ科魔獣が弓を咥えて催促する。


エルフは慌てて弓を構え、接近者達に警告する。



◇ ◇ ◇ ◇



・アウレネ視点



おー、木製の囲いが見えてきました~。

あれがバステト様村でしょうか~。



「止まれ! 許可なくこれより先に踏み入った場合は、敵と見なし攻撃する!」



おっと、物見櫓から弓で狙われていますね~。



「チロチロ、一時停止です~」



ぴたり。


私達はチロチロから降りて待機します~。


村の入り口から、装備を整えた兵隊エルフさんが1人、やってきました~。



「何者だ!」


「バステト様村に遊びに来た、エルフのアウレネです~。

連れも同じ感じです~」


「ふむ、確かにその耳、その服装、エルフ族だな。

で、こちらの……なっ?!」


「ワシはシルフ。人間じゃが、エルフとは仲良くやっとるよ」


「シ、シルフ様……?!

まさか……いや、そんなはずは……」



エルフの男さんは、何だかあたふたしています~。



「おいッ、俺達をいつまで待たせる気だッ!

早く村まで案内しろッ!」


「オリバー、まあそう焦るなや。

あ、ワイはチャールズや。どうぞよろしゅう」


「も、申し訳ありません!

私の一存では判断しかねますので、しばらくお待ちください!」



エルフの男は、物見櫓のエルフに手信号を伝えました~。

すぐに別の男が来て、代わりにさっきの男は村へ報告に行ったみたいです~。



「みゅ~(うーん、よく寝たにゃ!)」


「リリーちゃん、着きましたよ~」



背負い袋の中でお昼寝していたリリーちゃんが、にゅっと顔を出しました~。


しばらくチロチロを拭いてあげていると、村からぞろぞろと武装エルフとネコ科魔獣さん達が現れました~。



「村長が御呼びだ! 武器を預からせてもらうぞ!

少しでも変な動きをすると、手足が飛ぶと思え!」


「ふんッ。軟弱なエルフよ、貴様らに、このデブ猫製の重厚アダマンタイト剣が持てるのかッ?」



ひょい。

オリバーが投げた剣を武装エルフが受け取りました~。


ボキボキボキ。

骨が折れる音でしょうか~。



「ぎゃぁぁああああーーー?!」


「ふんッ、情けないなッ。

そこのバジリスクは、この重さの剣を持った俺を含め、全員をここまで運んだのだぞッ」


「チロチロの速度がちょっと遅いと思ったら、そんな物運ばせていたのですか~!

四次元空間内に入れるなりしておいてください~!」


「剣士たるもの、己の剣を帯刀せず外出するのはありえないッ!」



これだから戦闘馬鹿の男は~!


その後、骨折したエルフをシルフ様が治療し、オリバーに頭を下げさせて場を収め、全員で村長の元へ向かうことにしました~。


何だか私達、護送中の囚人みたいな感じですが、警戒されているのでしょうか~。

村長とやらに会うことで、何でこんな扱いされているのか分かるかもしれませんね~。


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