331.【後日談】スパルタにゃんこ


俺は命君のダンジョンに来て、風のゴーレム以外の3属性ゴーレムを蘇生した。

そして意識フルダイブ型戦闘シミュレーター大部屋へ移動し、ヘッドセットを被る。


この疑似空間では、相手を討伐すると、本来討伐した場合の20分の1の経験値を得る事が出来る。

経験値が溜まるとレベルが上がり能力が上昇する。


経験値やレベルといっても、便宜上そう呼ばれているだけなのだがな。

討伐することで能力上昇のための因子がそいつから放出され、その因子が討伐者へと吸収される。

その現象を、経験値を得る、レベルが上がる、などと呼ばれているに過ぎない。

鑑定神ソフのじーさんが、ゲーム好きの転生者からアイデアを貰い、以降それらの用語が使用されている、らしい。


で、本来ならこの経験値、魔獣や魔法生物を討伐する事で得られる、というものなのだが。

ここはダンジョン。そういった自然法則が狂っている。


ダンジョンマスター達を管轄する、幸運の女神が自然法則を狂わせているのだ。

例えば、本来世界に1体しか居ない神様を量産出来る、討伐した魔獣が一部の素材を残して消える、など。

ダンジョン外ではあり得ない現象が、起こりうる。


まあ脱線したが、俺はゴーレム4体のパワーレベリング目的でここに来た。


俺達の意識のみが疑似空間へと飛ばされる。



◇ ◇ ◇ ◇



ここは疑似空間内。

辺り一面は草原、の設定だ。



「にゃー(地のゴーレム、風のゴーレム、炎のゴーレム、水のゴーレム。

今からパワーレベリングを行う。お前らには強くなってもらわねばならない)」



羽を生やした鼻の長い人型の、風のゴーレムがひざまずく。


空中に砂が巻き上げられ、『有りがたき幸せ』と文字が現れる。


角を生やした赤色の人型ゴーレム、炎のゴーレム。

頭に皿を乗せクチバシを持つ小人型の水のゴーレム。

巨大な坊主姿の土のゴーレム。

彼らも同様に跪く。



「にゃー(よし、さっそく特訓開始だ。まずは)」



俺は記憶の中から、魔獣を選ぶ。



「にゃー(お前らの苦手そうな相手から始めるか)」



辺りが急に暗くなった。


……。


……ごおぉぉぉおおおおおおおお。


ゴーレム達が上を見る。

山のように巨大な象の魔獣、ベヒーモスが落下中だ。


暗くなったのは、ベヒーモスが巨大な影を作っていたせいであり、昼が夜になったわけではない。


ゴーレム達は何もできず、ペチャンコになった。

いや、スキルを放っていたが、全てベヒーモスのまとう【破壊】により無力化されてしまっていた。


俺はひょいと横跳びで避けつつ、【スキルライブラリー】から【フレイム】と【破壊】を引っ張り出し、破壊効果を付与した炎を口から放った。


ベヒーモスが纏っている破壊効果と同じ種類のスキルだが、効果範囲を限定し破壊対象を【破壊】に限定した【破壊】だ。

同じ【破壊】同士なら、相手に特化させた方が効果は高い。


【スキルライブラリー】は、自分が手に入れた事のあるスキルをLv1で取り出すスキルである、と鑑定結果には書かれている。

だが、それは不十分な説明だ。


確かにデフォルトではそうかもしれないが、【経験値濃縮還元】と組み合わせて使えば、最初からLv100でスキルを取り出す事が出来る。


鑑定の神ソフは、知られたくない事や都合の悪い事は隠しているのだ。

なので彼の鑑定結果は正しくても、それが全てではない事を忘れてはいけない。


ベヒーモスは炎で溶けて無くなった。

辺り一面溶岩になってしまったが、草原に戻るように設定すると、すぐに何事も無かったかのように、一面草原の世界になる。


ゴーレム達も、再び蘇る。



「にゃー(お前ら、ベヒーモスにダメージを与えないと、パワーレベリングにならないぞ)」



今の戦闘では、俺にだけ経験値が入った。

だがベヒーモス程度だと、俺に入る経験値は雀の涙だ。


わざわざ戦闘相手に、弱い奴を選んでやったというのに。

しかも同時でなく1体のみ。


非常に嘆かわしい。



「にゃー(あと10回以内にベヒーモスにダメージを与えられないようなら、お前ら全員クビだ。

パワーレベリングする価値も無い)」



ゴーレム達は『待ってください』などと文字を表すが、実戦で敵が待ってくれるわけが無い。

そんな甘い考えが通ると思うなよ?


俺は2体目のベヒーモスを空に出現させた。



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