334.【後日談】もっとスパルタにゃんこ・バステト様村での歓迎


ゴーレム達は、7回目にしてようやくベヒーモスにダメージを与えることに成功したようだ。


風のゴーレムは、ベヒーモスの周囲を真空にし、その状態を保持している。

ベヒーモスは呼吸困難に陥っている。


風のゴーレムのMPが尽き、次に炎のゴーレムが大気を高温にする。

すると、ようやく呼吸し始めたベヒーモスの肺が大やけどする。

スキルで生じた炎は破壊されても、スキルで熱せられた空気は破壊されない。


怒ったベヒーモスが突進しようとするが、地面に穴が開き、そこに落ちた。

土のゴーレムが作った落とし穴に落ちたのだ。

そして落とし穴の下には、水のゴーレムが作った巨大な地底湖がある。


その地底湖は、土のゴーレムが溶かした猛毒のオリハルコン酸が混じっている。

このままではベヒーモスは薬品による大やけどで死ぬ。


ベヒーモスは【破壊】を解除する。

【破壊】を身にまとうデメリットとして、自分は【破壊】以外のスキルを使いにくくなってしまうからだ。


おそらくベヒーモスは【解毒】を使うつもりだったのだろう。

だが、その隙を逃すほどゴーレム達の目は節穴ではない。


灼熱の水と、無数の金属の槍がベヒーモスを襲う。


それらをまともに受けたベヒーモスは、ようやく生命活動を停止した。



「にゃー(やれば出来るじゃないか)」



ベヒーモスを、俺の力無しで連携して倒した。

この分だと、どうやらパワーレベリングしなくてもいいな。

普通のレベリングの方が成長できるだろう。


ゴーレムは自分で物を考えないため成長しない、という錬金術師も居るが、それは間違いだ。

こうやって発破(はっぱ)をかければ、彼らは確かに考え、成長する。一歩ずつ着実に。



「にゃー(よし、これなら俺抜きでも訓練できそうだ。

ベヒーモスをたくさん倒し、経験値を得るように。

俺は用事で席を外すぞ)」


『主はどうするのですか?』と砂の文字が浮かぶ。


「にゃー(俺はさらなる高みを目指すため、命君のダンジョンのボス、翼付きの大蛇メカのバッハ君と話し合うことにする)」



以前チラリと見かけた、幸運の女神を連れて行った創造主の巨大な手。


俺もバッハ君も、あの手よりも強い相手を見たことが無い。

あれより強くなれば、最強を誇れるぞい、とバッハ君が言っていた。


今月のバッハ君の目標は、創造主より強くなることらしい。

シミュレーター内では俺もバッハ君も、手も足も出ないほど強い相手なのだが。

というかシミュレーター上よりも実物の方が強いのだろうが。


だが強敵相手の攻略談義というものは、様々な方法や可能性が発見できる有意義な時間だ。

バッハ君と出会う前の俺と出会う後の俺では、ステータスこそ大差ないものの、能力や自分の可能性を引き出す力に10倍以上の差がある。

一人きりでは決して気づかなかっただろう。


例えば今の俺は、全世界を見渡し、そこに干渉することが出来る。

現在アウレネやシルフ婆さん達が、バステト様村の神殿に居る様子も見えるし、その気になれば手出しも出来る。

しないけどな。



「にゃー(というわけで、ベヒーモスがポンポン出てくるように設定しておくから、お前ら頑張れよ)」



空中の操作パネルをちょいちょいといじる。


空から巨大な2つの塊が降ってきた。



『ちょっと待ってください、空にベヒーモスが2体居るように見えるのですが』と砂の文字が浮かぶ。


「にゃー(2体同時の次は3体同時、4体同時と、最大15体同時まで増えるぞ。じゃあな)」



敵が全滅する度にHPとMPが全快するヌルい仕様だから、大丈夫だろう。


俺は疑似空間から抜け出す。

ゴーレム達の悲鳴が聞こえたような気がしたが、気のせいだろう。



◇ ◇ ◇ ◇



・アウレネ視点



「なるほど。部下が報告した通り、そこの老婆は、確かにシルフ様に似ている。

我らエルフ族のために尽くしたシルフ様に」


「似ているも何も本人じゃが」


「戯言(たわごと)を! 死者は蘇らない!」



村長のバーナードが剣を抜き、シルフ様に振ろうとしたみたいですが、オリバーの蹴りによって剣が弾かれました~。

弾かれた剣は、オリバーがキャッチしました~。



「ふんッ、客人に剣を向けるとは、どうやら貴様らには教育が必要らしいなッ!

……何だこの貧相な剣は」



オリバーは、両手でバキッと村長の剣を折りました~。



「なっ?! 我らの村で鍛え上げたオリハルコンの剣が……?!」


「これがオリハルコン? サビた鉄の剣かと思ったぞッ。

まだリオンが作った鉄の剣の方が、これの2倍は丈夫だッ」


「と、捕えろー!」


「『闇の魔王の子守歌に抱かれて眠れ。グレイトスリープ』。

おやすみなさいです~」



パタパタパタ。

村長含め、兵士の方々は眠ってしまいました~。



「さて、どうするッ?」


「ひとまず、こいつら縛っちゃいましょ~」



シルフ様が魔王だった頃、人間の捕虜を縛る作業に慣れている私は、手際よく縛り上げます~。



「みゅ~!(いただきまーすにゃ!)」


「こらっ! 食べちゃ駄目です~!」


「みゅ~……(でも襲ってきたにゃ。敵なら食べてもいいんじゃにゃいの?)」


「とりあえず、こやつらの言い分を聞かねばなるまいて」


「……リリーが何を言っているのか分かるのかッ?」



そのくらい、雰囲気で分かりますよ~。

オリバーはまだまだですね~。

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